先端技術とその周辺

ITなどの先端技術サーベイとそれを支える諸問題について思う事をつづっています。

日本の研究力低下、つまずきは若手軽視 科技立国 落日の四半世紀

2020年09月26日 20時57分56秒 | 日記

 

日経が、『日本の研究力低下、つまずきは若手軽視。科技立国 落日の四半世紀』という記事を載せていたが、日本の科学技術力の低下は若手軽視を第一義的に指摘しているが、国が大学や民間の基礎研究を軽視して来たことが一番である。大学は研究費を見出すため、教授から助手まで、寄贈者を募って廻らなければならず、研究に回す時間が無くなっていることが大きい。これは2000年前半の国立大学法人化や国家公務員の総定員法施行からである。最近までのノーベル賞受賞者がアメリカに次いで2番目であるというのは、ノーベル賞は2、30年前の研究成果で実証されたモノのみに与えられるから、ぼつぼつ、日本人のノーベル賞受賞者は出なくなる時期に来ている。

この状況を解決するには、基礎科学重視の政策に切り替える必要がある。又切り替えてもその成果が出るのは2、30年後という事になる恐ろしい話である。

ノーベル賞は40代前半までの業績で受賞する場合が多い(2014年12月、日本人3氏が物理学賞を受賞)=共同

ノーベル賞は40代前半までの業績で受賞する場合が多い(2014年12月、日本人3氏が物理学賞を受賞)=共同

 

科学技術が経済や安全保障を左右するいま、日本の研究力低下が止まらない。米欧の後追いを脱却しようと、国は1996年度に科学技術基本計画を打ち出し、90年代後半には米国などに次ぐ地位を誇った。その後も世界のけん引役を担うはずだったが、日本の研究力は中国などの後じんを拝し、今では世界9位に沈んだ。日本はどこでつまずいたのか。落日の四半世紀を検証する。

「科学研究から経済成長に必要なイノベーションを搾り取ろうとしたが、明確な成功はなかった」。英科学誌ネイチャーは8日付の論説で、約7年半にわたる安倍政権の科学政策を総括した。

安倍晋三前首相は「世界で最もイノベーションに適した国を造る」として、出口を重視するトップダウンの大型プロジェクトを相次いで立ち上げた。首相がトップの科技政策の司令塔を「総合科学技術・イノベーション会議」に改称するなど、イノベーションを重視したが、日本の研究力低下は止められなかった。

 

 

 

安倍政権下で策定され、20年度に終わる第5期基本計画は、初めて世界が注目する被引用論文の数などを目標に掲げたが、多くは未達で終わる。

論文の数は国の基礎科学力を示す。科学技術・学術政策研究所によると被引用数が上位10%の注目論文シェアで、日本は96~98年の平均で世界第4位だったが、16~18年は第9位に沈んだ。

注目論文数は中国が42倍、米国2割増と多くの国で増えたが、日本は1割減った。主要国で日本だけが取り残された。

この四半世紀、国主導で世界トップクラスの研究体制を目指してきたはずだった。2001年ノーベル化学賞受賞者の野依良治名古屋大特別教授は「科学技術基本法の精神は正しかったが、(明治以来の講座制などの)世界的に異形のシステムが実践を阻み続けた」と悔やむ。

95年に議員立法で成立した基本法は、科学技術が「我が国及び人類社会の将来の発展のための基盤」として、国の役割を強調した。

基本法成立に尽力した尾身幸次元財務相はかつて「(欧米から)技術導入できた時代は終わった。自ら未踏の分野に挑戦し、創造性を発揮して未来を切り開かねばならない」と語っていた。

90年代の日本はバブル経済崩壊の傷口が広がっており、次世代の産業の種を育てる狙いもあった。基本法に基づいて96年度に始まった第1期基本計画は、単年度主義の予算編成の常識を破った。5年間にわたる政府の研究開発投資の目標額を17兆円と設定し、達成した。だが、手応えがあったのはここまでだった。

 

 

 

第2期以降も投資額の目標を掲げ、「選択と集中」や「イノベーションの推進」などを矢継ぎ早に打ち出したが、思惑通りに進まない。改革が進まない旧来型の研究システムが災いした。

最たる犠牲者が、飛躍の源泉となるはずの若手研究者だ。「日本の若手が置かれた環境は日米欧中の中で最も苦しい」。脳神経科学者で米カリフォルニア大学アーバイン校の五十嵐啓アシスタントプロフェッサーは嘆く。

