この前は、長期予報の研究に着手したと言う話題を書きましたが、それと平行して数値シミュレーションの研究も相変わらず進めています。これまでの研究の結果、興味深い現象を新たに解析できましたので、関連する短報を「てんきすと」に投稿しました。まあ、編集委員会には掲載号はいつでも良いと伝えて置きましたので、忘れた頃にひょっこり掲載されるかもしれません(まあ、ボツにされなければの話ですが)。
そんな中、積年の研究の中でも最重要課題の一つである気象シミュレーションのための境界条件の自動決定法の開発に苦戦しております。(まあ、楽勝な研究だったら何年も掛からないで解決するわけですが)。LESを応用した3次元乱流数値シミュレーション技術そのものの開発で10年近く掛かっている・・・。
いや!より正確な事を言うと、熱流体力学の方程式を解く事から始まりそれを2次元計算で数値的に解き、さらに熱エネルギー方程式を加えて解き、そこから3次元計算に拡張し、乱流モデルを搭載して安定的な数値解析を行い、しかも実際の複雑な地形条件を考慮したシミュレーションを構築するまでに10年近くを要しているわけですf(^^;)。時間、掛かりすぎ!って言われるとグサッ!とくるのですが、まあ殆ど独学だった事に免じて勘弁してやって下さい。
研究を始めた当初は流体力学の研究ではなかったんです。単に山形県置賜地方の気象特性を知りたかったのです。そこから流体力学の壁にぶち当たった、というものです。もちろん当時(10年位前の話)はLESはおろかk-εモデルを知らなかったのです(爆)。その長~い長~いこれまでの研究では流体力学方程式を解く事に主眼を置いてきたわけですが、それと平行して重点を置いていたのが境界条件の問題です。
学生時代を経て、前職の頃は本業の傍ら「週末研究」の体制でしたが、その頃から何年も悩まされてきた「因縁」の問題なのです。CAMJの話題提供でも流体力学方程式の数値解法の他に「境界条件」についても鋭い議論をさせて頂きました。やっぱり数値解析を手がける皆さんは悩んでるんですね。
シェークスピアのハムレットの名台詞に「この命、生きながらえて良いものか、それが問題だ」なんてものがあったように思いますが、私の場合は「境界条件をどのように設定するのか?それが問題だ」
キャビティ流れやバックステップ流れのようにある程度パターン化された流れ、特に閉空間の流れの場合は境界条件も決定しやすいでしょう。しかし、局地気象の場合はまず、広大に開かれた3次元空間から計算対象領域を切り出さなくてはなりません。そして、その計算対象領域の周囲の流れを仮定しなければなりません。この周囲の仮定が境界条件となります。局地的な風の流れは複雑です。風のプロファイルなどを基に境界条件を設定しようにも複雑すぎて表現が難しいのです。
これまでの局地気象に関する数値シミュレーションでは、境界条件は一つ一つ丁寧に人間が精査した上で決定していました。当然、人間の気象場に関する解釈(=主観)が入りますが、それ故に気象特性が反映されやすくなるという利点があります。一方、このプロセスを自動化するという事は、境界条件をある「一定の基準」で客観的に解析すると言う事。その基準は、これまで人間が行ってきた気象場に対する解釈の基準に極力近づけなければなりません。しかし、だからといって流体力学の法則を逸脱する事は許されません。境界層理論をより深く勉強していかなければならないと感じています。
この板挟みの中で、境界条件の基準を策定するのは、大げさに言えば自分の境界条件に対する思想・哲学を問われると言っても過言ではありません。私自身、境界条件にはずっと悩まされています。これからも悩み、模索し続ける事でしょう。その時その時で「現時点での答え」を導いていくしかないのでしょう。ひょっとしたら、今の私には解けなくても、未来の自分が解いてくれるかもしれない・・という淡い期待を寄せてながら。
漠然としたアイデアはあるけれど、それでも具体化していくにつれて緻密な仕掛け(=計算アルゴリズム)が何重にも必要になってくるのです。かつての私ならこんな業を思いつけなかっただろうな・・・と思いながら、これまで培った経験の重さを噛み締めています。理論計算は一見スマートに見えますが、ある意味「匠の技」です。某局の「プ○フェッショナル ~仕事の○○~」からお呼びが掛かるには至りませんが(爆)
そういえば、今日は浅水方程式とNavier-Stokes方程式の適用限界についても議論を交わしました・・・。やっぱり、誰しも皆悩んでる。
