計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

超少人数授業は・・・さすがに。

2008年05月17日 | 何気ない?日常
 明日から日本気象学会春季大会が横浜で開催されます・・・が!やっぱりと言うべきか?諸事情により、今回は参加を見送りです(くう~ぅ、無念!!)。やはり一介のサラリーマンとしては企業?の論理に逆らえません(爆)。春季は仕方ないにしても、次の秋季大会こそは参加できるようにしたいものです。横浜の中華街やラーメン博物館・・・行きたかったなぁ。秋季大会は仙台で開催されます。仙台に行ったら「萩の月/萩の調」と「牛タン」かな。

 さて、気を取り直して今日は、地域の大学のオープンカレッジを受講してきました。地域の方言と文化に関する講義で4回1セットなので、あと3回受講します。以前、「2007年03月04日 「方言」は地域の文化 」で触れた講座をより充実させた内容となっており、今回もまた目からウロコのお話を伺う事ができました。

 それにしても、今回の講座は受講生が異常に少なく・・・講師の先生の話によれば、主催者側の大学学長と開講を見合わせるかどうか協議されたと言うのです。この内容の講座はいつもある程度の人数の応募があったので、つい営業活動を行っていなかったので・・・少ない人数になってしまった、との事です。しかし「人数が少ない分、アットホームで和気藹々と進められますね」との事。前回受講した時は、ざっと見て20名程は受講していたんですけどね。やはり「営業活動(宣伝活動)はあらまほしきことかな」

 私もこれまで色々な講義や研修を受講してきましたが、少ないときでも受講者10名前後、学生時代の多い時には受講者200名近くだった事を考えると、ここまでの超少人数授業は・・・初めてです。ただ、会社の研修や大学の正規の講義のようなものではないので肩に力をいれず、リラックスして(それこそ気軽に)受講できるのがありがたいです。そして、講師の先生が長年独自に調査・研究してきた知見を、ユニークに披露して頂けるのでなかなか面白いです。そう言う意味では、プレミア講義を受講しているの

 日頃から本当に専門的な研究や勉強に没頭していると、どうしても視野が狭くなり、思考も硬直しがちです(私だけかも知れませんが・・・)。そんな時のブレーンストーミングとしても、何とか時間の合間を縫って、外部の色々な講座を受講したいと思っています。講座の内容も日頃の業務との関連性の有無に関わらず、面白そう、興味がある、と言ったものを学んで行きたいです。

 この他にもビジネス・経営に関するものや社会・経済、マーケティングに関する講座も受講したいのですが、何故か平日の微妙な時間帯に設定されているので(あと30分~60分程後ろにシフトしていたらなぁ)・・・どうなることやら。
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全てのものには理由がある

2008年05月04日 | 気象情報の現場から
「全てのものには理由がある」
「理由って?」
「お前にはまだ早い!」


 と言う携帯電話のCMが、以前ありましたね。

 さて、理由(reason)となるべき状態には、必ず結果(result)となるべき状態が伴うと言う自然の法則を「因果律」と言います。これは要するに、全ての事象はその必然的関係によって存在する事を意味します。だから「全てのものには理由がある」と言えるわけです。

 この因果律の視点に立って熱流体現象の数値シミュレーションを考えてみると、初期条件や境界条件は「reason」であり、これを数値積分する事によって得られる熱流動の様相が「result」になります。

 これまで何度もお話してきたように、局地的な気象データを分析していると異なる方向の流れが多重構造を形成する場合は散見されますが、これをどのように取り扱うのかが悩み所です。要するに、上層と下層で流れの向きが逆転するような構造になるのです。そのままバカ正直に境界条件に組み込むと、境界面近傍で異常な渦を形成して数値計算が破綻してしまうのです。

 それでも以前は、このような場を何とか上手い具合に境界条件に反映させようとして、様々な解析手法を試みておりました。つまり、局地気象を「result」とした場合に、対象領域を含む周辺場の複雑な流れは「reason」であるという視点に立っていたのです。

 しかし、現象の本質を抉り出す「Simple is Best」の立場に立って、現象を簡単化した状態でシミュレーションを実施した時に、その「result」として複雑な流れ場を生じる事例が幾つも再現されました。つまり、当初は「reason」と考えていたものが、実は「result」と考えた方が良いかも知れない、と言う事です。ここで敢えて「かも知れない」と言う表現に留めおくのは、あくまで私のやり方ではそうだったからに過ぎないためです(「たまたま」かもしれないのです)。

 気象の挙動はある一つの現象がある視点で見ると「reason」であるが、別の視点で見ると「result」であると言う側面を大いに持っています。明確にreason/resultと切り分ける事が困難と言った方が良いでしょう。しかし、広大な3次元空間、時間を含めれば4次元時空間の本の一部だけを切り取って、その部分だけを都合よく解析しようとするため、仮想的な「reason」(初期条件や境界条件etc.)を与えなければなりません(モデリング)。この仮想的な「reason」に対する「result」を得ようとする試みが数値シミュレーションになるのです。

