計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

言葉を「紡ぐ」感覚

2006年04月22日 | 気象情報の現場から
 さて、事業成果報告書や研究発表が終わって・・・今度は事業内容の申請書類です。資金繰りの一環として、研究支援・援助を申請するわけです。様々な助成金に応募するのですが、書類審査やプレゼンテーションによる審査があります。ちなみに、私の所属しているP/Jは大学との共同研究ということもあり、大学側と企業側がそれぞれに研究支援申請を行うことになります。

 こんな事を書くと、共同研究と言えば企業が莫大な予算を持っていて、そのお金が研究室に流れる・・・というイメージがありますが、そんな企業はごく一部でしょう。いわゆる大企業やその関連企業の類であることが殆どです。地方の中小零細企業(若いベンチャー企業も含む)は助成金等のサポートを受けてビジネスチャンスにチャレンジするわけです(ですからその成果を厳しく問われるのは言うまでも無い事です)。今では大学と協力して産学協同での大学発ベンチャー企業と言う形態も登場しています。

 助成金にしてもエンジェルからの資金援助にしても「ビジネスに対する投資」であることには変わりないので、自分たちが進めている、もしくは進めようとしている研究開発事業であったり情報配信事業が、本当に投資に値するものなのかどうかを審査されるのです。

 そこで申請書類が重要になってきます。書類とはまさに「文章によるプレゼンテーション」です。伝えるべき内容は同じでも、伝え方・表現で大きく印象が変わるのです。限られたスペースの中で、伝えるべき内容を簡潔に分かり易く伝えつつ、読者に効果的に訴え掛けてインパクトを与えなければなりません。

 色々なフレーズに順序を入れ替えたり、論理展開に細心の注意を払い、言葉の表現の細部に至るまで、何度も何度も練り直していきます。根拠となるべき部分は情報やデータでしっかり裏付けをしていきます。

 まさに言葉を紡いでいくような繊細な作業です。このような文章を数多く書いていく事で自分の勉強にもなりますし、自分の研究論文にもちょいと拝借・・・なんて事もあります。言ってみれば、このような書類の形で自分の日頃の業務成果が評価されるので、まさしく勝負所なのであります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新たな研究のスタート

2006年04月19日 | 気象情報の現場から
 さて、私の新年度がいよいよ始まりました。前年度は積年の思いが叶い、自分の数値シミュレーション・プログラムを開発する事が出来ました。今年度はこの技術の幅を広げていく事と、実際の現象との整合性をより強く意識していく事になるでしょうねえ。

 山形県置賜地方に焦点を絞ってきた研究の方も、もう置賜地方に固執することなくより広い範囲に目を向けていこうと思っています。また、新しい解析手法も取り入れていこうと思っています。その成果はCAMJであったり、然るべき学会などの場で発表していきたいですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

仙台に行ってきました♪これで一息つきたいなあ・・・

2006年04月17日 | CAMJ参加記録
 仙台は遠かった・・・。新幹線で片道4時間近く、往復で8時間近くです。朝は7時過ぎに家を出て、戻ってきたのがなんと21時を過ぎていました。普通にJRの切符を購入していたら、軽~く「参萬円超え」なのですが、JR東日本の「土日きっぷ」を購入したので締めて「壱萬八千円」也!要するに土日はJR乗り放題なんですね。

 折角の「土日きっぷ」なので、土曜日も東京都小平市にちょこっと散歩してきました。彼の地は前職時代を過ごした思い出の地・・・もとい嵐のような戦場の地。あの頃は自分の人生を深く考え、またとてつもなく不安と絶望に悩んでいた日々を送っていました。あの頃に必死で活路を見出そうとしていたことがきっと今に繋がっているのだろうと思っています。

 その当時からのささやかな夢の中に、「東北地方に気象予報士会の地方組織が結成されたら、以前から続けてきている山形の天気に関する研究を発表したい」というものがありました。この頃から週末研究と言う形でシミュレーションの研究を始めていましたので、当然、山形県内の数値シミュレーションは既に視野に入っていました。