五十嵐氏が日本神経科学学会で優れた若手をたたえる奨励賞を海外で受賞した人の行方を調べたところ、9割が日本に帰国せず海外で自身の研究室を持ったという。五十嵐氏も英科学誌ネイチャーに論文を発表したが日本では任期付きポストしかなく、海外に残った。

欧米や中国では、優れた業績をあげた若手は研究室を主宰するポストと研究室立ち上げに必要な資金を手にする。五十嵐氏は大学から5000万円を用意された。外部資金も合わせて5年で4億円を集めた。

日本では旧帝大を中心に准教授や助教は教授の下に集うメンバーの一人にすぎない。若手の独立ポストは少ない。ノーベル賞級の成果の多くは30、40代であげられている。

国の経済規模が違うとはいえ、なぜ若手が自由な発想で研究できる環境が整わないのか。海外では、独立資金を提供する官民の予算があり、助教や准教授クラスの若手にも思い切って研究室の運営を委ねる傾向にある。

日本は大学の懐事情の厳しさが若手研究者を直撃する。04年の国立大学法人化で産学連携などが進んだ一方、運営費交付金削減の副作用で大学は人件費を抑制した。有馬朗人元文部相は「国立大学の法人化に伴い、交付金を削減したことが大きな間違いだった」と憤る。

研究者の卵である博士課程の学生にも悪影響が及ぶ。博士号取得後の将来展望も描けず、博士課程進学者は03年をピークに減少傾向だ。負のスパイラルに陥る。

「日本は人件費が無料で研究させられるから良いんです」。野依氏は日本の大学教授にこう言われてあぜんとした。野依氏は「博士課程の学生はただ働きで、日本の現状は憲法の精神に反する」とあえて憲法を持ち出して批判する。

問題の根源は国もわかっている。菅義偉首相のもとで大詰めを迎える第6期基本計画の策定を巡り、8月に出た検討の方向性では「研究力強化の鍵は、競争力ある研究者の活躍であるが、若手研究者を取り巻く状況は厳しい」と指摘した。1月には若手研究者を支援する政策パッケージを公表したが、抜本改革にはほど遠い。本気度が問われている。


アフリカで外国による軍事基地建設ラッシュ!

2020年09月22日 21時31分53秒 | 日記
ニューズウィークが『アフリカで外国による軍事基地建設ラッシュが起きているのはなぜか』という記事を載せている。それによると、アフリカ連合(AU)は、諸外国からの圧力というよりも、自ら、治安維持やインフラ整備で、外国から軍隊を読んでいるという。中国は2万6千名の部隊、アメリカとフランスは7,8千名という具合だという。軍隊を派遣する側は、ビジネス拡大の目的があるから、これ幸いという。

悪天候の中、前線基地に着陸を試みるフランス軍のNH90ヘリコプター。サヘル地域でイスラム過激派の掃討作戦中(2019年7月29日、マリのヌダキ) Benoit Tessier-REUTERS

<欧米諸国だけでなくアジアや中東の国々も競うように軍事拠点を確保している>

8月下旬、ケニアの民兵組織が隠密作戦によって、複数のテロ容疑者を夜間に襲撃・殺害していたことが報じられた。報道は、アメリカとケニアの外交・諜報当局者へのインタビューに基づくものだった。

問題の民兵組織は、アメリカとイギリスの諜報当局者たちから訓練や武器などの支援を得ていた。

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報道によれば、2004年以降、米CIAはケニアで一般市民の目に触れることなく作戦を展開している。標的の特定、追跡と居場所の特定においては、MI6(英国情報部国外部門)が重要な役割を果たしている。

この報道によって、諸外国がアフリカで幅広く治安作戦を展開している現実に、改めて注目が集まっている。

アフリカの複数の国が、外国の軍事基地を受け入れている。アフリカ連合(AU)平和・安全保障理事会は今も、アフリカ大陸に諸外国の軍事基地が増えつつあることや、それらの基地への兵器の出入りを監視できないことに懸念を表明している。複数のAU加盟国は諸外国との間で二国間協定を結んでおり、アフリカ各地に外国軍の部隊が拠点を築いている。

現在、少なくとも13の外国勢力がアフリカ大陸に軍事基地を保有している。最も活発に作戦を展開しているのはアメリカとフランスだ。これに加えて、アフリカの複数の紛争地帯で民兵組織が活動を展開。最近ではモザンビーク北部での活動が活発化している。

