Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

2012.09.02 堺シティオペラ「團伊玖磨:ちゃんちき」批評(No.2124)

2012-09-07 22:40:03 | 批評

「日本らしさ」を見事に描き切った「狂言師 = 茂山千三郎」演出、舞台を牽引する役になりきった「井原秀人」


  最近、「日本伝統文化の人」がオペラに関わる頻度が高まって来たように感じる。昨年11月に新宿文化センターで聴いた「オペラくご:ドン・ジョヴァンニ」も記憶に新しい。
  私高本が伝え聞いているところでは

最初の成功例は1992年の市川猿之助演出サヴァリッシュ指揮R.シュトラウス「影のない女」


とのことなので、20年の歴史を積み重ねていることになる。私高本もいろいろなモノを見聞きして来た。

堺シティオペラ「ちゃんちき」の茂山千三郎演出は、『真正面から昔の日本の情景』を回顧させ、市川猿之助演出「影のない女」に比肩する!




 私高本は全く知らなかったが

茂山千三郎は、メゾ・ソプラノ=郷家暁子(ごうけあきこ)とのコラボレーションコンサートを関西で多く重ねて来た実績あり


との記述がプログラムノートにあり。夫婦であり、クラシック音楽への造詣は深い。
  (私高本の記憶に拠れば、市川猿之助演出時は「指揮者 = バイエルン国立歌劇場芸術監督 = サヴァリッシュ」がいろいろなアドバイスをした、と来日公演プログラムに記載あった。)

茂山千三郎演出は『狂言の足遣い』を徹頭徹尾貫きながら「オペラらしさ」を全く損なわない演出


である。私高本は狂言についての知識が皆無なので、どこがどのようにと「狂言用語」で説明が不可能であるが、冒頭の「狐のおとっさま & 子狐ぼう」登場から、

(ヨーロッパ狐では無く)日本狐 の雰囲気ぷんぷん!


なのだ。「衣裳」が大きく貢献していることは確かなのだが、私高本が和服を着ても「狂言師」「落語家」「将棋指し」「華道家」のように振る舞えるワケでは無い。(32年前の「成人式」に着ただけだからなあぁ、、、)

茂山千三郎演出は、『瞬間の主役』が全ての聴衆の目を惹き付ける が主眼!


 「おとっさま」だったり「ぼう」だったり「おとっさまが化けた美人」だったり「だまされるカワウソのかわ兵衛」だったりするのだが、

『動 と 静』が信じられないほどはっきりと投影される!




 「素晴らしい演出」は「演じる歌手」がその意図を十全に発揮しないと、聴衆には伝わらない。この日は「はっきり伝わった」ことを、評論家=高本秀行 が責任を持って明記する。主要5役のソリスト全員が素晴らしかったことをお伝えした上で

「おとっさま役 = 井原秀人」の「音楽的 & 俳優的 存在感の大きさ」が公演の大成功の牽引車の原動力


と感じた。私高本が、井原秀人 をオペラで聴くのは2度目。前回は、新国立劇場地方招聘公演「黛敏郎:金閣寺」だった。「迫真の狂気の世界」を描いて、東京でも大評判になったのだが、その後、新国立劇場オペラに招聘された記憶が無い。新国立劇場スタッフは何を聴いて何を観ているのだろうか? これほどのバリトンは、今関東に居たっけ?(爆
 (もちろん、世界から招聘してくれていることには感謝して「定期会員」になってまっせ!)


 團伊玖磨「ちゃんちき」を聴くのは2度目だが、「おとっさま」の存在感がこんなにあるオペラだとは知らなかった。前回はまだ團伊玖磨が存命中で「團伊玖磨の思い通り」に(演出を含め)進行していたハズだが、没後の(しかも「関西初演らしい」)堺シティオペラ公演で、「役の重み」をはっきり感じた。
 バカ息子を抱え込み、「今日のメシ」さえ危なっかしい「狐親子」の世界。(「金閣寺」の時は分からなかったのだが)井原秀人は「音」だけでは無く「所作」までも含め『細部表現を実現』する。
 こんなにうまいバリトン日本に過去居たかな? ディートリヒ=フィッシャーディースカウ とか プライ とか、「過去も含めた世界」には多数いるのだが、「今の瞬間の日本」では誰がいるだろうか?


