大家の部屋を後にしたのは深夜になった。遠山たちの姿は無い。自分の車に乗り込みながら、エリーは、はたして大丈夫だったのかを考えた。瞬間的に姿を消したようにも見えたエリー。依然として何者なのかが分からない状況に、釈然としないものを感じながらとりあえず岐路につく。 尾行の有無を確認しながら運転はする。上空からの尾行はほぼ不可能だ。なぜならオートパイロットを切っての運転は、人間業ではできない難しさだからだ。
3Dプリンターによって作られた建物は大家の思想を色濃く反映していた。ミツオのアパートはガウディの聖堂を小さくしたような外見をしている。その小ささが逆に貧乏くさく感じることに大家は気づいてはいない。
自室のドアにミツオは顔を寄せる。生体スキャンによって鍵が開いた。
靴を脱ぎながら、車の鍵を棚に置く。そのすぐ横には琥珀色のアルコール。グラスに注ぎ飲む。
3Dプリンターによって作られた建物は大家の思想を色濃く反映していた。ミツオのアパートはガウディの聖堂を小さくしたような外見をしている。その小ささが逆に貧乏くさく感じることに大家は気づいてはいない。
自室のドアにミツオは顔を寄せる。生体スキャンによって鍵が開いた。
靴を脱ぎながら、車の鍵を棚に置く。そのすぐ横には琥珀色のアルコール。グラスに注ぎ飲む。
「私の息子は権堂と同じ会社、アリスコーポレションでプログラマーとして働いておりました。ある日、遠山がやってきて、息子に仕事を依頼したそうです」
「Eシステム」
ミツオはぼそりと言った。
「そうです。Eシステムの基本的な骨格はすでに完成していて、その革新的なアイデアに息子は興奮しておりました。しかし、仕事を進めるうちに、あらゆるシステムを乗っ取って遠隔操作できるシステムであることに息子は気づいたのです」
大家はコーヒーを飲んだ後、話を続けた。
「完成を拒んだ息子は遠山から執拗な嫌がらせ受けました。耐えきれなくなり息子は自ら死を選びました」「お悔やみ申し上げます」
「Eシステムの基本骨格を作ったのは東方室Aです」
「えっ」
ミツオは声を失った。
「Eシステム」
ミツオはぼそりと言った。
「そうです。Eシステムの基本的な骨格はすでに完成していて、その革新的なアイデアに息子は興奮しておりました。しかし、仕事を進めるうちに、あらゆるシステムを乗っ取って遠隔操作できるシステムであることに息子は気づいたのです」
大家はコーヒーを飲んだ後、話を続けた。
「完成を拒んだ息子は遠山から執拗な嫌がらせ受けました。耐えきれなくなり息子は自ら死を選びました」「お悔やみ申し上げます」
「Eシステムの基本骨格を作ったのは東方室Aです」
「えっ」
ミツオは声を失った。
「君がやられた男の名前は遠山。私は磯山会に恨みがある人間だ。だから君に協力する」
大家は布でこしたコーヒーをミツオに差し出しながらつぶやいた。
「ありがとう」
ミツオは受け取ったコーヒーを一口すする。酸味のある浅煎りの香りと味わいがとてもうまいと感じた。ミツオは何を言えばよいのか考えていたが、よい言葉が思い浮かばない。沈黙が空間を支配する。
「一人息子を失った」
大家が口を開く。沈黙に耐えかねたという風にもとれるが、誰かに聞いてほしいという気持ちもあるのだろうとミツオは感じた。
「権堂が何をしていたのか、もしかして知っているのか」
大家はこくりとうなずいた。
大家は布でこしたコーヒーをミツオに差し出しながらつぶやいた。
「ありがとう」
ミツオは受け取ったコーヒーを一口すする。酸味のある浅煎りの香りと味わいがとてもうまいと感じた。ミツオは何を言えばよいのか考えていたが、よい言葉が思い浮かばない。沈黙が空間を支配する。
「一人息子を失った」
大家が口を開く。沈黙に耐えかねたという風にもとれるが、誰かに聞いてほしいという気持ちもあるのだろうとミツオは感じた。
「権堂が何をしていたのか、もしかして知っているのか」
大家はこくりとうなずいた。