◎ジェイド・タブレット-04-04
◎思春期の垂直の道-4
トランスとは、変性意識状態のこと。トランスにおいて脱身が起こるが、無数にあるトランスの中で、大悟覚醒に至るメンタル体離脱に行けるトランスは、稀なものであろうと思われる。トランスに入ったからといって、かつそれが快適なものであったからと言ってもメンタル体離脱につながらないトランスはよくあることなのだろうと思う。
またトランスは、意識の働きが弱まった時に、強力に、頻繁に出現する。トランスとは意識と無意識のせめぎ合いだが、そこで何を見るべきかといえば、隙間ということになる。隙間については、後段で述べる。
トランスの中で、メンタル体離脱につながりそうなものを大まかにハイレベル・トランスとし、メンタル体離脱につながりそうでないものをローレベル・トランスと便宜的に区分してみる。
1.ハイレベル・トランスの例
ハイレベル・トランスとはどちらかいうと宗教体験、冥想技法の側であって、能動的に求めてトランスに入る技法が中心である。以下に代表的な例を挙げる。なお、どの宗派も単発の冥想技法でなく、複数の冥想法を組み合わせて修行しているものだ。
宗教体験とは神とのコンタクト一般を言うが、コンタクト手法は大別して三種ある。それは、神に出会うこと、神と一体になること、神降ろしの三種である。トランスは、冥想修行で発生している。
(1)古神道の帰神
古事記の仲哀天皇の帰神の段でも知られるように古神道では、琴で帰神に入る。
(2)チベットの託宣僧
チベットの託宣僧は観想法でトランスに入る。 ダライ・ラマのインド亡命以前は、託宣僧(ネーチュン)は、チベットの護法神ペハル・ギャルポとその最も重要なチベットへの使者ドルジェ・タクデンとの霊的コンタクトを、一日4回、毎日8時間にわたる観想法を中心とした儀式を通じて行っていた。それによりトランスに入った。
(3)古代中国の巫術(シャーマン)
会稽郡上虞県(浙江省上虞県)の孝女曹蛾の父のク(目へんに于)は琴と歌で神おろしをする巫であった。(後漢書孝女伝)
(4) イスラム神秘主義者(スーフィ)
円舞によりトランスに入る。
(5)禅
只管打坐によりトランスに入る。
(6)念仏、お題目などマントラ
マントラを繰り返すことでトランスに入る。
(5)チベット密教
観想法によりトランスに入る。
(6)ヴィパッサナー
呼吸を見つめることでトランスに入る。
2.ローレベル・トランスの例
(1)瞑想修行での魔境
幽霊の足音を聞いたり、巨大な化け猫を見たり、バリエーションは無数にある。
(2)スマホを見つめつつ前に注意しないで人ごみを歩く(自己流の催眠性トランス(無意識に落ち込んで、目の前のものが見えていなかったり、ある人物の声にしか反応しなかったり、現実に起こったことを記憶していなかったり)にはまっているようなケース)
(3)深酒による酩酊
(4)向精神性薬物によるトリップ
(5)入眠時、睡眠からの覚醒時
(6)宗教、エンターテインメント、政治などの巨大イベントでの集団心理の盛り上がり。
感動と興奮で、偏狂が起こりやすい。
これ以後の例は特殊だが、参考になる点がある。
(7) 酸素マスクなしで、高山の標高8000メートル級の死の地帯にいる場合。
反応が緩慢になり、思考力が鈍くなる。また一つのことしか考えられないような具合になる。ところが感情の方は、こうした中でも絶望と歓喜というかたちで残る。
(8) PTSDでの心の狭窄(意識のひきこもり)
幻覚を見るとか、実在しているものの視覚像を消すようなことをする。
(9) PTSD-児童虐待
気まぐれな親から、虐待される徴候があると、いつでもすぐ逃げて隠れられるように、子供は、絶え間ない過覚醒の状態にある。逃げられなかった場合は、虐待されるままになるが、虐待をエスカレートさせないように、心の中の動揺や興奮を表情に出さないようにする。しかし子供は意味と希望を求めて親に愛着せずにはいられない。
そのジレンマを自分一人の力で解消する唯一の手段は、自分の心の中で、世界の認識を、非現実的なレベルまで変貌させるか、または自分の肉体の認識や記憶そのものを変えてしまうという、変性意識状態になることが少なくない。
最後に、
トランス状態では、やや無意識の方が優勢で意識の方が劣勢となる。そうした状態で意識をきちんと保っていくことが大切。その辺の頃合いと方向性を教えてくれるのが正師ということになる。正師がなければ、発狂が起こりやすいというのは、無意識が意識を圧倒することこそ発狂だからである。
行というのは、無意識を操作すること。
よくスポーツでゾーンに入ると言うが、ゾーンもある種のトランスである。
思春期において脱身を求めると言っても、もうこの時点で正師が必要となる。