 つまり、今回のCAMJ仙台における、山形県内の数値シミュレーションの話題提供は苦節ン年にも渡るそれこそ「積年のささやかな夢」がいよいよ実現する瞬間でもあったのです。だからこそ、その前にもう一度、小平の土を踏みしめて置きたかったのです。あの頃の自分に想いを馳せていました。

 翌日はいよいよ仙台に出陣。仙台駅から会場まではいつもならタクシーを飛ばすのが、今回は地下鉄に乗ってみました。仙台市の地下鉄は初めてだったのですが、駅が地下深くでまるで迷路?と感じました・・・が1度慣れてみると、東京よりは分かりやすくて使い勝手が良いですね。

 さて、会場について半年振りに仙台支部の皆様と再会を果たし、連れ立って会議室へ。例会の始めに自己紹介と事務連絡などがあり、その後で話題提供に移りました。そう、本番です。

 発表が25分くらいで質疑討論も20分位だったかなあ・・・。質疑応答では活発な議論に発展しました。やっぱ緊張しますね~。事前配布資料はインターネット経由で配布済み、発表用スライドも何度も書き直し、ここ2週間はプレゼンの練習も欠かさず、準備はしっかり重ねていました。それにこの発表は「積年のささやかな夢」という重いモノです。もちろん、失敗が許される事は万に一つもありません。

 私の話題提供はまさに真剣勝負です。唯でさえ難しい非線形偏微分方程式の概念を簡潔に分かり易く導入し、乱流モデルや流体の計算に関する専門的な手法から現実の気象にスムーズに結び付けていかなければなりません。ただ「資料を提示して喋れば良い」というものではありません。当然、事前に話の進め方を自分なりに研究して臨むのです。本当にこれで伝わるだろうか?この内容が気象予報士の方々に受け入れてもらえるだろうか?実際に不安です。

 単に話題提供と入っても、準備には莫大なエネルギーと神経を使います。ずっと実現させたかった夢でもあったので尚更です。

 私の不安は、発表直後の質疑討論で解消されました。討論は非常に盛り上がり、文字通り「話題提供」としての役目を十二分に果たす事が出来ました。私もまた言葉に詰まることなく、それなりに討論する事が出来たと思います。

 ・・・発表と質疑討論が終わり、割れんばかりの拍手が会場に鳴り響いた瞬間、私のささやかな夢は安堵と達成感の中に終わりました。帰りの新幹線の中には、静かな笑みを浮かべながら横たわる計算気象予報士の姿がありました。

 さて、折角なので今回の講演要旨をちょこっと掲載しておきます。

【今回の講演要旨】

 今回、山形県置賜地方の局地的な地形を考慮した計算シミュレーションの実現に際し、その一環として有限差分スキームに基づいた3次元乱流数値シミュレーション(LES)モデルを開発した。本報告では、境界条件を簡素化した状態で上空の季節風の地上での影響に関して検討を試みた。

 本研究で使用する基礎方程式群は、物性値一定を仮定した連続の式、Navier-Stokes 方程式で構成される非線形連立偏微分方程式である。さらに今回は乱流の影響を考慮するための物理モデル方程式群が加わっている。本研究では従来型のRANS に替わり、次世代型の乱流解析手法であるLES(Large Eddy Simulation)を採用する事とした。これは基礎方程式群に空間的なフィルタリング操作を行い、流れ場を計算格子で解像できる成分とそれ以下の小さい成分(SGS:Sub Grid Scale)とに分離し、前者は直接計算し、後者についてはモデル化を施す解析手法である。本研究ではSGS 成分については標準型Smagorinsky モデルを適用する事とした。

 本報告で紹介する計算シミュレーション・モデルは、直交等間隔スタッガード格子系を用いた有限差分法により離散化を行った。圧力解法にはMAC 法を用い、圧力方程式を解く際に出現する連立方程式の解法にはSOR 法を用いた。また、対流項には3 次精度風上差分(UTOPIA スキーム)、粘性項には2 次精度中央差分、時間進行には2 次精度のAdams-Bashforth 法をそれぞれ適用した。尚、乱流のSGSモデルに標準型Smagorinsky モデルを適用したのは先述の通りである。

