こういった些事の一つ一つが、煮え湯を傷口に注ぐように、彼女の心を苛んだ。しかし、この二日間で散々苦しみを味わってきたので、彼女は一種の無感覚の状態に達していたため、彼女の五感は機能を停止したかのようだった。まるで彫像のように蒼白になり、肘掛け椅子に座るというより、倒れ込んだ。彼女の後をついて来て、せわしなく動き回り、話しかけるマダム・レオンにも気づかないほどだった。しかしこの家政婦の方は不安気で、それも無理もないことだった。
ド・シャルース伯爵に血縁者がいないということで、彼の最も古くからの友人であるド・フォンデージ氏が喪主となり弔問客を迎える手筈になっていた。彼は、軍服に身を固め必ずや早朝に参る、武人に二言はない、と宣言していた。ところが、葬式の始まる予定の時刻が近づき、弔問客が既に何人か姿を見せ始めたにも拘わらず、ド・フォンデージ氏は姿を現していなかった。
「こんなこと、考えられないことですわ」とマダム・レオンは繰り返していた。「それに心配です。将軍は時間厳守を絵に描いたような方ですもの! 何かが起こったに違いありませんわ!」
待ちきれなくなった彼女は窓辺に張りついて中庭を見下ろしていた。そして、やって来る客に見覚えがあると一人一人その名前を声に出して告げていた。その数は多数に上った。ド・シャルース伯爵は晩年は殆ど人に会うこともなかったが、かつては非常に多くの人に知られ、良き思い出を彼らに残していた。それだけではない。伯爵の友だちだったと言わずにいられない、そしてその証に教会まで参列せずにいられないという人々にとっては、それはあまりに偉大な名前だったのだ。この思いは殊更に強いものだったに違いない。新聞が埋葬を報道した後でなければ名声を獲得することのない今の時代にあっては。6.5
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