Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

八木寿子の演奏の魅力(No.1921)

2011-08-23 21:31:05 | 批評
 先ほど、

googleで「八木寿子」で検索したら、1位=「八木寿子の近過去&近未来」、2位=「八木寿子 第9回東京音楽コンクール優勝」になっていた!


 これにはたまげた! google検索でトップに来るのは、「佐伯周子」「飯坂純」とカテゴリーを立てた2人だけ。「岡原慎也」「川上敦子」「作曲家 グルダ」などはトップページ上位には来るが、1番目には来ていない。PMJ にとって「事件」である。
 若き有望メゾソプラノを皆が「知りたい!」と思っていて、最も具体的なことを書いてあるのが この Piano Music Japan ということを意味する。責任重大だが、聴いたことを素直に書き綴る。次回に 八木寿子 を聴くのは、来年1月28日になる(はず)ので、次回はそれ以降になる。
 福岡や神戸の聴衆は、私高本以上に頻繁に 八木寿子 を聴いている人も多いことだろう。だが、「東京近郊在住者」の中では最も良質なモノを一定以上の頻度で聴いた1人かも知れない。


八木寿子はなぜ「第9回東京音楽コンクール声楽部門第1位優勝」に輝いたか?


 大半の読者の興味はここだろう(爆

 8/21(日)本選の様子だけを下にそのまま書く。(私高本は 7/27の予選聴いていない。)

 開演前の聴衆は、大半が「若きソロ歌手の卵」だらけ。来年優勝するつもりなんだろうな > みんな

 中には、「新国立劇場研修所スタッフ(中間管理職)」とか、二期会や藤原歌劇団の人も居た。音楽評論家もあちこちにいた > 特に「声楽系」は来ていた。
 ぼんやりと、ざわめきを聞いていると「優勝予想は、湯浅純子(S)と高橋洋介(Br)」。どちらも東京の歌手じゃん。どちらかと言うと、「高橋推し」が多かったので「同門」が多い筋なのだろう、と判断した。ちなみに湯浅と高橋が芸大院卒、八木と清水徹太郎(T)が京都市芸院卒。対照的。八木寿子の心情的な応援団ってオレ1人だけだったかも > 東京文化会館大ホールで(爆


  1. 八木寿子は、技巧的な水準が全ての面で極めて高い


      おそらく、審査員はあまり言及しないだろう点を、真っ先に指摘しておく。この「声楽の基礎」が信じられない高みで到達していたので、これから述べる点が全て実現したからである。声量、音程、声質。言うは易し、行うは難し。藤村美穂子クラスと感じる。

    1. 声量の豊かさ + ダイナミクスレンジの広さ


        本選出場者4名で、八木寿子は声量がダントツに抜き出ていた。フォルティッシモの轟きが「12型オケのフォルティッシモを突き抜けて来る快感」が最高だった。 ソプラノは「全部抑えさせた」し、テノールは「オケを鳴らしてくれ。」だったが、オケに完全に埋もれた。バリトンは「突き抜け方」が2段階以上、八木にはかなわなかった。八木寿子 の「うまさ」は「pp」だと感じる。ピアノで言えば「左ペダル踏んだかのようなpp」をささやく。
    2. 音程が確か


        言い難いことだが、(私高本の価値はここしかないから)明言する。「八木寿子は最も音程が楽譜に忠実だった」ことを。文句あるヤツはコメントに実名で書いてくれ。オレの頭は「猫頭」だが、耳はいいぞ(爆
    3. イタリア語とフランス語のディクションが正確


        言いたくないが書く。「印象批評」だ。オレはイタリア語もフランス語も聞き取れない耳だし。ただ、これまで「名盤」とされて来たCDと比較すると、「原語ニュアンス」に近い、と感じるぞ。
    4. 全ての「メゾソプラノレパートリー」を熟知しているか、のような選曲


        メゾソプラノは、ソプラノに比べて「コンクールでは、はっきり不利」な声域だと感じていた、八木寿子を聴くまでは。前妻がメゾソプラノだったので、論議は(私高本的には)尽くしたことがある、思っている。例えば、ロッシーニ「チェネレントラ」オリジナル版でチェネレントラを歌っても、モーツァルト「夜の女王のアリア」歌われると印象に残り難い。ズボン役を「普通の女声役」に混ぜて歌うと、コンクールでは「見た目」に違和感が残ってしまう etc. 
       八木寿子は、モーツァルトK578、マスネ「ウェルテル」、サン=サーンス「サムソンとデリラ」、ヴェルディ「ドンカルロ」と性格付けが全く違うオペラとコンサートアリアを「作曲家の意図」に忠実に表現、清らかな女性像から悪女まで歌い尽くす。その全てが「女性」であり、ドレス姿でばっちり! これならば「ソプラノに対して不利では無い」だ!!

  2. 全く別の「役柄」に瞬時になり切れる


      これは、多くの人が驚いたことだろう。4名の作曲家の作品を取り上げたのは、八木寿子ただ1人であり、2曲または3曲続けて「同じ作曲家作品」を並べて挑んだ人が2名もいた。4名の、しかも作風が全く異なる作曲家を取り上げることは、できることなら回避したい声楽家が多いことは今回コンクールだけでもはっきりわかる。大体、声楽以外の、木管、弦楽、ピアノ は「協奏曲1曲だけ」の審査であることからも、短い時間にコロコロと違う作曲家を取り上げる難しさがお分かりいただけることと思う。
     特に心打ったのが、「ウェルテル」で涙をホロッと流させるアリアの後に、悪女「デリラ」の狡猾な歌が「それはそれは上手く」歌われたことである。こんな風に(悪女であっても)良い女に言い寄られたら、ポロッと「サムソン」が失言してしまうよなあぁ、と感じた次第である。
  3. 声質が高音から低音まで「均質」かつ豊かな声に聴こえる


      私高本が「デリラ」を聴いたのは、審査員伊原直子が「横浜シティオペラ」と言う名前だったと記憶しているが、「第1回」と銘打って行った超豪華公演だった。(演出は誰だったか? どんなだったか? は全く思い出せません。「猫頭」なので許して下さい、ペコッ)
     大野和士指揮東京交響楽団、大野和士の「オペラデビュー」だった記憶がある。気迫のこもった演奏だったが、声が 高音、中音、低音 でそれぞれ異なる音色だった。メゾソプラノはこのタイプが多く、例えば ファスベンダー もこのタイプ。もちろん、ポジションチェンジはあるハズなのだが、それが「音色上では感じられない」のは1つの大きな美点。今回優勝の原動力となった一因である。


 八木寿子(MS)の声は、来年1月28日(土)に東京文化会館大ホールでオケ伴で聴ける。興味を持った方は是非是非聴いてほしい!!
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