計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

日本気象学会2024年度秋季大会(つくば)に行ってきました

2024年11月14日 | CAMJ参加記録
 11月12日(火)~15日(金)の日程で、つくば国際会議場を会場に「日本気象学会2024年度秋季大会」開催されています。私は大会2日目の「専門分科会2」で口頭発表に臨みました。

 11日(月)の昼頃に東京駅に到着した後、そのまま山手線に乗り換えて「有楽町」に向かいました。「有楽町」といえば、フランク永井さんの「有楽町で逢いましょう」が有名ですが、高層ビルが立ち並ぶ光景は、当時のムードとはかけ離れているようにも感じました。天にも昇るような高層ビルが密集し、地上では行き交う人の多さに目移りしました。


 そこから、再び東京駅に戻り、しばし丸の内駅前広場のベンチで休憩していたところ・・・突如、額に「ビタッ!」という嫌な感触が。思わず、過去の記憶がフラッシュバックしました。



 そっとティッシュで額を拭き取ると・・・はやり、黄緑色の粘性を持った液体の姿が・・・そうです。まさかの「人生2度目」の「鳥からの爆撃」を喰らいました。幸い、被弾個所は額とメガネのごく一部に限られ、スーツなど、衣服や荷物は難を逃れました。頭上では木の枝が広がり、葉が生い茂っていたので傘となって被害を軽減してくれたようです。

 それはそうと、被弾個所の洗浄のため、駅のトイレに駆け込んだのは言うまでもありません。これから学会発表の本番を控えているというのに、何とも不吉な予感が・・・。

 12日(火)につくば市に入り、会場の下見も兼ねて幾つか拝聴しておりました。本職の研究者や大学院生の皆さんのテーマは「気象現象のメカニズムや観測・データ解析の手法など」と言った基礎研究が中心でした。ハイレベルではありますが、なかなかに面白いものでした。

 

 そして13日(水)は、午前中の専門分科会2に参加しました。セッションテーマは「くらしと気象 ~気象予報士に期待されること~」で、10件の講演がありました。今回は200人を収容する会議室に、30~40人位の聴講と言った感じでしょうか。セッションは終始和やかな雰囲気で進み、有意義なディスカッションが交わされました。


 気象予報士の皆さんのテーマは「気象の知識や情報をどのように活用し役立てるか」また「気象に関する知識の普及(主に教育)」と言った実践的な利活用(応用研究)が中心でした。同じ「気象」を基軸としつつも、(研究者の皆さんとは)互いに異なる役割を担っており、相補的な関係にあると感じました。


 この中で私は「GSM地上を用いた新潟県内における降雪量ニューロ・モデルの開発(第2報)」と題して発表を行いました。要は「人工知能の理論を応用した地域気象の予測」の研究です。実際は「(純粋な)気象学」と言うよりも「情報処理」の研究と言った方が良いかも知れません。とは言え、今年のノーベル物理学賞は「AI」の研究者が受賞しましたね。


 最後に、8月の週末に偶然目にした「お寺」に掲示してあった言葉を御紹介します。


「一瞬のために どれだけ汗を流したか」。時期から察するに、おそらく「オリンピック」に関しての言葉だったのでしょう。しかし、私にとっては「学会発表に向かって準備する自らへの激励」にも受け取れました。

 学会発表において1件のテーマに割り当てられる時間は約10分です。その一方で、そのテーマを発表するための資料(予稿やスライドなど)の準備やプレゼンの練習には数週間から数か月を要します。また、そもそも研究において「何らかの結果」が出るまでには数年レベルを要します。

 目に見える約10分を有意義な時間にするために、数か月から数年の間に渡ってどれだけの労力を費やしたか・・・。まさに「一瞬のために どれだけ汗を流したか」。そんなことを考えていました。そして今、私の「秋のオリンピック」は終わりました。

Yes, I did it!
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5年ぶりの仙台にして、初めての牛タン

2023年10月27日 | CAMJ参加記録
 今回は前回の記事の続きになります。但し「難しいお話」は無しにして、単なる「旅行記」として記載します。

 10/23(月)~26(木)の日程で、仙台国際センターを会場に「日本気象学会2023年度秋季大会」が開催されました。

 今大会は「会場(仙台国際センター)とオンライン(テレビ会議システム:zoom)の同時開催」であり、これまではWeb上のオンデマンド形式だった「ポスターセッション」や会場で行われる「口頭発表(オーラル)セッション」も、zoom(ズーム)を介してオンラインで聴講できるようになりました。