傍目には数値解析なんて方程式を解くだけでしょ!な~んて簡単に考えている人も少なくないのでは?概論を語るだけなら自由です。かくかくしかじかをこうするだけじゃないか!というだけなら、誰でも出来ます。専門知識も殆ど不要でしょう。ただ方程式を解けばよい、というものではないのです。精度・妥当性・計算の安定性や仕掛け、そういった細々とした条件を考慮しつつインプリメントしていかなければならないのです。
ひと視線を外に向けてみると・・・携帯電話は今では非常に身近なものになりました。しかし、携帯電話のカバーを開けてみると、基盤にびっしりと張り巡らされた電子回路や半導体部品。その一つ一つの部品もまた精巧に設計されたものですね。でも、ユーザーはそんな電子回路や半導体部品の事など気にすることなく、携帯電話を使っているわけです。
私がやろうとしているのは、強引に例え話をすると、携帯電話のテクノロジーを一から学び、その中の一部の機能に特化した新たな通信デバイスを半導体部品や電子回路の部分から設計・開発しようとしているのです。ただ、携帯電話の真似をするのではありません。携帯電話の真似が出来てはじめてプロトタイプなのです。そこからオリジナルの技術を発展させていこうとしているのです。
熱流体の計算システムだけなら自分で開発しなくても、市販のCAEシステムを使えば良いじゃないか、というお声もあるかもしれません。それもただ単に熱流体のシミュレーションをして、それでこんな結果が出来ました~~ちゃんちゃん♪で終わるならそれも一理あるでしょう。しかし、これはコアテクノロジーの一つに過ぎないのであってそれだけで全てとなるものではありません。
熱流体CAEにはない特性を独自に組み込んだり、全く異質の数値モデルと連動させたりする事もあるでしょう。数値モデルの計算過程に気象予報士の感性を意図的に盛り込むような修正も考えています。市販のCAEでもある程度はできるかもしれませんが、究極的にはCAEソフトそのものを解体して大改造する必要が出てきます。それこそ、某局の「大改造○的○フォー○フター」です!いずれにせよ(仮に市販のCAEをぶっ壊して大改造するとしても)独自に数値シミュレーションを組み上げる位の技術が無ければ、何にも出来ないと言う事です。
だんだんヒートアップしてきましたので・・・そろそろこの辺で強制的にクールダウンします。
そんな中、積年の研究の中でも最重要課題の一つである気象シミュレーションのための境界条件の自動決定法の開発に苦戦しております。(まあ、楽勝な研究だったら何年も掛からないで解決するわけですが)。LESを応用した3次元乱流数値シミュレーション技術そのものの開発で10年近く掛かっている・・・。
いや!より正確な事を言うと、熱流体力学の方程式を解く事から始まりそれを2次元計算で数値的に解き、さらに熱エネルギー方程式を加えて解き、そこから3次元計算に拡張し、乱流モデルを搭載して安定的な数値解析を行い、しかも実際の複雑な地形条件を考慮したシミュレーションを構築するまでに10年近くを要しているわけですf(^^;)。時間、掛かりすぎ!って言われるとグサッ!とくるのですが、まあ殆ど独学だった事に免じて勘弁してやって下さい。
研究を始めた当初は流体力学の研究ではなかったんです。単に山形県置賜地方の気象特性を知りたかったのです。そこから流体力学の壁にぶち当たった、というものです。もちろん当時(10年位前の話)はLESはおろかk-εモデルを知らなかったのです(爆)。その長~い長~いこれまでの研究では流体力学方程式を解く事に主眼を置いてきたわけですが、それと平行して重点を置いていたのが境界条件の問題です。
学生時代を経て、前職の頃は本業の傍ら「週末研究」の体制でしたが、その頃から何年も悩まされてきた「因縁」の問題なのです。CAMJの話題提供でも流体力学方程式の数値解法の他に「境界条件」についても鋭い議論をさせて頂きました。やっぱり数値解析を手がける皆さんは悩んでるんですね。
シェークスピアのハムレットの名台詞に「この命、生きながらえて良いものか、それが問題だ」なんてものがあったように思いますが、私の場合は「境界条件をどのように設定するのか?それが問題だ」