5月には、ロシアがMig-24戦闘機とSu-24戦闘爆撃機をリビアに派遣して現地の武装勢力を支援。アフリカにおけるロシア政府の影響力拡大がその狙いだ。

複数の国が大勢の兵士を派遣

現在、アメリカはアフリカに7000人の兵士をローテーションで派遣。現地部隊と共同で、過激主義者やジハーディスト(聖戦士)の掃討作戦を展開している。兵士たちはウガンダや南スーダン、セネガル、ニジェール、ガボン、カメルーン、ブルキナファソやコンゴ民主共和国をはじめとするアフリカ各地の前哨基地に駐留している。

これに加えて、2000人の米兵がアフリカの40カ国で訓練に携わっており、米特殊部隊はアフリカ東部にあるケニアやソマリアのいわゆる「前方作戦基地」で作戦を展開している。

アメリカ同様、フランスも数多くのアフリカ諸国に部隊を派遣するか、軍事基地を設けている。現在、アフリカ大陸で任務についているフランス軍の兵士は7500人を超えている。最も大規模なプレゼンスを維持しているのがサヘル地域。特にマリ、ブルキナファソとニジェールが国境を接する地帯だ。

アフリカに部隊を派遣しているのは西側諸国だけではない。中国も軍を駐留させており、特にアフリカ大陸東端の「アフリカの角」で活発に活動している。

中国は2008年にソマリア沖のアデン湾で海賊の取り締まりに参加して以降、アフリカへの関与を強め、アフリカの角やアデン湾で海賊対策として海軍のプレゼンスを維持してきた。2008年から2018年の間に、中国海軍はさまざまな海上警備任務のために2万6000人の兵士をこれらの地域に派遣している。2017年には、ジブチに国外初の軍事基地を建設した。

ジブチには2003年に、アメリカも軍事基地「キャンプ・レモニエ」を建設。このキャンプ・レモニエに隣接して、フランス、イタリア、スペイン、ドイツと日本の基地が設置されている。

中国は広さ36ヘクタールの軍事施設を建設し、兵士数千人が滞在可能な施設に加えて、船舶やヘリコプター、固定翼機のための施設も用意した。このジブチの軍事基地は、アデン湾の海賊対策、情報収集、東アフリカ在住の中国人市民(非戦闘員)の退避、中国軍の兵士が派遣されている地域での国際平和維持活動と対テロ作戦という、5つのミッションを支援するために建設したものだ。

インドもまたアフリカでの海軍のプレゼンスを強化している。インドはこの地域における中国の軍事力強化に対抗するために、インド洋全域に軍事施設のネットワークを構築した。

海賊から海上交通路を守ることも狙いだ。インドはアフリカの角とマダガスカルの状況を監視するために、現地に複数の部隊を派遣。さらにセーシェルやモーリシャスなど、アフリカ沖にある複数の国の沿岸部に32のレーダー監視施設を建設する計画だ。

中東では、トルコとアラブ首長国連邦(UAE)の2カ国がアフリカに目立ったプレゼンスを維持している。

トルコは2009年に、ソマリア沖で国際的な海賊対策のタスクフォースに参加。2017年にはソマリアの首都モガディシュに軍事基地を開設した。ソマリア軍の新兵に訓練を提供することがその目的だ。トルコはまた、ソマリアの海軍と沿岸警備隊も支援している。

アラブ首長国連邦は2015年以降、エリトリアに軍事基地を持っている。この基地は軍用飛行場や軍港もあり、イエメンの反体制派の掃討作戦を展開するために使われている。

諸外国の軍の思惑は

アフリカの角が諸外国の軍事活動の中心地であることは明らかだ。複数の国が国際平和への脅威に対応するため、テロ組織や海賊を制圧するため、外国の治安活動を支援するために、ここに部隊を派遣している。

だが各国がアフリカに軍事基地を設ける動機は、ほかにもある。商業的な利益を守るため、友好国の体制を支援するためや、世界的に競争が激化する中で注目されている大陸で優位な地位を確立するためだ。

もちろん、アフリカが特別な訳ではない。たとえばアメリカは、ペルシャ湾岸地域にもかなりの規模の軍や治安部隊のプレゼンスを維持しており、バーレーンやクウェート、カタールやアラブ首長国連邦に基地を持っている。