 パンデミック以降の学会は、会場に集まる状態(三密:密集・密閉・密接)を避けるため、リモートベースがメインでした。しかし、コロナ5類移行を受けて、少しずつ以前の賑わいが戻ってきているようです。

 私は、1日目~3日目の午前までの部をオンラインで参加した後、仙台へ移動して4日目を会場にて参加しました。そして、4日目に用意されたセッション(専門分科会)にて口頭発表に臨みました。

 ちなみに、前回の訪仙が「日本気象学会2018年度秋季大会」の口頭発表(パンデミック前)だったので、ちょうど5年ぶりの仙台になります。


 10月25日(水)の夕方に仙台駅に降り立ちました。この景色を見る度に圧倒されます。大きなビルに、広い道路、歩いている人の数・・・どれをとってもスケールが違います。


 そして、大きな「SENDAI」の文字。5年ぶりの光景です。駅からそのままビジネスホテルに向かい、重い荷物を置いて街中を歩きます。

 現代にいたる仙台の基礎を築いた伊達政宗公は、和歌などの文化・芸術にも精通した教養人でもありました。街中に出ると、一瞬「ここは東京か!?」と錯覚してしまうような、お洒落な光景も見られました。今もなお仙台の地には「政宗イズム」が根付いているように感じます。


 特に「クリスロード」の賑わいを見ると、かつて歩いた「中野ブロードウェイ」の光景がダブって見える瞬間があります。そして、仙台駅の地下1階のレストラン街へ赴きます。


 今回のお目当て「その1」。人生初の「牛タン定食」です。これまで、何度も訪仙の機会はありましたが、「牛タン」を食する機会はありませんでした。そこで今回は、仙台に来て最初に行うべき事項として「牛タン定食」を予定していました。翌日には学会発表を控えているので、「ひとり壮行会」も兼ねております。肝心の「牛タン」は、食味は「牛肉」でありながら「独特の食感」を堪能しました。なるほど!これが「牛タン」というやつか!


 一晩明けて、26日の朝を迎えました。仙台市営地下鉄に乗って会場の最寄り駅に到着。そう、仙台市には地下鉄が走ってる!!!(感動)


 会場に入ると、目の前にはレッドカーペットの階段が広がっています。その割には人の気配がしません。ちょっと早く来過ぎたようです。口頭発表のセッション開始は午前10時からですが、9時位に会場入りしたのです。まあ、遅刻するよりは良いでしょう。



 今大会の口頭発表は大きく分けてA,B,C,Dの4つの会場があり、各会場が期間中毎日、午前と午後で別々のセッションが用意されました。この他にポスターセッションもオンラインで開催されました。

 ちなみに、私の参加したのは、日本気象予報士会(CAMJ)が企画した「専門分科会3」で「4日目午前のC会場」です。C会場はパッと見でも「140~150席近く」が用意されており、壇上から見た感じでは40~50名位の参加と言った感じでしょうか?とは言え、これは「かなりアバウト」な印象で語っているので、正確な数字は公式発表(あるのかな?)を待ちたい所です。

 ただ、会場に足を踏み入れた瞬間、余りの部屋の広さに圧倒されました。出入口の扉は大きくないのですが、一歩中に入ると、目の前には広大なスペースが広がっていました。多数の椅子がズラリと並んでいたのは圧巻です。やはり、学会発表の舞台ともなるとスケールが違います。

 今回はテレビ会議での同時配信の都合上、指示棒やレーザーポインターは使わず、代わりに「パワーポイントのポインタ機能」を使用するように、と当日指示がありました。実は、パワーポイントのポインタ機能・・・使ったことがありません。この時はさすがに「やばい!」と思いました。結局、「ポインタ無し」で強行突破しました。

 とは言え、発表自体は「全力で挑み、持てる力を出し切った」ので、悔いはありません。今の私はもう「抜け殻」そのものです。

 セッション終了後にCAMJの参加者で記念撮影をしました。後々「てんきすと」に掲載されるのでしょうか?


