ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

旅しながら淡々と写真を貼る 江田島その2

2011-11-01 | 海軍

前回江田島に訪れたのは地震前の2月のこと。
前回も言ったように、解説の方は前と同じ「昔艦船に乗っていた」元艦乗りの自衛官の方です。
一日3回、全く同じツアーをしておられるわけですから、一言隻句同じセリフが聞かれると思いきや、
ネタはたくさんあるものらしく、微妙におっしゃることが違っていました。


たとえば、大講堂が進駐軍の占領下礼拝堂になっていたというようなことです。
この中央の玉座(天皇陛下はじめ皇族のお座りになる椅子)置き場にマリア像を置いたそうです。

 
前回思わせぶりに「レンガが・・・」と言いかけて引っ張ってみたのですが、その衝撃の事実を。
どうでもいい方には衝撃でも何でもないのですが、これまで兵学校の建物についての本を読まれた方、
「生徒館のレンガはイギリスから手焼きのものを一つ一つ包んで送ってきたものである」
と言う記述ではありませんでしたか?

実はそれは間違いだったのです。

二か月前の新聞記事になったそうですが、実はこのレンガは国産も国産、れっきとした
メイド・イン・ヒロシマ(東広島市安芸津町)のものであることがある調査で明らかになったというのです。
どこから広まった噂かは知りませんが、巨額の予算を投入して国家の威信をかけ作り上げられた
「世界三大海軍兵学校(アナポリス、ダートマス、エタジマ)のひとつ」の校舎ですので、
全てが特別、全てが特注、舶来の最新の、と噂が噂を呼び、このような間違いが定着してしまったのかもしれません。


実は、衝撃などと言いながらエリス中尉は当時記事を見て知っていたはずなのですが、
それでもなんとなくその事実を頭から排除していたものらしく、解説の方の話を聞いて
「ええっ!」
と一瞬驚いてしまったのですから、刷り込みというのは不思議ですね。
・・・・単に忘れっぽいだけだって?

 

カッター吊り場。
海軍には憧れますが、今回高速船に乗ったくらいで「早く降りたい・・・」
あきしおの艦内に入っただけで「狭い。なんか変なにおいがする・・・」などと
へたれなことばかり脳裏に浮かぶようなやわな精神しか持ち合わせていないエリス中尉、
実習でカッターを漕がされた中学生の時に「少なくとも将来船乗りだけにはならないだろう」
と言うことだけは確信してきたのですが、何の因果かフネ関係もフネ関係、海軍にこれほどのめり込むとは、
神ならぬ身には知る由も(略)

  

この建物、悉くディティールが凝っています。
写真を見て初めて気がついたのですが、左端の床下通風孔と、同じ大講堂の扉上部のモチーフが同じです。
真ん中は生徒館の避雷針です。なんたる繊細さ、優美さ。

 

敷地内に人影があればついついズームにしてまでもシャッターを切ってしまいました。
左はランニングする自衛官。
右はこれから始まる行進練習に備える学生と隊員。

見学の最後は行った方ならご存知でしょうが、教育参考館。
昭和11年に完成した資料館です。
ここでは特別展として広瀬中佐の資料をガラスケース一つ分増やしていました。
「坂の上の雲」のあと、広瀬中佐に興味を持つ人が増えたことを受けてのことでしょう。

ただ部下を心配して逃げるのが遅れ戦死しただけの人物ではなく、
本人が軍人として非常に心身ともに優れており国際的な視野を持つ知識人であり、
何といっても人間的魅力に満ち満ちた「漢」であったということが人気の秘密のようです。
売店で広瀬中佐の伝記マンガを売っていたので買って帰りました。

参考館内には特攻戦死した人々の名前が壁に刻まれているのですが、
ちょうど手の届くところに野中五郎少佐の名前を見つけました。
ふと手を伸ばしてその名を指でなぞってみました。
時間があれば一日でも佇んで知っている名前を確かめたかったです。

 
参考館に入る前、軍楽隊の「軍艦」が聴こえてきており、
「ああ、兵学校で聴く『軍艦』・・・」
と感無量23発目(くらい)を味わっていたのですが、それは参考館を出たとき
「行進練習のための軍楽隊リハーサル」
であることが判明。
右画像と、冒頭画像の海軍旗を立てているのが、士官候補生の皆さん。

  

も、もしかしてこれは観閲式の練習ですか?
「毎日やっているんですか?」という見学者の質問には
「いえ、今日は特別ですね」というお答えでしたから。
感無量24発目。
観閲式に出ずして海軍行進を目の当たりにするとは。



 

軍隊なのですから当たり前ですが、本物の銃ですよ。
行進の周りには教官がついて回り、銃の位置や姿勢をチェックしています。
この後ろについている教官の長い棒にご注目。
航空訓練で教官が長い棒を持って乗り、後部座席から生徒の頭をガンガン、と言う話をつい思い出しました。
しかし、この棒で生徒の頭をバンバン、なんて、
「そんなことをしたら大騒ぎになりますから絶対にしません」(解説員)
銃の先を持ちあげたり、肩を少し抑えたりしているのは見ました。

うーん、いいのか?そんな紳士的なことで。
他の団体ならともかく、軍隊ですよ。
もっとハードな鍛練が必要ではないのだろうか?
などと、他人事だと思って言ってみる。

 

女性自衛官。
それにしても、同じ女性としてこのスタイルにはかなり疑問が。
まず、ヒールのある靴で行進させるなら、ひざ丈スカートでしょ?
このズボンの制服(もなんだか微妙なデザインですが)であれば、
甲の隠れるスリッポンかブーツの方がいいのではないでしょうか。
色も、紺の士官用はいいんですが、このブルーは垢ぬけないというか。

進駐してきた連合軍女性兵士の映像を見てそのかっこよさにため息をついたことがありますが、
あれは体格のいい白人女性だったからで、私見ですが
日本女性って体格的になんだか行進に向かない気がするんですよね・・・。

このブルー軍団の身分については良くわかりませんでした。
旧軍の下士官の教育課程でしょうか。

 

初々しい感じの学生に続いておじさんばかりのラッパ軍団登場。
行進ラッパを全員でユニゾっていました。

慣れているのか躾けられているのか、見学者がこうやってじろじろ見たり写真を撮っているのに、
一人として視線すら動かさずまっすぐ前を見て行進していました。
兵学校の写真を撮り続けた真継不二夫氏が、兵学校の生徒について

「これほどレンズを無視し、冷厳氷の如き態度に接したことがあったであろうか。
衒った無関心でもなければ、装った平静でも無い。
自己の一歩の向上は帝国海軍の一歩の向上だとする
牢固とした思想信念がさせるのであろうか。
これこそ一糸みだれぬ規律を行動しているものの強さであり、
信念に徹するものの態度かとも考えられるのである」

と書いていますが、少なからずその一文を彷彿とさせる彼らの姿でした。

 


この日、普通電車に荷物を抱えて乗り(小さいスーツケースに買い替えて本当に良かった・・・)
ちょうどラッシュに引っ掛かって通勤の皆さんに多大なご迷惑をかけながら夜8時。
次の停泊地、岡山に到着しました。

ここではどんな出来事が待ち受けているのか?
(ほとんどやけくそ気味に続く)