指揮=船曳圭一郎、水野智絵、柳内葵衣、クリスヤニス・ノルヴェニス、片桐仁美、合唱団員、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団 の皆様に感謝する!


  「ちゃんちき」がもしかすると「夕鶴」を上廻るかも知れないオペラ、と気付かせてくれたのは、誰1人欠けるところ無い素晴らしい「歌唱 & 演技」のおかげである。團伊玖磨監修(と言うか、演出も含め「全部を見渡していた」と伝聞されている)「生前の仲良かった当時の二期会公演」を遥かに上廻る公演が聴ける! なんて、さすがに私高本も全く想像付かなかった。

東京の聴衆にも是非是非「堺シティオペラ:團伊玖磨:ちゃんちき」を聴かせて見せて欲しい!


と感じる。何とかならないものだろうか???
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梅丘歌曲会館「詩と音楽」 更新情報(No.2123)

2012-09-02 00:52:56 | 歌曲作曲家・マーラー(1860-1911
 昨日、マーラー「子供の不思議な角笛」が1899年版に関して更新された。感謝するばかり。ここ にリンクを貼って置く。藤井さん の「言葉のセンス」には感謝するばかりである!
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2012.09.01 東京芸術劇場リニューアルオープニング公演「下野竜也+読響:復活」批評 前編(No.2122)

2012-09-01 23:39:47 | 批評

「デュトワ:千人」に比肩する「下野竜也:復活」の『解釈』、「N響」とは比べ物にならないほど卓越した「読響の金管と打楽器」!


 明日「こだま」(!)で大阪・堺シティオペラ「團伊玖磨:ちゃんちき」を聴きに行くので、ほんの「さわり」しか書けないことをお許し頂きたい。帰京(帰川崎?)後に、「後編」にて詳述する。糖尿病進行がヒドいので、体力が無いことが恨めしい。


『楽譜を読み込む』と言うのは、ここまで突き詰められるのか? を「音で聴かせた」下野竜也のマーラー「復活」解釈! 具現化した 読響 + 清水華澄 + 小川里美 + 東京音楽大学合唱団


  私高本は、過去「東響コーラス」にて、この マーラー「復活」にて、「プロオーケストラ + 合唱団」演奏を舞台上で経験した。1987年12月定期演奏会だったので、25年も前になるのか!(東京交響楽団に深く感謝する次第である!!!)


「下野竜也の解釈」は、あまりにも『実行不可能?!』に感じる「マーラーの指示通り」が多い!!!


  (第1楽章にもあちこちに創意工夫満載だったが)

第1楽章 と 第2楽章 の間に「マーラー指示」通りに『5分の休み』を入れたことには驚き!


だった。
 この5分間に、第5楽章にだけ演奏する舞台上の奏者(5&6番トランペットとか4番オーボエなどなど)とソプラノソロ + アルトソロ を「完全満席の聴衆から 拍手が絶対来ない方法で入場させる」を実行したことには舌を巻く。ここでこのように入れるんだ! が実感。(「千人」だけでなく「復活」も相当に「合唱団メンバー」として歌ったからなあ > 30代の私高本。)

産まれて初めて「第1楽章と第2楽章間で5分休憩」を経験した


である。その間に、「第5楽章舞台上奏者の登場 → チューニング → その途中で ソプラノ と アルト ソリスト登場」だった。

 これなら、拍手の入りようが無いわな。マーラー「復活」はいろいろと「落とし穴」の多い曲(合唱団員の目!)なのだが、下野竜也 + 読響 は「全てを明らかにクリア」して行く!!!
 前編最後に明記しておくが、

誰の耳にも判別できるのが「金管楽器 と 打楽器」であって、「弦楽器 と 木管楽器」も『読響の方がN響よりもはっきり上』だった


 私高本が猫頭なので、根拠が明示できないことだけがもどかしい(涙
(後編に続く)
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