国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ポーランドの親ドイツ政権の成立と欧州統合反対派の英国・スカンジナビア連合の孤立深刻化

2007年11月15日 | 欧州
10月21日のポーランド総選挙は、ドイツとロシアを共に敵に回しEU内部で孤立することになった奇矯な民族主義政権が倒れて、親ドイツ、親EU政権が誕生することになった点で非常に意義深いと思われる。新政権はユーロの2012年導入を目指すなど欧州統合にも積極的であり、これでマドリッドからワルシャワまで、欧州大陸の5大国全てが欧州統合推進派に足並みを揃えたことになる。ロシアが親ドイツであることを考えると、欧州半島ほぼ全体が親ドイツに塗りつぶされたと考えても良いだろう。 英国・スウェーデン・デンマークなどの欧州拡大賛成派は、トルコをEUに加盟させないためにフランスのサルコジ大統領が提案している「賢人会議」に反対だという。これらの国々はトルコをEUに加盟させることでEUの統合を阻止したいと考えていると思われる。揃って通貨にユーロを採用していないことも、通貨主権の統合に反対であることの証拠である。この観点から見ると、欧州統合反対派はEU未加盟国を含めても英国・スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・アイスランドの5カ国しか存在しないと想像される。ポーランドの前政権はユーロ導入に反対する点でこの英国・スカンジナビア連合の貴重な味方であったが、それが今回の総選挙で敗れたことは大きな痛手である。いずれにせよ統合反対派の劣勢は明らかであり、彼らは統合された欧州の中で孤立し、最終的には統合に飲み込まれていくことだろう。 ただ、欧州統合推進派の前途は決して安易なものではない。統合反対派の代表である英国の不動産バブルと同様にスペインやアイルランド、東欧諸国などの欧州辺境諸国を中心とする不動産バブルも崩壊しつつある。それは相対的に貧困なこれらの諸国の経済に大きな打撃を与えるだろう。ユーロ高の中でも輸出が堅調なドイツと異なりこれら諸国は膨大な経常赤字を出している。既にドイツ国債の利回りとフランス・スペインの国債の利回りの格差が拡大しているという情報もある。ユーロ加盟国の場合は国債価格の暴落、ユーロ未加盟国の場合は通貨の暴落という形式で統合推進派諸国は攻撃を受けることになるだろう。英国は自らの不動産バブルを崩壊させることでそれを欧州辺境諸国に波及させ、欧州統合を崩壊させるという一種の自爆テロ計画を準備している様にも思われる。欧州大陸諸国と英国の間のこの深刻な対立の行方から目が離せない。 . . . 本文を読む
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