キャビティ流れやバックステップ流れのようにある程度パターン化された流れ、特に閉空間の流れの場合は境界条件も決定しやすいでしょう。しかし、局地気象の場合はまず、広大に開かれた3次元空間から計算対象領域を切り出さなくてはなりません。そして、その計算対象領域の周囲の流れを仮定しなければなりません。この周囲の仮定が境界条件となります。局地的な風の流れは複雑です。風のプロファイルなどを基に境界条件を設定しようにも複雑すぎて表現が難しいのです。
これまでの局地気象に関する数値シミュレーションでは、境界条件は一つ一つ丁寧に人間が精査した上で決定していました。当然、人間の気象場に関する解釈(=主観)が入りますが、それ故に気象特性が反映されやすくなるという利点があります。一方、このプロセスを自動化するという事は、境界条件をある「一定の基準」で客観的に解析すると言う事。その基準は、これまで人間が行ってきた気象場に対する解釈の基準に極力近づけなければなりません。しかし、だからといって流体力学の法則を逸脱する事は許されません。境界層理論をより深く勉強していかなければならないと感じています。
この板挟みの中で、境界条件の基準を策定するのは、大げさに言えば自分の境界条件に対する思想・哲学を問われると言っても過言ではありません。私自身、境界条件にはずっと悩まされています。これからも悩み、模索し続ける事でしょう。その時その時で「現時点での答え」を導いていくしかないのでしょう。ひょっとしたら、今の私には解けなくても、未来の自分が解いてくれるかもしれない・・という淡い期待を寄せてながら。
漠然としたアイデアはあるけれど、それでも具体化していくにつれて緻密な仕掛け(=計算アルゴリズム)が何重にも必要になってくるのです。かつての私ならこんな業を思いつけなかっただろうな・・・と思いながら、これまで培った経験の重さを噛み締めています。理論計算は一見スマートに見えますが、ある意味「匠の技」です。某局の「プ○フェッショナル ~仕事の○○~」からお呼びが掛かるには至りませんが(爆)
そういえば、今日は浅水方程式とNavier-Stokes方程式の適用限界についても議論を交わしました・・・。やっぱり、誰しも皆悩んでる。
傍目には数値解析なんて方程式を解くだけでしょ!な~んて簡単に考えている人も少なくないのでは?概論を語るだけなら自由です。かくかくしかじかをこうするだけじゃないか!というだけなら、誰でも出来ます。専門知識も殆ど不要でしょう。ただ方程式を解けばよい、というものではないのです。精度・妥当性・計算の安定性や仕掛け、そういった細々とした条件を考慮しつつインプリメントしていかなければならないのです。
ひと視線を外に向けてみると・・・携帯電話は今では非常に身近なものになりました。しかし、携帯電話のカバーを開けてみると、基盤にびっしりと張り巡らされた電子回路や半導体部品。その一つ一つの部品もまた精巧に設計されたものですね。でも、ユーザーはそんな電子回路や半導体部品の事など気にすることなく、携帯電話を使っているわけです。
私がやろうとしているのは、強引に例え話をすると、携帯電話のテクノロジーを一から学び、その中の一部の機能に特化した新たな通信デバイスを半導体部品や電子回路の部分から設計・開発しようとしているのです。ただ、携帯電話の真似をするのではありません。携帯電話の真似が出来てはじめてプロトタイプなのです。そこからオリジナルの技術を発展させていこうとしているのです。
熱流体の計算システムだけなら自分で開発しなくても、市販のCAEシステムを使えば良いじゃないか、というお声もあるかもしれません。それもただ単に熱流体のシミュレーションをして、それでこんな結果が出来ました~~ちゃんちゃん♪で終わるならそれも一理あるでしょう。しかし、これはコアテクノロジーの一つに過ぎないのであってそれだけで全てとなるものではありません。
熱流体CAEにはない特性を独自に組み込んだり、全く異質の数値モデルと連動させたりする事もあるでしょう。数値モデルの計算過程に気象予報士の感性を意図的に盛り込むような修正も考えています。市販のCAEでもある程度はできるかもしれませんが、究極的にはCAEソフトそのものを解体して大改造する必要が出てきます。それこそ、某局の「大改造○的○フォー○フター」です!いずれにせよ(仮に市販のCAEをぶっ壊して大改造するとしても)独自に数値シミュレーションを組み上げる位の技術が無ければ、何にも出来ないと言う事です。
だんだんヒートアップしてきましたので・・・そろそろこの辺で強制的にクールダウンします。