外から見ると、諸外国の政府がアフリカに無理やり軍を送り込んでいるように見えるかもしれない。だが実際には、アフリカの多くの国の政府が彼らを進んで受け入れている。

主要国との二国間協定は、アフリカの国々に収入をもたらす。たとえば中国軍の基地を受け入れたジブチは、経済の大部分を中国からの投資に頼っている。

外国軍のプレゼンスは、テロ組織との戦いにおいても大きな役割を果たしてきた。たとえば東アフリカのイスラム武装組織アルシャバブや、マリのジハーディストとの戦いだ。アフリカの複数の国は、諸外国の政府に進んでテロ対策の助言や情報、支援を求めている。

だが諸外国の部隊を受け入れることには、デメリットもある。たとえば、さまざまな国が治安活動や軍事活動を展開していることで治安対策の「過密状態」が生じ、これらの活動が意図しない矛盾をもたらすことも多い。

アジア諸国がプレゼンスを強めていることで、一部主要国の間で競争が激化する事態も起きている。中国がジブチでプレゼンスを拡大していることを懸念する声もあるし、中国がアフリカとインド洋で影響力を拡大していることには、日本とインドの政界や安全保障当局が不快感を抱いている。

そしてアフリカ諸国の間には、諸外国の治安活動や軍事活動をどうやって規制するかについての合意がない。今のところ、各国の軍がばらばらに活動を展開している状態だ。

アフリカの平和維持能力は大幅に向上したものの、AUは依然として、平和維持活動については外部からの資金・資源の提供に大きく頼っている。そのためアフリカには、戦略や作戦、戦術について自分たちだけで判断を下す自由がない。武装紛争に対応する上でのこうした弱点がある限り、諸外国の軍や情報機関がアフリカ大陸で活動を続ける状況は続くだろう。

アフリカがこの資金力と意思決定権を取り戻さない限り、アフリカ諸国は、外国軍による大々的な関与についてのAU安全保障理事会の懸念に耳を傾けることはできないだろう。


人民解放軍、グアムの米空軍基地とみられる模擬攻撃の動画公開

2020年09月22日 21時17分14秒 | 日記

中国ニューズウィークが、中国のSNS WeiBoに載っている『人民解放軍、グアムの米空軍基地標的とみられる模擬攻撃の動画公開』を紹介していたが、中国の軍事力誇示、聊かあきれ返る。むしろ恐怖を世界中にもたらすのでは?

人民解放軍空軍の微博アカウントで公開されたグアムの米空軍基地を標的にしたとみられる模擬攻撃の動画よりキャプチャ。

中国空軍は19日、核攻撃能力を備えたH─6爆撃機が、米領グアムのアンダーセン空軍基地を標的にしているとみられる攻撃のシミュレーションを行う動画を公開した。

動画は人民解放軍空軍の微博(ウェイボ)→ここからWeiBoアカウント上で公開されたで公開されている

中国は米国務省高官の台湾訪問に反発し、19日に台湾海峡付近で前日に続き軍事演習を行った。

グアムにはアンダーセン空軍基地など米軍の主要な施設があり、アジア太平洋地域の有事への対応で重要な役割を果たす。

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2分15秒の動画は「戦争の神『H─6K』、攻撃を開始」という名称で、映画の予告編のような劇的な音楽が流れ、H─6爆撃機が砂漠から離陸する様子が写っている。

その後操縦士がボタンを押すと、海岸沿いの滑走路に向かってミサイルが落ちる。どこの滑走路か具体的には言及していないが、動画で写される滑走路の衛星画像はアンダーセン空軍基地のレイアウトと全く同じに見える。

音楽が突然止まり、地面が揺れる様子や空から見た爆発の映像が写される。人民解放軍空軍は動画の説明で「われわれは祖国の空の安全の擁護者だ。祖国の空域を常に防衛する自信と能力を備えている」と記している。

中国国防省と米インド太平洋軍司令部は現時点で動画についてコメントの要請に応じていない。

シンガポール防衛戦略研究所のコリン・コ―研究員は動画について、中国の長距離での戦力投射能力の高まりを強調する狙いがあり、台湾や南シナ海を巡る衝突が起きれば、グアムのような後方拠点でも脅威にさらされると米側に警告する意図があると指摘した。

 

[ロイター]

テスラが新たな電池戦略、基本は連携ではなく垂直統合型が狙い!