 昼休みに会場の外に出てみると、秋の晴れた空が仙台の地に彩を添えていました。午後は他のセッションを色々と覗き見て回りました。


 その夜は、また仙台駅のレストラン街で「そば御膳」を頂きました。前日が「ひとり壮行会」なら、こちらは「ひとり打ち上げ」です。


 今回のお目当て「その2」。仙台と言ったらこれでしょう、と言っても過言ではない「萩の月」。土産品として売られていますが、これは「自分用」です。訪仙の度に記念として購入するのが恒例です。後で仙台の思い出と共に美味を楽しむのが至福の一時なのです。
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(一社)日本気象予報士会の講習会 2019

2019年10月19日 | CAMJ参加記録


 今日は(一社)日本気象予報士会(CAMJ)の講習会を受講してきました。今回は局地風の基本である「山越え気流」や「海陸風」などの講義、および大気の熱的状態を把握する「エマグラム」の読み取り方などの演習を行いました。

 さて、「山越え気流」については、所々で見聞きした図や用語が登場してきました。私の熱流体数値モデル(LES)も「山越え気流」の古典的な解析モデルをベースとしているため、2次元山越え気流のシミュレーションに取り組んでいた当時のことを懐かしく思い出しました。もう十数年も前のことになります。

 また、「エマグラム」は最近ご無沙汰になっております。これは大気の熱力学的な状態を図上でシミュレートできるので、熱力学的な考察を行う上でも重要なツールです。データを基に、自分で手を動かすのはとても勉強になります(しかし、時間も掛かる)。実際の現場では、スーパーコンピューターが計算した格子点値(GPV)やそれに基づく量的予報ガイダンスという専門資料・数値データを使うことが多いです。

 気象予報士に限らず「資格」と言うのは、資格を取得するまでの勉強内容(カリキュラム)はある程度、決まっているものです。しかし、いざ合格した後に何をどのように深めていくのかは、人それぞれです。合格するまでに勉強した内容を「共通のベース」としながらも、そこからどのように発展して行くのかが重要になってきます。

 私の場合は、CAMJの講習会・会報や気象学会の機関誌などを通してのインプット、そして研究成果の発表や討論を通してのアウトプットやディスカッションが重要な学びの機会となっています。今後とも、このように日常業務から離れた形での勉強の機会(Off The Job Training)を見つけて参加したいと思っています。
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研究成果発表会に行ってきました

2019年02月26日 | CAMJ参加記録
 2月23日(土)~24日(日)の週末は、(一社)日本気象予報士会「第11回研究成果発表会」に参加してきました。今回は発表会前日の土曜日に東京に向かい、都内に前泊しました。翌日の日曜日は、気象庁講堂を会場に20件を超える研究成果が発表されました。その旅の思い出です。


 普段の発表会は土曜日であることが多く、当日の朝に会場へ向かいます。今回は前泊なので、午後の新幹線に乗りました。自由席の車両も意外に空いていました。新幹線の窓から望む山間部の風景です。平地の雪融けは進んでいますが、山間部はまだ雪化粧したままです。とは言え、移り行く景色をのんびりと堪能している余裕はありません。


 新幹線の中でも事前勉強は欠かせません。冬期間は多くの予報業務が重なることもあり、なかなか勉強する余裕がないのです。この移動時間で、これまでに読んだ文献や研究ノートを一気に読み返します。それでも読み切れなかった部分は、宿泊先のビジネスホテルにて、リラックスしながら読み込んでいきます(折角の旅行なので、正直、東京観光したかった・・・)。


 一夜明けて、いよいよ決戦の日の朝を迎えました。東京駅に降り立ち、会場となる気象庁に向かいます。これまで何度も東京駅には赴いていますが、丸の内中央口から出るのは・・・多分、初めてです。東京駅は大抵「乗り換え」で通過することが多いのです。


 簡単な略地図は事前に調べて印刷・携帯しておりますが、やはり道に迷ってしまいました。そんな時に助けとなるのが、このような案内板です。細かい道順はこちらで確認します。


 ようやく目的地に辿り着きました。この建物の2階にある講堂が今回の会場です。入り口から入って、受付で入館証を受け取ります。そのあと、2階に上がるのですが階段で上がるのかエレベーターで上がるのか・・・戸惑ってしまいました。

 階段の踊り場には「ここから先は関係者以外立ち入り禁止」との掲示がありました。そこで、エレベータで上がろうとすると、エレベータは作動していません。さらに「節電のため階段をご利用下さい」との張り紙が・・・。ふと、辺りを見回すと、参加者らしき人たちがゾロゾロと階段を上がっているのを見て、どさくさに紛れて一緒に上がっていきました。


 講堂に入るとさらに受付があり、そこで今回の講演予稿集を頂きました。そして、いよいよ研究成果発表会が開幕です・・・。


 すべての発表が終わると、そのまま懇親会が催されます。しかし、私は夜に予報業務を抱えているので、懇親会には参加せず(できず)にそのまま帰ります。東京駅で新幹線の案内を見ながら、久々にやり切った達成感を感じていました。久々に「やりがい」を感じました。

