計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

速度ポテンシャルΦ と 流れ関数(流線関数)Ψ

2024年08月12日 | お天気のあれこれ
 大気の流れを表す指標には「速度ポテンシャルΦ」と「流れ関数(流線関数)Ψ」があります。

 大気は速度ポテンシャルΦの低い方から高い方に流れ、その極大・極小は収束・発散の中心を表します。また、流れの速度ベクトルの向きは、速度ポテンシャルの等値線(Φ=一定)に対して直角です。簡単な場を考えてみましょう。


 一様な西風と南風の2つの場合を考えてみます。速度ポテンシャルΦは、東西風(u成分)の場合は東西方向(x軸方向)に勾配を持つ一方、南北風(v成分)の場合は南北方向(y軸方向)に勾配を持ちます。

 西風の場合は東西位置x、x+δxにおける速度ポテンシャルΦ(x)、Φ(x+δx)と風のu成分の関係を差分で表現し、u>0(西風)となる条件を求めます。この結果「Φ(x+δx)>Φ(x)」となり、「(風下のΦ)>(風上のΦ)」となります。

 南風の場合は南北位置y、y+δyにおける速度ポテンシャルΦ(y)、Φ(y+δy)と風のv成分の関係を差分で表現し、v>0(南風)となる条件を求めます。この結果「Φ(y+δy)>Φ(y)」となり、「(風下のΦ)>(風上のΦ)」となります。


 こちらの図では、速度ポテンシャルΦが同心円状に分布する場を考え、その中心がΦの極大・極小になる場合を考えてみましょう。速度ポテンシャルΦの値が低い方から高い方に風は流れるので、中心が極小の場合は、中心から周囲に向かって風が流れます(発散)。一方、中心が極大の場合は、周囲から中心に向かって風が流れます(収束)


 続いて、大気は流れ関数(流線関数)Ψの高い方を右に見るように流れ、その極大・極小は高気圧性・低気圧性循環の中心を表します。また、流れの速度ベクトルの向きは、流れ関数(流線関数)の等値線(Ψ=一定,流線)に沿った(接線)の向きとなります。簡単な場を考えてみましょう。


 一様な西風と南風の2つの場合を考えてみます。流れ関数(流線関数)Ψは、東西風(u成分)の場合は南北方向(y軸方向)に勾配を持つ一方、南北風(v成分)の場合は東西方向(x軸方向)に勾配を持ちます。

 西風の場合は南北位置y、y+δyにおける流れ関数(流線関数)Ψ(y)、Ψ(y+δy)と風のu成分の関係を差分で表現し、u>0(西風)となる条件を求めます。この結果「Ψ(y)>Ψ(y+δy)」となり、「Ψが高い方を右手に見るように」流れを生じます。

 南風の場合は東西位置x、x+δxにおける流れ関数(流線関数)Ψ(x)、Ψ(x+δx)と風のv成分の関係を差分で表現し、v>0(南風)となる条件を求めます。この結果「Ψ(x+δx)>Ψ(x)」となり、「Ψが高い方を右手に見るように」流れを生じます。


 こちらの図では、流れ関数(流線関数)Ψが同心円状に分布する場を考え、その中心がΨの極大・極小になる場合を考えてみましょう。流れ関数(流線関数)Ψの値が高い方を右に見るように風は流れるので、中心が極小の場合は、反時計回りに風が流れます(低気圧性循環)。一方、中心が極大の場合は、時計回りに風が流れます(高気圧性循環)。

 最後にもう一点、速度ポテンシャルの等値線と流れ関数(流線関数)の等値線は直交します。
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モンスーントラフ と モンスーンジャイア

2024年08月07日 | お天気のあれこれ
 この記事を書いている2024年08月07日の時点で、日本の南海上には2つの熱帯低気圧が確認されています。梅雨が明けて、本格的な夏を迎えました。これから気になるのが、熱帯低気圧や台風です。

 熱帯低気圧や台風の発生するメカニズムは多様ですが、日本の南側の海上に見られる「モンスーントラフ」や「モンスーンジャイア」の動向も重要なカギとなります。

 日本の南側の海上では、まず南西から季節風(モンスーン)が流れ込みます。一方、太平洋高気圧の縁辺を回るように貿易風(東風)も流れ込むため、2つの流れが収束します。そこで形成される低圧部のことを「モンスーントラフ」と言います。この海域では熱帯低気圧や台風が発生しやすいのが特徴です。

 このモンスーントラフにおける低気圧性循環が成長することで、閉じた等圧線で囲まれた同心円状の低圧部(※)を形成することがあります。これを「モンスーンジャイア」または「モンスーン渦」と言います。この閉じた等圧線の直径は約2500kmにも及びます。また、モンスーンジャイアに伴う雲は、渦の中心から離れた東縁部~南縁部に形成されます。


 また、モンスーンジャイアと似た現象に「モンスーン低気圧」があります。こちらも閉じた等圧線で囲まれた同心円状の低圧部(※)となりますが、その直径は約1000km程度です。また、中心付近に対流活動を持たず、全体としてドーナツ状の雲分布を持つのが特徴です。

 いわゆる「台風」は中心付近で対流雲が組織化されるのに対し、「モンスーンジャイア」や「モンスーン渦」は中心ではなく周辺部で対流活動が活発になる傾向があります。

(※)実際の天気図上は、必ずしも綺麗に「閉じた同心円状」になるとは限りません。
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