 山形県及び宮城県を包括する山岳モデル地形に対し、西・西北西・北西の季節風が吹き付ける気象場を想定して局地的な風の流れの様子を計算した結果、小国・米沢では上空の風向に関わらず地上風速が比較的強めである一方、長井・山形では風速が弱めであることが示された。これは、朝日連峰による季節風のブロック効果が、本計算においても再現されたものと考えられる。

(p.s.)
 ささやかな夢は終わりを告げました。しかしそれは、新たな挑戦の始まりを意味します。さて、次なるテーマは・・・こりゃあデカイなあ~~ぁ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

過ぎた日は → 思い出は の間違いでした~。はっはっは~~。

2006年04月13日 | 気象情報の現場から
 昨日の話になりますが、職場のレイアウト替えを行いました・・・というより、社長の予てよりのリクエストだったのです。社員一同は余り乗り気ではなかったのですが(爆)、社長が駄々をこねるので(?)模様替えと相成りました。私の席は向きが変わったので見える景色が全然違います。何となく「新年度」という感じです。

 今日のタイトルは見ての通り、歌詞の間違いです。まあ、いつもの事です。肝心な数学の計算をミスったわけではないので、大目に見てやって下さい。こんな調子なので、曲名の漢字間違いを歌手の方に指摘されたこともあるとか・・・(爆)。やっぱりどんな人でも、よ~く見てみるとどこか抜けてたり、するものです。

 最近はCFDの他に、局地的な現象を理論的に表現し(formulation)さらには予測するための研究も始めています。とは言いつつも・・・今度の日曜日の話題提供(研究発表)の準備に追われているのが正直な所。これが終わればあとはゴールデンウィークに想いを馳せて~~・・・
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

広瀬川~ 流れる岸辺~ 過ぎた日は~ 帰らず~♪

2006年04月10日 | CAMJ参加記録
 昨日も書いた事ですが・・・4月16日(日)は日本気象予報士会・仙台支部の4月例会の日です。仙台支部では原則月1回、定例会を開催しています。

 さて、昨日の時点で私も久々に話題提供に応募した旨を書きましたが、本日正式に「受理」されましたのでご報告します。つまり、当日は私も発表すると言う事です。もう半年振りに人前でプレゼンテーションするという事で、緊張・・・というよりも気合だ!気合だ!気合だーーー!!

 さて・・・その気になる話題提供のテーマと内容ですが・・・

【題名】山形県置賜地方における冬季季節風の計算シミュレーション
【内容】簡単な3次元乱流数値シミュレーション技術の導入、テスト計算及び山形県内の山岳地形と冬季季節風を加味した計算例を紹介。

 事業成果報告書が終わったばかりで頭がボ~ッとしがちですが、ボケている暇も無く?しっかり準備に余念がありません。そういえば、5月20日は日本気象予報士会の定期総会なんです。いや~ぁ、忙しくなるな~ぁ。

 ちなみに、日本気象予報士会会員もしくは同仙台支部員の皆様、4月例会の話題提供テーマは現在も募集中だそうですよ!新年度最初の支部例会ということもあり、この度めでたく会員となった皆さんの御参加もお待ちしておりま~す。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

この週末は[珍しく]のんびりしてました。

2006年04月09日 | 何気ない?日常
だって、ようやく事業成果報告書から開放されたんだも~~ん。

 ちなみ「事業成果報告書」とは言っても、技術的なの部分はまさに学術論文・学位論文みたいなものです。そりゃあもう偏微分方程式や離散化方程式のオンパレード。乱流モデルや数値解析の専門的な事項についても分かり易い表現を心がけるなど・・・神経が擦り切れるような思いで書いてました。明らかに、専門家向けの資料ならば専門用語の北斗百列拳で済むんですけどね。

 週末は基本的に出社の必要はないのですが(=世間では「休日」と呼ぶらしい)、展示会やら報告書など業務があると週末も何もありません。世間体的には「週末はお休み」でも、実際には週末もデータ整理やら資料作成、数値解析などに追われる事も多いのです。