 例年の発表会は土曜日開催が多いので、土曜日に会場に直行してそのまま懇親会まで参加して現地に一泊し、翌日の日曜日は現地周辺を観光して帰るのが定番となっています。今回は懇親会も観光も無く、ただ「発表をしに行っただけ」という旅行になってしまいました。「お楽しみ」はまた別の機会に延期となりました。
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気象学会・秋季大会に出席しました。

2018年11月02日 | CAMJ参加記録
 10月29日~11月1日の日程で「日本気象学会2018年度秋季大会」が仙台国際センターを舞台に開催されました。この期間の最終日に日本気象予報士会(CAMJ)が主催する専門分科会「局地気象とくらし」も開催されました。

 私の居る長岡市から仙台へ向かう際は、まず新潟市に出て、そこから仙台行の高速バスに乗り換える必要があります。新潟市に出るためには、鉄道や県内高速バスなどの移動手段がありますが、今回は県内高速バスを利用しました。新潟市(万代バスセンターシティ)から仙台市(仙台駅東口)へは県外高速バス(WEライナー)を利用します。

 今回は大会最終日のみの参加という事で、1日(木)の朝のバスで移動しました。新潟市内は運悪く「通勤ラッシュ」に重なり、危うく仙台行の高速バスへの乗り損ねる所でした。しかし、万代バスセンターに全力疾走で駆け込み、間一髪でした。

 仙台に向かう高速バスの車内では仮眠を取りつつ、秋の深まる山々と空の織り成す景色を堪能しました。この日は雲の多い空模様となっていました。


 仙台駅から国際センターまでは地下鉄を利用しました。前回(5年前)・前々回(10年前)は市営バスを利用しましたが、今回は地下鉄で行けることを知ったので、乗ってみることにしました。地下鉄の最寄駅を出ると、案内の看板が見えてきました。


 国際センターの階段を昇って3階に上がり、ようやく見つけたD会場。この大会議室で専門分科会が行われます。室内には約40~50名程の聴衆がいたように思います。ただ、真面目に数えたわけではないので、アバウトな数字です。


 今回、発表した演題は「ニューラルネットワークを用いた新潟県内の冬期降水域の解析」。要は「冬の季節風の条件に応じて、新潟県内で雪が降りやすいのはどこか?」をAI(ニューラルネットワーク)で学習および予測するという試みです。


 ざっくり言って、主な降水域は上空の季節風の風下側を中心に広がる傾向があり、季節風が強まると全体的に山沿いの地域へ偏る傾向が見られました。これは、実際の予報経験や事例解析とも一致するものです。

 今回は初めて「オーラルセッション(口頭発表)」を体験しましたが、手持ちのPCのプロジェクターへの接続がうまくいかず、会場係員の皆さんに助けて頂く一幕もありました。ただ、その後の発表から討論まではスムーズに運んだので、ホッと一安心。

 また、プレゼンの際は指示棒を使うスタイルを貫いてきましたが、今回は場の流れに従って、初めてレーザーポインターを使用しました。今後はこういった器具に慣れることも必要なのかもしれません。


 発表後はそのまま仙台市内に一泊し、翌日・つまり今日の高速バスで長岡に戻ってきました。今朝の仙台は冷え込みましたが、綺麗な青空も見られました。
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(一社)日本気象予報士会の講習会

2018年10月06日 | CAMJ参加記録
今日は(一社)日本気象予報士会の講習会を受講してきました。


 講習の中では、温帯低気圧や前線の構造、コンベアーベルトに関する気象学の講義と、専門天気図のマニュアル解析の実習がありました。

 数値モデル(LES)や人工知能(AI・NN)によるデータ・アナリシスをメインとしている私にとっては、ある意味「懐かしい」とも「初心に帰る」とも言えるようなもので、新鮮さを感じました。
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1996年7月20日

2018年07月20日 | CAMJ参加記録
 1996年7月20日、任意団体として「気象予報士会」が設立されました。私が入会したのは1998年なので、約20年会員として在籍しています。

 入会当時から、会員の間では「取得した資格を、どのように活かしていくか?」について様々な意見が交わされていました。この中で、これからの時代は「資格だけでは不十分で『+α』が必要」との声も多く聞かれました。自分の「+α」つまり「コア・コンピタンス」を如何に確立して行くか。当時の私は、諸先輩方の熱い議論に刺激を受けながら、自分の方向性を模索していました。

