計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

過去3年の新潟県の冬の傾向

2018年04月07日 | 気象情報の現場から
 ようやく春を迎え、ホッと一息つくことが出来ております。
 このささやかな余裕の間に、過去3年の新潟県内の冬の傾向を調べてみたので、メモ程度に書き記しておきます。

 ここでは、上空1500m付近(850hPa面・輪島・09時と21時観測)の気温・風の傾向、および新潟県内の地上における降水量(積算降水量)の分布を調べて、2016,2017,2018年の各年の観測結果と平均的なパターンを比較しました。

 なお、この記事では、冬期間を1~2月に限定し、2016,2017,2018年の各1~2月を対象としました。また、例年の平均的なパターンは、1988年~2010年の各1~2月の平均値を用いました。

(1) 2016年01-02月の傾向


図1-1・気温の出現比率(2016年01-02月と平均パターンの比較)

 図1-1は気温の出現比率です。横軸には気温、縦軸には出現比率を百分率で表しています。観測結果を基にした「気温の確率分布」をイメージして頂ければ良いでしょう。ここでは平均パターン(1988-2010年の平均)と2016年の場合を比較しています。

 ここで、上空1500m付近(850hPa面)の気温の目安は次のようになります。

・ -3~ 0℃ … 山沿いで雪を降らせる寒気
・ -6~-3℃ … 山沿いでは雪、平野部でも霙を降らせるような寒気
・ -9~-6℃ … 平地でも雪を降らせるような寒気/真冬並みの寒気
・-12~-9℃ … 真冬並みの非常に強い寒気
・-12℃以下 … 年に一度あるか無いかの非常に強い寒気

 図1-1の結果によると、2016年は(平均パターンに比べて)-7℃付近の頻度が突出しているのが特徴です。この程度の気温であれば、普通の冬の寒気なので、特に寒い冬というわけではなさそうです。


図1-2・風速の出現比率(2016年01-02月と平均パターンの比較)

 図1-2は風速の出現比率です。横軸には風速、縦軸には出現比率を百分率で表しています。観測結果を基にした「風速の確率分布」をイメージして頂ければ良いでしょう。ここでは平均パターン(1988-2010年の平均)と2016年の場合を比較しています。

 ここで、上空1500m付近(850hPa面)の風速の目安は次のようになります。

・  ~10m/s … 冬の季節風は弱い(平野部中心の降雪になりやすい)
・ 10~14m/s … 冬の季節風は並の強さ
・ 14m/s~ … 冬の季節風は強い(山間部中心の降雪になりやすい)

 図1-2の結果によると、2016年は(平均パターンに比べて)5m/s付近の頻度が突出しているのが特徴です。14m/s付近でも突出していますが、こちらはまだギリギリ「並の強さ」となるため、全体としては「季節風はやや弱めの傾向」にシフトしていたと考えられます。


図1-3・風配図(2016年01-02月と平均パターンの比較)

 図1-3は風配図です。風向別に出現比率を表しています。観測結果を基にした「風向の確率分布」をイメージして頂ければ良いでしょう。ここでは平均パターン(1988-2010年の平均)と2016年の場合を比較しています。

 図1-3の結果によると、2016年は(平均パターンに比べて)西南西(WSW)の頻度が突出しているのが特徴です。全体的に西南西~西寄りの風が出現しやすい傾向にありました。


図1-4・降水量の平均パターンに対する比率(2016年01-02月)

 図1-4は1~2月の積算降水量の分布です。ここでは、各観測点の1988-2010年の平均値を「1.0」とした場合の、2016年の積算降水量の比率を表しています。「例年に比べて降水量が多い・少ない」の度合いを表すものとイメージして頂ければ良いでしょう。

 季節風の風向が西南西~西寄りとなるため、新潟県内は中越・下越地方を中心に降水の極大域が偏る傾向があります。また、季節風はやや弱めとなるため、降水域も山間部というよりも平野部側にシフトしやすくなったようです。

(2) 2017年01-02月の傾向


図2-1・気温の出現比率(2017年01-02月と平均パターンの比較)

 図2-1は気温の出現比率です。ここでは平均パターン(1988-2010年の平均)と2017年の場合を比較しています。

 2017年は(平均パターンに比べて)-8℃付近の頻度が突出しているのが特徴です。この程度であれば、特に寒い冬とまでは言えませんが、それなりに寒い冬ではあったようです。


図2-2・風速の出現比率(2017年01-02月と平均パターンの比較)

 図2-2は風速の出現比率です。ここでは平均パターン(1988-2010年の平均)と2017年の場合を比較しています。

 2017年は(平均パターンに比べて)14~17m/s付近の頻度が突出しているのが特徴です。この冬は風が強く、山雪型となりやすい傾向が現れていました。


図2-3・風配図(2017年01-02月と平均パターンの比較)

 図2-3は風配図です。風向別に出現比率を表しています。ここでは平均パターン(1988-2010年の平均)と2017年の場合を比較しています。

 2017年は(平均パターンに比べて)西北西(WNW)の頻度が突出しているのが特徴です。全体的に西北西~西寄りの風が出現しやすい傾向にありました。



図2-4・降水量の平均パターンに対する比率(2017年01-02月)


 図2-4は1~2月の積算降水量の分布です。ここでは、各観測点の1988-2010年の平均値を「1.0」とした場合の、2017年の積算降水量の比率を表しています。

 季節風の風向が西北西~西寄りとなるため、新潟県内は上越・中越地方を中心に降水の極大域がシフトする傾向があります。また、季節風は強めとなるため、降水域も山間部に偏る特性が現れました。


(3) 2018年01-02月の傾向


図3-1・気温の出現比率(2018年01-02月と平均パターンの比較)

 図3-1は気温の出現比率です。ここでは平均パターン(1988-2010年の平均)と2018年の場合を比較しています。

 2018年は(平均パターンに比べて)-10℃付近の頻度が突出しているのが特徴です。これはやはり例年よりも厳しい寒さであったことが判ります。


図3-2・風速の出現比率(2018年01-02月と平均パターンの比較)

 図3-2は風速の出現比率です。ここでは平均パターン(1988-2010年の平均)と2018年の場合を比較しています。

 2018年は(平均パターンに比べて)15~23m/s付近の頻度が上回っているのが特徴です。この冬は風が強い傾向だったことが判ります。


図3-3・風配図(2018年01-02月と平均パターンの比較)

 図3-3は風配図です。風向別に出現比率を表しています。ここでは平均パターン(1988-2010年の平均)と2018年の場合を比較しています。

 2018年は(平均パターンに比べて)西(W)の頻度が突出しているのが特徴です。全体的に西~西南西寄りの風が出現しやすい傾向にありました。


図3-4・降水量の平均パターンに対する比率(2018年01-02月)


 図3-4は1~2月の積算降水量の分布です。ここでは、各観測点の1988-2010年の平均値を「1.0」とした場合の、2018年の積算降水量の比率を表しています。

 季節風の風向が西~西南西寄りとなるため、新潟県内は上越・中越地方を中心に降水の極大域がシフトする傾向があります。また、季節風は強めとなるため、降水域も山間部に広がる特性も現れました。
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