2020年09月21日 11時21分56秒 | 日記

[17日 ロイター] - 米電気自動車(EV)メーカー、テスラを16年間でほぼ無名の状態から世界最大の時価総額を持つ自動車会社へと大成長させたイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、革新者であり、既成概念を打破する人物だともてはやされている。

 
 
9月17日、米電気自動車(EV)メーカー、テスラを16年間でほぼ無名の状態から世界最大の時価総額を持つ自動車会社へと大成長させたイーロン・マスク最高経営責任者(写真)は、革新者であり、既成概念を打破する人物だともてはやされている。ベルリンで2019年12月撮影(2020年 ロイター/Hannibal Hanschke)

しかしマスク氏の行動をたどってみると、むしろ「ファーストラーナー(知識や技術の獲得が早い人物)」という側面が強いことが分かる。テスラに欠けている技術を持つさまざまな企業と提携し、そうした企業の選り抜きの人材を引き抜いた上で、よりリスクを嫌うパートナーたちが超えられなかった限界を突破してきたのだ。

現在、マスク氏をはじめとするテスラ首脳陣は、22日に開く「バッテリーデー」で、サプライヤーにあまり頼らない、より「自給自足」的な企業になるための新たな取り組みを発表する準備を進めている。

<低価格で長持ちする新型バッテリー>

テスラが目指しているのは、EVのコストを下げてガソリン車との競争力を高められるようにする、低価格で長持ちするバッテリーの生産だ。マスク氏はこの面で、22日に大きな技術的進歩を明らかにすると何カ月も前からほのめかしてきた。

新しいバッテリーセルの設計や製造過程などが確立できれば、テスラはバッテリー生産で長年提携してきたパナソニックへの依存を減らすことができる、と事情に詳しい関係者は話す。

テスラの元役員の1人は「イーロン(マスク氏)は事業のどんな部分も他者に依存するのが嫌いだ。そして良くも悪くも、彼は自分の方がうまく、迅速かつ安価にできると思っている」と明かした。

パナソニックや韓国のLG化学、中国のCATL(寧徳時代新能源科技)と結んでいるバッテリー生産の提携関係を、テスラは今後も継続するとみられている。

しかし同時に、EV用バッテリーパックの基本部品であるバッテリーセルの生産を自社で管理する態勢、つまり高度に自動化された2つの工場(1つはベルリン近郊に建設中、もう1つはカリフォルニア州フリーモント)に製造拠点を置く方向に動きつつある。

<全てを自前で改善する>

マスク氏は2004年、生まれて間もないテスラの経営権を握って以来ずっと、提携や買収、人材スカウトを通じて技術を十分に吸収し、自家薬籠中のものとしてきたと同社の戦略に詳しい関係者は証言する。

テスラの狙いはフォード・モーターが1920年代に導入した原料から完成車までの一貫生産態勢、つまり垂直統合型企業のデジタル版だ、という。

テスラのサプライチェーン担当幹部だったトム・ウェスナー氏は「イーロンはサプライヤーがやってきたこと全てを改善できると考えていた。文字通り全部だ。彼は逐一自前で製造したがっていた」と指摘する。

そうしたマスク氏の戦略にとっては、EVのコストの大部分を占めるバッテリーが中心的な存在になる。部下らはバッテリーセルの自社生産に何年も反対してきたのだが、マスク氏はなおも追求し続けている。

<提携関係は曲折の歴史>

テスラのある元役員の話では、マスク氏は2011年に社内のチームに自前でのバッテリー生産検討を指示。結局は13年になってパナソニックとの間で、ネバダ州の合弁工場「ギガファクトリー1」での生産協定を結び、パナソニックは最近、同工場の生産ライン拡張計画を打ち出した。

ところが今になって、テスラはフリーモントで試験的にバッテリーセル製造ラインを稼働させ、ベルリン近郊に本格的なセル製造施設を建設しようとしている。

テスラのこうした提携先との関係の曲折は、パナソニックだけの話ではない。例えば早くからテスラに出資していたダイムラーとの協力を進める中で、マスク氏は自動車の走行レーン維持に使われるセンサー類に興味を抱いた。

テスラの「モデルS」の改装を手助けしたのはメルセデス・ベンツのエンジニアだ。しかし、この時点では、モデルSは、メルセデスの「Sクラス」にあるようなカメラや精密な運転支援センサー、ソフトウエアは装備していなかった。

ダイムラーのある幹部エンジニアは「マスク氏はこれらの技術を学び取り、さらに先に進んだ。われわれは我が社のエンジニア連中に、月を狙え(野心的な目標を立てろ)と言い聞かせているが、彼は一挙に火星まで行ってしまった」と驚きをあらわにした。