 ・・・あれから20年。

 今朝もコミュニティ放送の情報番組に電話出演して天気予報の解説を行いました。こちらは本来「原稿作成」がメインですが、週に1回はこうして「電話出演」するのが恒例となっています。とは言っても、これは世を忍ぶ仮の姿。

 私の「コア・コンピタンス」は、「『地域気象』に関する『数値シミュレーション』と『数理ファイナンス』」です。換言すれば「気象分野のデータ・サイエンティスト」と言った方が実際の姿に近いでしょう。以前は「熱流体数値モデル」をメインに取り組んでいましたが、最近は「人工知能」のR&Dにシフトしつつあります。

 本来、気象予報士の資格が必須となるのは「予報業務許可事業者において『現象の予想』を行う」場合です。しかし、地域の様々なニーズに応えて行くためには、単なる「予報(現象の予想)」のみならず、気象をはじめ様々なデータのアナリティクスや予測に基づくコンサルテーション、きめ細かいアフターフォローなど、新たな付加価値を生み出すことが必要です。

 今後、他の「士」資格を同様に、気象予報士の資格も、その位置づけや意味合いは変わって行くかも知れません。そこで問われるのは、自分にとっての「+α」=「コア・コンピタンス」です。これをどのように活用し、活躍のフィールドを広げて行けるのか。今までも、これからも、この課題について自分なりの答えを探し続けることになるでしょう。
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杜の都で金融工学を語る

2018年05月13日 | CAMJ参加記録
 この週末は(一社)日本気象予報士会(CAMJ)・東北支部の例会に参加してきました。その席上、「降水日数を指標とする天候デリバティブ - Black-Scholesモデルの適用 -」と題して、話題提供を行いました。

 今回のテーマは「天候リスクに保険を掛ける」というもので、「気象」というよりは「金融工学」の理論だったので、「アウェー感」が半端なかったのですが、これも予め覚悟の上でした。結局、話題としては「思いっきり滑った」感がありましたが、たまにはこういう展開があっても良いかも知れません。


 さて、気象の変化は生活や産業・ビジネスなど様々な分野に色々な形で関わりを持っています。その中で、「天候リスクを定量的に評価し、ビジネスに役立てる」ために、天候デリバティブの考え方から学べるものは多いのではないか、と感じています。

 一人の気象予報士として「自然現象(気象)に親しみ、そして楽しむ」ことはもちろん大切です。しかし、そこからさらに、どうやって役に立つ「情報ツール」に昇華させて行けるのか、と言った視点も「気象ビジネス」では必要になってきます。要は「役に立たなきゃ金にならん」のです。

 今から14年前の2004年06月26日、まだ若かりし頃には、CAMJ東京支部の例会の話題提供の折にこのようなことを述べました。

 CAMJ東京支部HPの「2004年 東京支部会合 概要」より引用させて頂きます。

───(引用開始)───
<話題提供2>
「数値計算による独自の局地気象モデルへの挑戦 ~計算力学を応用した気象データ解析に関する週末研究~」より

3)気象情報の未来への展望

 今後、気象情報ユーザから求められていくのは、局地レベルのきめ細かい予報ではないだろうか。局地の気象予測の精度を高めた上で、的確な応用ノウハウが構築できたとき、応用気象情報が活きてくるのではないか。

 気象情報が「情報ツール」へと進化していくに当たって、気象予報士は「天気を予想・解説する専門家」から「気象情報を駆使して問題にアプローチする専門家」としての可能性が広がっていると考えている。

 気象予測は精度の向上が必要不可欠であるが、その一方で応用分野に関する諸問題の解決のためには気象の専門知識だけでは不十分である。従って、ターゲットとなる分野の知識に関しても、深い理解を持つことが必要であり、それが個々の気象予報士の「コア・コンピタンス」になっていくのではないか、それを確立し、研究・研鑽を積むことが求められるのではないだろうか。

───(引用終了)───

 あれから14年も経ちますが、この考え方は未だに変わっておりません。

 これまで、地域気象について「熱流体数値モデル」「ニューラルネットワーク」「天候デリバティブ」と多様なテーマに取り組み、その成果をCAMJや気象学会(ポスター発表・論文投稿)、その他(数少ない)講演・講座の形で発表してきました。その一つ一つが私にとっては「アウェーゲーム」です。真向勝負の真剣勝負です。

