国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

南米で考えたこと

2010年10月14日 | 中南米・カナダ
ペルーのインカ文明を筆頭として、アメリカでは先住民の文化を尊重する傾向が見られる。ペルーの最大の魅力はインカ文明の遺産であると言っても過言ではないだろう。底辺階層に属する先住民が国家の魅力を一手に引き受けるという現状は矛盾しており、非常に興味深く感じられた。 南米でも20世紀前半まではキリスト教宣教師による先住民のキリスト教化及び教育が広範に行われていたようである。つまり、先住民固有の文化は破壊され続けていたのだ。それが現在のように尊重されるようになったのは、1970年頃が境ではないかと思われる。1970年頃には西側世界で学生運動や大衆運動が非常に盛んになった。第二次大戦後に生まれた膨大なベビーブーマー達が20歳前後に達したことがその最大の要因であったと思われる。しかし、それだけで先住民に対する価値観のコペルニクス的転換を説明することは出来ないだろう。この価値観転換の最大の要因は、欧米諸国の経済発展がほぼ終了して低成長時代に移行し始め、資本主義システムがもはや明るい未来を欧米諸国に約束するものではないという認識が広まったためではないかと思われる。一言で言えば、資本主義システムが限界に達したのである。そして、資本主義の後に来るべき新たなポストモダンの世界システムが見あたらなかったことが決定的であったと思われる。米英は1980年以後金融業を国家の中心に据えることでポストモダンに明るい未来があるかのように振る舞ってきたが、今やその化けの皮が剥がれてしまった。かといって、従来型の製造業は発展途上国の安い賃金に歯が立たず、先進国から途上国に工場と雇用が流出し続けている。先進国の未来は真っ暗である様にすら思われる。このような現状が、ポストモダンの新しいシステムを求める世界的潮流を作り出し、それ故にこれまで軽視されていた先住民の文化や伝統に注目が集まっているのではないかと思われる(芸術の分野でこの傾向は非常に強い)。 しかし、先住民の生活は先進国の国民が数世紀又は十数世紀前に経験したものと大差ない。従って、先住民の文化にいくら注目しても新たな知見は得られないと思われる。結局、先進国は衰退という暗い未来を受け入れる他はないのではないかと感じた。50年後には、先進国と途上国の経済的格差は大幅に縮小していることだろう。 . . . 本文を読む
コメント (7)