計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

新潟県内の花粉飛散の傾向分析

2024年02月18日 | 気象情報の現場から
 新潟県内3カ所(新潟・長岡・上越)の花粉飛散傾向を調べました。気象要素は「気象庁の観測値」、花粉の飛散量は「環境省花粉観測システム(はなこさん)」を用いています。

 まずは、2009~2020年の年別(各年の2月~5月)の花粉飛散量を集計しました。棒グラフの比較から、シーズンを通しての花粉飛散量は年によって大きく変動することが判ります。また、箱ひげ図の比較からは、新潟よりも長岡・高田の方が多く飛散しています。



 続いて、旬別の平均的な傾向を集計しました。棒グラフの推移から、旬別平均では「3月上旬~4月中旬」が大きな山となるようです。累積比率のグラフを見ると、この時期の大きな上昇カーブが現れているのが良く判ります。



 続いて、新潟県内の花粉飛散量と前年の気象要素の関係について調べてみました。今回は「山間部に多く分布するスギの花粉が平野部に拡散される」過程も考慮し、山間部での観測結果も分析対象に加えました。この結果、前年8月下旬の平均気温および9月下旬の降水量と相関が見られました。

(1)新潟の花粉と新潟・津川の前年気象の関係


(2)長岡の花粉と長岡・守門の前年気象の関係


(3)高田の花粉と高田・関山の前年気象の関係


 ちなみに、気温と降水量を同時に考慮する場合は「重回帰分析」を行うことになります。しかしながら、花粉データについて環境省花粉観測システム(はなこさん)の情報配信サービスが既に終了しております(現在公開されているのは「過去のデータ」のみ)。従って、改めて予測を試みたとしても、その予測結果の検証が出来ません。ここが、ちょっと悩みどころですね。
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2024年02月05日の関東の雪

2024年02月06日 | 気象情報の現場から
 2月5日は南岸低気圧の東進に伴い、関東地方でも大雪となりました。興味深い事例なので、メモとして記事を上げておきます。

 以前、2018年の1月に「南岸低気圧に伴う関東地方の降雪を考えてみる」と言う記事を書きました。まずはその内容を簡単に振り返ってみましょう。

 南岸低気圧の接近時、関東平野に流れ込む南東~北東の風が、北から流入する寒気を堰き止めることがあります。この結果、関東平野では寒気が滞留します。

 また、低気圧に伴う雲から滞留寒気に向かって雨粒が降り注ぎ、これら雨粒が蒸発すると、下層空気の冷却が進みます。これは雨粒の相変化に伴い、周囲の空気から潜熱が奪われるためです。こうして「地上から上空まで」十分冷えた状態が形成されます。

 従って雪から雨に融けにくくなるので、その分「雪の状態を維持したまま」地上に到達しやすくなります。


 さらに、低気圧の後面では融解層も下がるので、上空の降水が雪のまま地上に到達することがあります。この場合は「雪から雨に融けるよりも、地上に到達する方が早くなる」のです。



 さて、件の2月5日は前線を伴った低気圧が日本の南岸を東に進みました。さらに上空の寒気も南下しており、東日本の太平洋側の地域でも、北東の流れに伴う寒気の流入が見られました。



 北東から関東山地に流れ込んだ寒気は、南岸低気圧に伴う南寄りの風によって堰き止める形となりました(この点は冒頭の構図とは異なります)。さらに、上空寒気の南下に伴い融解層も下がったことで、上空の降水が雪のまま地上に到達しやすくなりました。



 2月5日の東京における時系列変化です。正午を過ぎて降水が始まり、気温も「釣瓶落とし」の如く降下しました。上空の寒気の南下に加えて、滞留寒気に降った雨粒が蒸発した効果も合わさって、下層空気の冷却が進んだようです。この結果、地上から上空まで十分冷えた状態が形成されたことで、16時以降には降雪が始まりました。

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続・2024年1月は少雪傾向

2024年02月02日 | 山形県の局地気象
 前回の記事「2024年1月は少雪傾向」の続きです。

 今度は山形県内の5地点における12月と1月の降雪量に関して、平年値(1991~2020年)と今季の比較を行いました。この結果、いずれの地点も今季は平年値を下回っていました。特に、朝日連峰にある肘折では「平年値の5~6割程度」と顕著な少雪となっています。水不足など、今後の影響が気になる所です。



 また、上記5地点の平年(1991~2020年)の月降雪量の変動は次の箱ひげ図のようになります。このグラフと比べると、今季は平年の「第一四分位点」以下となる所が多く、下方の「外れ値」の水準となる所さえありました(平年の変動範囲の25パーセンタイル以下)。



 上空にも目を向けてみましょう。平年(1991~2020年)と今季(2024年)1月の850と500hPa面における気温分布(秋田)を「箱ひげ図」の形で比較しました。今季は、一時的な寒気南下もありましたが、全体的に「上方シフト」の傾向でした。


 そこで念のため、1月の850hPa面気温の平均値について統計的仮説検定(z検定)を試みた結果、有意差(今季>平年)が見られました。この上方シフトは「偶然ではなく必然」と言うことです。


 やはり「1月は暖冬・少雪だった」と言うことですね。
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