一方、やはり出資者だったトヨタ自動車7203.Tはマスク氏に、品質管理のノウハウを伝授。最終的にはダイムラーとトヨタの何人かの幹部がテスラに合流し、アルファベットGOOGL.O子会社グーグルやアップルAAPL.O、アマゾンAMZN.O、マイクロソフトMSFT.O、あるいはライバルのフォードやBMWBMWG.DE、アウディNSUG.DEなどから集められた人材とともに、重要な役割を担っている。

<なお高まる不協和音>

だが当然のように、あつれきも生まれた。

テスラは14年、自動運転システムの設計知識を得る一環として、イスラエルのセンサーメーカー、モービルアイを提携相手に選んだ。モービルアイの元幹部の1人は、テスラの運転支援機能「オートパイロット」の陰の立役者はモービルアイだと話す。

ところがその後、両社の間に溝が生まれ、16年にオートパイロット使用中のモデルSが衝突事故を起こし、運転者が死亡したのをきっかけに、正式に提携を解消している。

このモービルアイ元幹部は、自動運転車の運転支援用であって完全自動運転向けには設計されていないモービルアイの技術を、テスラが不適切な形で用いたのは疑いの余地がないと憤りを見せた。

モービルアイの後を継いでオートパイロットのサプライヤーとなったエヌビディアも、最終的には距離を置くようになった。エヌビディア幹部のダニー・シャピロ氏は、マスク氏が垂直統合型企業になることを非常に重視していて、自社で半導体を製造することを望んだと説明した。


マイクロプラスチックは海、土壌、生物を予想以上に汚染している

2020年09月20日 11時46分19秒 | 日記
 
 
 
1192の島々からなるモルディブ諸島の一部を空からとらえた。この小さな島国の砂浜や沿岸の海域には、世界で最多水準のマイクロプラスチックがある。(PHOTOGRAPH COURTESY EUROPEAN SPACE AGENCY)
 

 インド洋のモルディブ諸島には、1192の島がある。1992年、政府は、もうひとつの島を追加した。毎日500トンのごみを処分する埋め立て地として建造された人工島だ。

 どこであれ、島の生活には避けられない2つの特性がある。消費財の大半が島の外から運びこまれること、そしてごみの大半が観光客によって生み出されることだ。モルディブでは、この2点が特に際立っている。

 開発途上国であるモルディブに、国内の製造業はほとんど存在しない。政府の統計によれば、観光客1人が1日に出すごみの量は、首都マレの市民1人1日当たりのごみ排出量の2倍、他の200の島の住民の5倍に相当する。その結果、2019年、この小さな島国は、適正に処分されていないごみの1人当たりの量が世界4位になった。

 そして今回、オーストラリア、フリンダース大学の海洋科学者たちによる調査研究で、モルディブのごみの恐ろしい現実を裏付ける統計が加わった。生物多様性に富む海域として有名なこの島々の砂浜や海岸近くの水域に、世界最高レベルのマイクロプラスチックが含まれているというのだ。

 人口が多いナイファル島の22の地点で、フリンダース大学のチームは、海岸の砂やサンゴ礁がある浅い水域から多くのマイクロプラスチックを発見した。その量もさることながら、さらに心配な発見もあった。粒子の大半が、一帯にすむ海洋生物たちが食べる餌と同じ大きさだったのだ。

 これは好ましいニュースではない。この海洋生態系には、1100種以上の魚に加え、端脚類からクジラまで900種以上の生物が暮らしている。170種もの鳥たちもやってくる。調査チームは71匹のモンガラカワハギを採集、そのすべての胃から、1匹あたり平均8本の繊維状プラスチックを発見した。

ハワイ沖で採集したサンプルに含まれるプラスチック粒子。(PHOTOGRAPH BY DAVID LIITTSCHWAGER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
 

 調査結果は、8月2日付けで学術誌「Science of the Total Environment」に発表された。

「マイクロプラスチックのサイズは非常に重要です。とても小さな魚や無脊椎動物がマイクロプラスチックを体内に取りこみ、次に、より大きな魚がそれを食べるからです」と、フリンダース大学の保全生物学者で論文の著者の一人であるカレン・バーク・ダ・シルバ氏は説明する。

マイクロプラスチックの流れを追う

「どうすればプラスチック汚染を減らせるのか、それを理解するためには、その流れを知る必要があります」と、カナダのトロント大学の海洋生態学者、チェルシー・ロッシュマン氏は言う。

「プラスチック汚染の存在を知るだけでなく、これからは、プラスチックが集まりやすいホットスポットに移動する速さや、生態系を移動する間にプラスチックがどう変化するかを、把握しなければなりません」