満員電車にて
乗客達は為すすべもなく、車両の加速、減速に身をゆだねている。ただ一人、慣性の法則を無視して逆の動きをするものがあった。
乗客「いたた、すいません、あなたぐいぐい押しつかってきますけど、その立ち方どうにかなりませんか」
逆の動きをするもの「すいません。どうにもなりません」
乗客「なんで?」
逆の動きをするもの「今朝のこの車両、何か気づきませんか?」
客「特に何も感じませんが、強いて言うと、この車両は新しいですね」
逆の動きをするもの「そうです。そのせいです」
乗客「どういうことですか」
逆の動きをするもの「私、こう見えて、この鉄道会社の社員なんです」
乗客「あなた、社員なの。ならなんで、そんな喧嘩を売るような事をするんですか」
逆の動きをするもの「わたしも不本意な現象でして……。会社としても仕方なく私服での業務を認めております」
乗客「あんた今、仕事中なの?」
逆の動きをするもの「そうです。しかも重要な仕事を現在遂行中でございます。できましたら、業務に専念させていただければありがたいのですが……」
乗客「ますます分からない。私にぐいぐい肘てつをくらわすのと、重要な業務と、どういう関係があるの」
逆の動きをするもの「実は私は今、加速、減速をになうトリガーを踏んでおります。このトリガーが何故か、運転席ではなくここに設置されており、運転手の声の指示をインカムで聞いております。私の体の傾きが加速、減速の入力をする設計になっております。その入力が皆様と逆の動きになってしまういう仕様でございます」
乗客「なんでそんな、おもしろ自転車みたいな設計にしたんだ」
逆の動きをするもの「分かりかねますが、強いて言うと、遊びこころ?」
乗客「はったおすぞ」
パソコンに、これは嫌がらせなのかと言いたくなる瞬間。
パソコンをチェックし終わって、さあ出かけようと電源を落とすと途端に更新プログラムをインストールし始める。
外出から帰ってパソコンを立ち上げると、デスクトップの色なり、設定が微妙に変更されている。
つけ麺屋にて
店長「どうしてそんな事するんですか」
女性は麺を口から垂らした状態で固まる。
店長「あなたですよ!」
女性は食べかけの麺を噛み切る。店長の剣幕に萎縮した女性は訳が分からないが、とりあえず謝ることにした。
女性「すいません……」
店長「すいませんってね、許せることと許せないことがありますよ」
女性「わたし、何かそんなに悪いことしたのでしょうか……」
店長「にどつけ禁止のルール知らないですか」
女性「にどつけ禁止?」
店長「そう、にどつけ禁止」
女性「それって串カツのやつでしょう。ここは「つけ麺」のお店。麺を二度以上スープに付けるのがだめってどういうことですか」
店長「串カツ?」
女性「そう、串カツ」
店長「二度漬け禁止って、串カツ限定のルールなの?知らなかったな。初耳だな。
世の中の人が二度漬け禁止って言っているから、そばもそうめんもトンカツのソースも刺身の醤油も全てかと思った。俺は一度しかつけない人生を送ってきた。ウナギの蒲焼きだってタレは一回しかかけないで焼いてもらうんだ。どうりで味が薄いと思った。しかし、そのポリシーを曲げるわけにはいかない。それは自分の人生を否定することになる。この店では俺がルールだ。麺をスープに浸すのは一回だけしか許可しない」
女性「めんどうくさいな。どうでもいいですけど、最初からそれならそうと言っといてもらえますか」
店長「失礼いたした」
女性「ちなみにあなた、書道の時はどうするの?すずりに筆をつけるのは一度のみなんでしょう」
店長「筆ペンで書くから問題ない」
女性「あっそう」