 というわけで、次のアウェーゲームに向けて、これから調整を始めます。

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(一社)日本気象予報士会の講習会

2017年11月18日 | CAMJ参加記録
 今日は(一社)日本気象予報士会の講習会を受講してきました。


 講習の中では、最近の気象データについての解説もあり、気象庁のスーパーコンピュータの計算結果を基にした、予報のための基礎資料の生成プロセスについても紹介されていました。

 特に、ニューラルネットワークやカルマンフィルター(簡単に言えば「AI」の仲間)を用いた技術は興味深いものでした。テキストにあるコラムも示唆に富むものでした。

 最近、AIが進化すると「気象予報士や予報官の仕事が奪われる・・・」という意見も散見?されます。その一方で、気象庁のスーパーコンピュータの計算は、物理法則に則って膨大な計算を行っています。コラムの中では、この両者の折り合いをどのようにつけてゆけば良いのか、問題提起もなされています。

 私は「物理学(熱流体力学)の理論に基づく数値モデル」と「人工知能を応用した数値モデル」の両面からのアプローチを重視しています。その意味では、「物理法則に則った数値予報モデルをベースとしつつ、数値予報では予測できない現象も予測するためにAIを活用する」のが現実的と考えています。

 そもそも、AIは「(膨大なデータから)パターンや規則性、あるいは定石のようなものを読み解いて、そこから類推・予測する技術」です。従って、例えば「XXXのような場合には、○○○のような特徴が現れる」という傾向を「パターン」として予測することが出来ますが、その物理学的なメカニズムについて「プロセス」を解明するわけではありません。

 天気予報におけるAI利用は、(従来は「職人技」のように行われてきたであろう)「天気予報」のプロセスの「CAD/CAE化」ではないか、と捉えています。つまり、「気象予報士や予報官の仕事が奪われる」のではなく、「アプローチのやり方が変わり得る」と言った方が良いように感じます。なぜなら、私が日頃から取り組んでいることだからです。
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10年ぶり、2度目の受賞

2017年08月03日 | CAMJ参加記録
 今年の2月の(一社)日本気象予報士会(CAMJ)の第9回研究成果発表会にて発表した研究「山形県内の冬季降水域および気温分布に関するニューロ・モデルの独自開発」に対し、「木村賞」という賞を賜りました。


 この賞は、CAMJ会員が行った「優れた研究成果」に対する賞とされています。先月6月17日のCAMJ定期総会の場で表彰式も行われ、会長から直々に表彰状記念メダルを賜り、併せて受賞記念講演の機会を頂きました。ちなみに、今年度の受賞者と表彰式に関する紹介は、CAMJ会報「てんきすと」107号(7月号)の紙面に掲載されています。また、次号108号(9月号)には、私のこれまでの研究の取り組みに関する記事も掲載される予定です(多分)。

  

 一連の表彰に関する正式発表は6月17日の表彰式でした。とは言え、当日の総会・表彰式に参加されたのはCAMJ会員のごく一部という事もあり、会報7月号を通じて、会員に皆様への周知されるのを待って、本ブログ上での御報告と相成りました。本日(8月3日)、今回の会報の発行が確認された(=私の所にも会報が届いた)ことを受けて、ようやくこの場での御報告に至りました

 実は、10年前にも、研究論文「熱輸送を伴う3次元乱流数値シミュレーションを用いた山形県置賜地方における冬季局地風の解析」を提出し、同じ賞を受賞しています。

 これまで、山形県の冬の気象特性に関する研究は、観測データの分析を踏まえつつ、「3次元熱流体数値シミュレーション」と「ニューラルネットワーク」を2種類の数値モデルを独自に構築し、これらの数値シミュレーションを軸に展開してまいりました。前者は10年前、後者は今回の受賞テーマとなりました。

 一連の取り組みを通して、気象予報士として「地域気象」に取り組む、一つの「モデルケース」を示すことが出来たのではないか、と感じております。

 約20年に渡る山形県の冬の気象の研究も、これで一つの大きな節目を迎えることができました。しかし、これはあくまで「節目(コンマ)」であって「終結(ピリオド)」ではありません。また、これまでに培ったノウハウを応用して、新たなテーマにも取り組んで行きたいと思っています。
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第9回日本気象予報士会研究成果発表会にて成果発表しました

