国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

スペインの不法移民問題とセウタ・メリリャの領土問題:国際海峡対岸の橋頭堡は必要か?

2007年11月08日 | 欧州
今回のスペイン国王のセウタ・メリリャ訪問は公式には「住民との親睦を深めること」とされている。しかし、スペイン政府はジブラルタルを英国から奪還する目処を立て、それと同時に不法移民問題で重荷になりつつあるセウタとメリリャをモロッコに返還することを決意し、スペイン国王は両地域に別れを告げるために訪問したのではないかと私は想像する。軍艦と大砲が最新兵器であった19世紀と異なり、ミサイルや超音速戦闘機が最新兵器となった現代ではセウタやメリリャの重要性は低下している。また、国際金融資本の世界支配崩壊に伴ってジブラルタルが英国領土であり続ける必然性はなくなり、EU統合の枠組みの中でスペインに吸収されていくことはほぼ確実である。ジブラルタルを奪還するという悲願とセウタ・メリリャの領有は道義上両立しない。そして、欧州文明にとってはこれらの地域が大きな脅威となっている不法移民の玄関口になっていることも問題であろう。欧州としてはモロッコの経済発展を促進させることでモロッコからの不法移民流入を防止するとともに、不法移民への罰則を強化する(例えば、悪質な不法入国・滞在者に無期懲役あるいは死刑などの重い刑罰を与えるなど)ことが必要になってくるだろう。命懸けで流入してくるアフリカからの不法移民には、それに見合った刑罰でなければ阻止は困難だからだ。 日本から遠く離れたスペインのことなどどうでもよいという考えの人も多いだろう。しかし、重要な国際海峡の対岸の橋頭堡の行方というこの問題は、日本と韓国の関係と似通っている。国際金融資本の世界支配崩壊に伴って現在、世界中で国境線や文明間境界線の引き直しが進んでいる。日本文明と中国文明の境界線は従来朝鮮半島中央部の軍事境界線に存在してきたが、近い将来に米軍が撤退して朝鮮半島は統一され、日本文明と中国文明の境界線は対馬海峡(あるいは鴨緑江?)に移動することになると想像される。その時、日本は陸軍を派遣して釜山の橋頭堡だけは維持すべきか、それとも対馬を最前線にすべきかという問題と、このスペインの問題は重なってくるであろう。 . . . 本文を読む
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