最近、ダンスの私たちのクラスに新人さんがはいった。
年配の男性だ。
真っ黒に染めた髪、
花柄の襟の付いたベージュのベストとパンツのコンビネーション。
ただものではない。
試しに先生と踊ってみると、格好もさまになっていて、自分のダンスが出来上がっている。
ところが、その出来上がったダンスが、微妙に誰とも合わない。
それもそのはず、若いころに2,3年習って、その後は何十年も自己流で踊ってきたのだそうだ。
それもススキノで。
そりゃあ、ススキノのきれいなおねえさまなら、どんなダンスだって、
「まあお上手ね」と持ちあげて合わせてくれるでしょう。
年とともにススキノへは足も遠のき、
近場のダンスパーティーやらダンスホールでデビューしてみたら、
相手と合わない踊れない、こんなはずじゃなかった。
遂に、「あなた、ダンススクールに行ってらっしゃい」と言われてしまったそうな。
ススキノのお姉さまと違って、ダンス好きのおばちゃまは厳しいのよ。
そんなわけで、もう一度出直す決心で来たのだそうだ。
レッスン途中のコーヒータイムで、そんなことを面白おかしくお話してくださった。
それが途切れたところで、一息置いて、
「僕ね、今年80歳なんですよ」
うう~む、ドヤ顔に見えるのは気のせいじゃないわね。
「えええ~~スゴーイ、80歳でー!」
称賛の反応を期待しているのがありありだ。
でも、彼の期待に反して、みんな、ああそうですか、とスルー。
だって、80歳なんて、ここじゃ珍しくも何ともないのよ。
70代80代が主流なんだから。
私たちは週に二つのクラスに参加しているけれど、
もう一つのクラスには85歳の男性がいる。
違う曜日のクラスなのでお会いしたことはないが、
このスクールの最高齢は、89歳の男性だそうだ。
女性も同様で、60代の私なんか、
「珊瑚さんは若手なんだから頑張ってね」と発破をかけられているのよ。
私より若い人といえば、60歳の女性で、彼女が全体の最年少だ。
デイサービスの話ではございませんよ(笑)
「○○さん、ここじゃ80歳なんてゴロゴロしてるよ」
先生のとどめの一言で、
新人さんのドヤ顔は、あえなく崩壊したのだった。