2017年02月27日 | CAMJ参加記録
 先日2月25日は、(一社)日本気象予報士会・第9回研究成果発表会に参加してきました。


 こちらがその会場です。

 当日は受付で綺麗に製本された「予稿集」頂き、その中に自分の予稿が含まれているのを手にした時は、ちょっと感動しました。

 また、懐かしい再会もあり、有意義な一時となりました。

 今回は次の2件の研究成果について報告・発表を行いました。

(1) 山形県内の冬季降水域および気温分布に関するニューロ・モデルの独自開発


 人工知能の基礎としても知られる「ニューラルネットワーク」を気象データの分析に応用して、山形県内の局地気象特性を明らかにしようと試みました。プログラムの部品に相当するニューロンの配置や入出力の変数変換など様々な工夫が必要であり、試行錯誤の末にようやく一筋の成功を得たものです。

 この研究も、開始してから約10年以上掛かって、漸くここまで到達しました。実際には途中で3~4回ほど投げ出しており、その度に1~2年の空白期間を置いて、新しいアイデアが浮かんだら再開して、また失敗して投げ出して・・・を繰り返してきました。

 今回はニューラルネットワークを用いて気象データを分析して結果を出せる段階に至った事それ自体と主題としました。この他に行ってきた熱流体数値モデル(LES)による数値シミュレーションなど、様々な解析結果と合わせて検討することで、「気象学的メカニズム」の考察を行っていくことも、今後の課題として取り組んで行きたいと考えています。


(2) 降水日数を指標とする天候デリバティブのプレミアム算定の試み


 予め指定された期間における土日祝の降水日数が一定値を超えた場合に、その超過分に対して補償金が発生するような金融デリバティブ商品を想定し、その契約料(プレミアム)の試算を行いました。プレミアムの算定は、単に金融商品の「値付」に留まらず、「天候リスクに伴う経済効果の評価」という意味を持っています。

 一方、現実問題として、天候デリバティブは90年代後半に始まって以来、なかなか産業界での活用・普及が進んでいないように見受けられます。その背景には様々な課題があると思いますが、理論的な側面から言えば、そもそも「天候デリバティブ」自体、実務が先行していて、理論が追い付いていないことも一因かと思います。

 オプション取引などのような貨幣に伴う金融資産に基づく理論を、無理矢理に気象要素に当てはめるという、いわば「木に竹を接ぐ」ような手法が用いられるなど、まだ開拓が進んでいない側面が多々あります。さらに、様々な産業において天候リスクが定量的に認識されるまでには、まだ時間が掛かるかも知れません。
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第9回日本気象予報士会研究成果発表会に向けて

2017年01月29日 | CAMJ参加記録
 来たる2月25日には「第9回日本気象予報士会研究成果発表会」が横浜で開催されます。今回は私も「計算・局地気象分野」と「経済・金融気象分野」の2件のテーマをエントリーしております。

 当初は「全体の応募件数(時間配分)により、発表は1件のみ」となる可能性もありましたが、結局は「2件とも」採択されるに至りました。現在は発表準備の真っ最中です。

 今回発表予定のテーマはこちらの2件です。

(1) 山形県内の冬季降水域および気温分布に関するニューロ・モデルの独自開発
(2) 降水日数を指標とする天候デリバティブのプレミアム算定の試み




 現在、この他にも通常業務として「メディア向けの天気予報」やこの時期特有の「降雪量および最低気温の予報」、さらに突然スタートした「共同研究」等に振り回されながらも、何とか進めています。

 さらには3月9日には一般向けの講演を控えており、この冬は例年に無い状況に陥っています。
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この週末は仙台に行ってきます。

2016年08月31日 | CAMJ参加記録
 さて、この週末は、(一社)日本気象予報士会・東北支部の例会に参加してきます。約1年ぶりの仙台です。前回は昨年11月に、実に8年ぶりに参加しましたので、今回は「ハチ」年ぶりならぬ「イチ」年ぶりとなりました。

 せっかく例会に参加することもあり、話題提供も行います。「大雪に備えた天候デリバティブの検討─プライシングの試み─」と題して、天候デリバティブのプランを自分で試算(プライシング)した話を紹介する予定です。

 天候デリバティブは、もともと「天候の変化に保険をかける」ようなもので、天候(気象)の変化に伴って生じる損失を補填することを意図しています。しかし、いわゆる「損害保険」とは異なり、予め設定していた(損失を引き起こすレベルの)気象条件が観測されていた場合は、実際の損害が発生していなくても、補償金が発生します。

 従って、天候デリバティブは、「損害保険」ではなく「金融商品」と言った方が適切かも知れません。天候の変化を原資産に見立てた「オプション取引」と考えると理解しやすいでしょう。

