ススムは何かおいしい仕事は無いものかとスマホをいじっている。
ススムは金に困っていた。
人々が仕事にいそしんでいる昼下がり、自室のベットで寝そべっている。
心の中は焦りがうずまいている。
「仕方ない…やるか…」
ススムには暗い過去があった。
窃盗で一度捕まったことがある。
ふたたびススムは盗みの世界に足を踏み入れようとしていた。
警察のお世話になるわけにはいかないススムは、ネットで情報を仕入れることにした。
どんな情報もネットには転がっていた。
(ある地区では、特定の時間に集会があり、全員無人になる)
(ワイファイの電波が漏れ出ている個人宅がある)
(駐車場を見ると、車のある、なしで留守かどうかが判断できる家がある)
ススムは、とある集団のラインに侵入した。
日本で活動する、外国人がメンバーの窃盗団だった。
実績もあり、信憑性のある情報が並んでいる。
ススムは、ある書き込みに、目が止まる。
推定五億円の仕事。
「ミスズ地区のコーポ・市村。投資でもうけた現金をタンス預金で管理する会社員がいる。一人暮らしの会社員は仕事に行く平日の日中はほぼ留守になる。私は十分もうけた。そして刑務所には二度とやっかいになりたくはない。情報だけ提供する。部屋番号はここでは明かさない。郵便受けに目印として猛犬注意のシールを貼っておく」
ススムは現場のコーポを見に行くことにした。
次の日、平日の午後。
ススムはコープの前にいた。外観はひどく古びている。
本当にここの住人が五億円の現金をため込んでいるのだろうかと不安になる。
エントランス入り口のポストをはしから見る。
確かに一軒だけ「猛犬注意」のシールがあった。「202号室 田崎」
202号室のインターホンを鳴らす。
反応はない。
情報通り、留守のようだった。
階段を使って二階にあがる。
ススムは202号室の扉にぴたりと張り付き、鍵穴を観察する。
これは開くと確信する。
二分かかっただろうか、音もなく扉を開ける。
するりと室内に侵入したススムは後ろ手に玄関扉を閉める。
真っ暗な室内に激しい音がする。
ススムは飛び上がって驚いた。
廊下を爪で激しく引っかく音とともに、大型の獣がススムに飛びかかってきた。
ススムは反射的に顔を覆うことぐらいしか出来ないでいた。
ズボンの裾を激しく噛む獣は大きな犬、ドーベルマンだった。
「おとなしくしろ。警察だ」
複数の人間にススムは押さえ込まれていた。
「これで新たな予算がとれそうだな」
警察犬であるドーベルマンの頭をなでながらスーツ姿の男が言う。
「今月に入ってこれで五人目です。悪人ほいほいの威力は絶大です。ネットにえさをまいて、こちらが網を張る。まさかこれだけネットの情報を悪人が信用するとは以外ですね」
「そうだな。案外、悪人は友達が少ないのかもな」
「そうかもしれませんね」
護送されるススムを見送りながら、スーツの男たちは話し合っていた。
ススムは金に困っていた。
人々が仕事にいそしんでいる昼下がり、自室のベットで寝そべっている。
心の中は焦りがうずまいている。
「仕方ない…やるか…」
ススムには暗い過去があった。
窃盗で一度捕まったことがある。
ふたたびススムは盗みの世界に足を踏み入れようとしていた。
警察のお世話になるわけにはいかないススムは、ネットで情報を仕入れることにした。
どんな情報もネットには転がっていた。
(ある地区では、特定の時間に集会があり、全員無人になる)
(ワイファイの電波が漏れ出ている個人宅がある)
(駐車場を見ると、車のある、なしで留守かどうかが判断できる家がある)
ススムは、とある集団のラインに侵入した。
日本で活動する、外国人がメンバーの窃盗団だった。
実績もあり、信憑性のある情報が並んでいる。
ススムは、ある書き込みに、目が止まる。
推定五億円の仕事。
「ミスズ地区のコーポ・市村。投資でもうけた現金をタンス預金で管理する会社員がいる。一人暮らしの会社員は仕事に行く平日の日中はほぼ留守になる。私は十分もうけた。そして刑務所には二度とやっかいになりたくはない。情報だけ提供する。部屋番号はここでは明かさない。郵便受けに目印として猛犬注意のシールを貼っておく」
ススムは現場のコーポを見に行くことにした。
次の日、平日の午後。
ススムはコープの前にいた。外観はひどく古びている。
本当にここの住人が五億円の現金をため込んでいるのだろうかと不安になる。
エントランス入り口のポストをはしから見る。
確かに一軒だけ「猛犬注意」のシールがあった。「202号室 田崎」
202号室のインターホンを鳴らす。
反応はない。
情報通り、留守のようだった。
階段を使って二階にあがる。
ススムは202号室の扉にぴたりと張り付き、鍵穴を観察する。
これは開くと確信する。
二分かかっただろうか、音もなく扉を開ける。
するりと室内に侵入したススムは後ろ手に玄関扉を閉める。
真っ暗な室内に激しい音がする。
ススムは飛び上がって驚いた。
廊下を爪で激しく引っかく音とともに、大型の獣がススムに飛びかかってきた。
ススムは反射的に顔を覆うことぐらいしか出来ないでいた。
ズボンの裾を激しく噛む獣は大きな犬、ドーベルマンだった。
「おとなしくしろ。警察だ」
複数の人間にススムは押さえ込まれていた。
「これで新たな予算がとれそうだな」
警察犬であるドーベルマンの頭をなでながらスーツ姿の男が言う。
「今月に入ってこれで五人目です。悪人ほいほいの威力は絶大です。ネットにえさをまいて、こちらが網を張る。まさかこれだけネットの情報を悪人が信用するとは以外ですね」
「そうだな。案外、悪人は友達が少ないのかもな」
「そうかもしれませんね」
護送されるススムを見送りながら、スーツの男たちは話し合っていた。