 局地気象の動きを捉える際には、やはり何が「reason」で何が「result」なのかを意識しながら解析しますが、やっぱり奥が深いです。
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熱変数の検討

2008年05月03日 | お天気のあれこれ
 気象予報士試験の勉強を始めたばかりの方々にとって、大きな壁となるのが「コリオリの力」「温位」と聞いた事があります。確かに、気象予報士の勉強を始めた頃は「温度」と言うパラメータがあるのに、何故わざわざ「温位」等と言う物理量があるのか疑問に感じたものです。とにかく試験に出るから、予報の現業で使っているから・・・まあ、しゃあないわ。そんな感覚で定義をそのまま暗記していたものです(最初はそれでも良いと思います)。

 あれから幾年が過ぎ、数値シミュレーションを自分で開発するようになってようやく、その意味が分かってきたような気がします。気象学とは異なる視点から、温位と言うものを考えてみると分かりやすいと思います。実際の複雑な大気現象を再現するために、小さなミニチュア模型を作る事をイメージすると捉えやすいように感じます。実際に模型を工作して実施するのが室内実験、コンピュータで仮想的に実施するのが仮想実験(シミュレーション)ですね。

 仮想的な室内実験として、キャビティの内部に乾燥した空気を充填させまた状態を想定してみましょう。下から加熱して、上から冷却すると、初期状態における温度の鉛直勾配は、(∂T/∂Z)<0となるため不安定となり、時間が経つにつれて鉛直対流が発生します。上から加熱して、下から冷却すると、初期状態における温度の鉛直勾配は、(∂T/∂Z)>0となるため安定となり、時間が経っても内部流体は静止したままとなります。(※上向きに正となるような鉛直座標をZとします)

 従って、小さな室内実験スケールのキャビティ流れを考えると

・(∂T/∂Z) < 0 ・・・ 不安定 ⇒ 対流が起こる
・(∂T/∂Z) = 0 ・・・ 中立  ⇒ 安定と不安定の境界線
・(∂T/∂Z) > 0 ・・・ 安定  ⇒ 対流は起こらない

と言う事は、想像に難くないと思います。

 ところが、実際の大気現象はと言いますと、大気が乾燥状態にあると仮定した場合は

・(∂T/∂Z) < Γd ・・・ 不安定 ⇒ 対流が起こる
・(∂T/∂Z) = Γd ・・・ 中立  ⇒ 安定と不安定の境界線
・(∂T/∂Z) > Γd ・・・ 安定  ⇒ 対流は起こらない
※Γd =g/Cp:乾燥断熱減率

となります(尚、符号の取り方によっては不等号の向きが逆になる事があります)。

 ここで注目したいのは、同じ温度Tであるにも関わらず、キャビティ流れと大気現象では中立の条件が異なると言う事です。すなわち、大気現象を解析するに際しては、温度Tに関しては、キャビティ流れと同じような感覚で扱う事ができないのです。数学的な取り扱いが異なるため、何らかの配慮をしなければならないのです(面倒くさいですね)。

 空気塊を断熱的に移動させた場合の空気塊自身の温度の変化を考えてみましょう。キャビティ流れの場合、内部の一部の流体部分を仮想的に空気塊として捉え、この空気塊をキャビティ内のどこに断熱的に移動させても、その空気塊自身の温度は変わらないと考える事ができます(つまり、この場合の温度は保存量と考える事ができます)。

 しかし、実際の大気現象では、空気塊を鉛直方向に断熱的に上下させると、周囲の気圧の影響により膨張・圧縮するため、その空気塊自身の温度は変化してしまいます(よって保存量として扱う事ができません)。この両者の特性が中立条件の相違として現れるのです。

 要するに、室内実験で扱う現象スケールでは、気圧は殆ど一定を見做す事が出来ます(無意識のうちにそのように扱っているのです)。大気現象スケールでは、気圧は大きく変化するので、空気塊の温度も熱エネルギーそれ自体に加えて、周囲の気圧の影響も加味しなければなりません。

 大気現象の数値解析は、実際の現象を模擬した小さな模型を仮想的に作って実験を行うようなものです。そしてその究極の基本はキャビティ流れに通じます。従って、大気現象における熱的効果を加味するに当たっては、実際の大気現象の温度(非保存量)を何とかして、キャビティ流れの温度のような形(保存量)と同じように扱いたいとの要請が発生します。

 この大気現象の温度をキャビティ流れのような室内実験の温度のように扱うためには、変数変換を行う必要があります。この変換されたパラメータが温位であり、この温位を用いる事により、実際の大気現象を室内スケールの模型と同じように考え、取り扱う事が可能になるのです。そんな訳で、私は数値シミュレーションの際には熱変数には「温位」を採用しています。
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