 当日は、オプション取引の基礎を概観した後、保険のプランを考えて、それに対する掛け金(プレミアム)の算定までを紹介する予定です。

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プレゼンは○○○○である。

2015年11月10日 | CAMJ参加記録

 10月25日の記事でも書きました通り、先週の土曜日(11月07日)は仙台に行ってきました。(一社)日本気象予報士会・東北支部の例会に8年ぶりに参加して、これまで取り組んできた山形県の局地気象に関するプレゼンテーションも行ってきました。

 今回は、山形県の局地気象を、しかも「その地元(を管轄する支部)」でお話するので、ローカルな地名での議論に発展することも想定して、山形県内の新・旧市町村名を必死で覚えました。自分の故郷の周辺は一通り完璧に覚えていたのですが、それ以外の地域はほとんど記憶が無く・・・1ヶ月近く、毎日のように暗記テストしていました。


 左が現在の市町村、真ん中が旧市町村(合併地域を重点的に)、右がアメダス観測地点です。番号毎に市町村名や地点名を答える小テスト形式です。

 また、プレゼンテーションの時間管理は特に重要です。

 最近のパワーポイントではリハーサル機能が搭載されているので、個々のスライドの説明について、どれだけの時間が掛かったのかが計測できるようになっています。これを使って、スライド毎に何秒掛かったのかを計測して、毎回記録していきました。


 スライドの下にマル囲みの数字が計測された秒数です。この写真上は20回分の記録が記載されています。1ヶ月近く、毎日のように通し練習を重ねて、本番に臨みました。

 プレゼン終了後に「興味深く、面白かった」「わかりやすく、細かい所まで配慮されていた」とお声をかけて頂き、一安心。

 先の数学解析技術コンサルタントとしての業務や地域の大学での特別授業の際も、やはり相当の準備をして臨みました。その際もやはり意識していたのは、時間の管理説明のわかりやすさでした。

 私にとって、プレゼンは「戦い」であり、「真剣勝負」です。

 時間との「戦い」であり、聴衆にとってわかりやすい説明・解説でなければならない、と言う点ではまさに「真剣勝負」にならざるを得ないのです。このスタイルは学生時代にアルバイトで勤めていたクラス指導学習塾の講師の経験に基づいています。初めから上手く説明出来ていたわけではなく、当時の塾長からもビシビシと鍛えて頂く中で、自ずと身についてきたものです。
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11月07日(土)・「日本気象予報士会・秋の案内会(仙台)&東北支部11月例会」参加

2015年10月25日 | CAMJ参加記録
 まだ先の話ですが、11月7日(土)に開催される「日本気象予報士会・秋の案内会&東北支部11月例会」に参加してきます。

 冒頭30分ほどは、気象予報士試験に新たに合格された皆さんや、既に資格をお持ちで日本気象予報士会には未入会の皆さんと対象とした、入会に関する案内・説明会です。この後、3時間近くに渡って「東北支部11月例会」が開催されます。

 この東北支部11月例会において、8年ぶりに話題提供を行います。今回の演題は「山形県内における降雪域の独自数値シミュレーション ─ 熱流体数値モデルとニューラルネットワークによるアプローチ ─」です。プレゼンは40分程度を予定しております。


 私の故郷でもある山形県は、地形の起伏に富んでいるのが一つの大きな特徴です。このような地形が冬季の局地気象、特に降雪域の分布パターンの形成に与える影響は無視できません。そこで、2種類の数値シミュレーション技術を独自に開発し、解析を試みました。


 一つ目は熱流体数値シミュレーション(LES)です。最近は単なる熱流体モデルのみならず、新たに凝結・降水過程の簡易モデルも搭載して、降水域(降雪域)の分布パターンも描けるようになりました。このシミュレーションの取り組みについては、日本気象学会誌「天気」や春季・秋季大会を通じて、発表してきたものです。

 もう一つは、人工知能・ニューラルネットワーク(NRN)によるアプローチです。最近になって、ようやく形になってきたシミュレーション技術です。この秋に、最初に取り組んだサクラの開花予測実験が気象学会誌「天気」に掲載され、つい先日にオンライン公開されたばかりです。その技術を応用して、山形県内の降水域(降雪域)と気温の分布パターンの解析を試みました。

 今回の話題提供は、演題は一つですが、その内容は豪華2本立て(LES&NRN)の超重量級となっております。これまでの山形県内の局地気象に関する独自シミュレーション研究の集大成を御紹介する予定です。
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