 さて、この次の日曜日は日本気象予報士会・仙台支部の4月定例会&支部総会が開催されるので、久しぶりに仙台に行こうと思っています。ちょうど話題提供(テーマ発表)も募集していたので、折角なので応募しちゃいました!!ご丁寧にレジュメまでつけて。

 最終判断は仙台支部の事務局(と言うのかどうかは分からないが)に委ねられるので・・・どうなるかな?何しろ私は東北地方の在住・在勤でもないしなあ。それでも仙台支部の正会員です。自称・計算気象の伊達政宗を目指しています(もちろん自分のテーマ音楽は「NHK大河ドラマの独眼竜正宗のテーマ音楽」CD欲し~ぃ!!)。

 と言うわけで、事業成果報告書類の次は、この話題提供の準備に追われています。とは言っても、既にレジュメは出してるし(フツーは当日配布でそのままプレゼンです)、プレゼンの準備も仕上げ段階です。何事にも手を抜かず・・・って事にしときましょう!

 私にとって仙台、と言えばもう「萩の月」と「伊達政宗」ですね。ちなみに伊達政宗は米沢城で生まれました。これは今の山形県米沢市、私の故郷でもあります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

入社式の季節ですね

2006年04月04日 | 気象情報の現場から
 ようやく年度末の事業成果報告書類が仕上がってきました。改めて書類を見てみると1年間の技術開発の成果が形となった事を実感できます。最終目標から見ればまだまだ第1段階突破した所ですが、入社してからのこの1年、本当に計算シミュレーションで駆け抜けた1年間でした。そして今、階段で言う所の踊り場に差し掛かったような気がします。これからはもう少し視野を広く持っても良い、と言う気持ちの余裕も出てきました。さらに局地気象データの解析や応用範囲に関する情報なども分析していこうと思っています。

 さて、昨日は入社式(入学式)が全国各地で行われたようですね。私の場合、今の会社には1年前に入社したわけですが、入社式はありませんでした。ごくフツーに入っていきました。この時期は花粉症シーズンと言う事もあり「何だ花粉症かよ~・・・」というのが社長訓示だったような・・・(爆)入社式なるものも無く、そのまま引越しタイムになりました。

 それはさておき、新卒で入社した会社(前職)の場合は新入社員が確か14~15名程度で、私が何と新入社員代表の答辞を読み上げました。生憎、風邪気味だったこともあり、鼻水がたれそうで・・・それはヒヤヒヤものでした。入社式が行われた日の午後から導入研修が始まり、約1週間続きました。その後、配属が発表されたわけですが、この会社は半導体部品の製造業。基本的に入社後6ヶ月間は製造現場でのライン実習・・・のはずだったのですが、例外的に製品設計部門に配属の技術者は実習免除で速攻での配属になりました。

 私の配属はLSI設計部門だったので、配属発表後に部門の上司に連れられて職場へと出向きました。そこで世間話をして、席を案内されて周囲の先輩方から職場での生活の様子の説明を受けました。この時点では地元=地方(田舎)の会社だったこともあり、のんびりとした雰囲気の下で、OJTによる研修を受けていたのでした。この頃が一番充実していました。ちなみにこの当時、既に気象予報士資格は取得していましたが、その事は伏せたまま、ひたすら半導体設計者としての道を歩むつもりで居りました。ましてや、当時の私にとっては、Navier-Stokes方程式を解こう等とは夢にも思っておりませんでした。

 暫くして・・・ふとした事から実際に計算流体力学の勉強(独学)を始めたのは、学校を修了した後です(学生時代の専門は計算バイオメカニクスでした)。それから、ずっと独学による研究を続けて、今の会社に転職して1年経って、今に至ります。それにしてもこの1年で膨大な数の技術資料を書いてきました・・・。これらを全部纏めたら計算流体力学の入門的な教科書が書けるかもしれません。でも、教科書を書くのは面倒なので、まずは局地気象シミュレーションの実現とビジネスモデルの構築が先ですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする