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コネチカットの州立公園で鳥を撮る

2015-07-16 | すずめ食堂

ノーウォークという、コネチカット州の街に滞在することを決めたのは
単にニューヘイブンとニューヨークの途中にあるという理由でしたが、
何も知らずに選んだこの街は、自然が豊かで、しかも由緒ある家が多い、
アメリカの中でも「ええとこの出身」と言われるような地域であることがわかりました。

最近HULUで移動の時に観た映画「リップスティックジャングル」(^_^;)で、
主人公の金髪女性が、実はNYのギリシャ料理店経営の移民の娘であったのを知って、

「君はてっきりコネチカットあたりの出身だと思っていた」

と彼女の上司が驚きを込めていうシーンがありましたが、まあ、そういう地域です。
いわゆるアメリカ東部の典型的な郊外の街(サバーバン)で、アパートより一軒家が多く、
裕福な人々は河や海岸沿いに好んで住み、彼らの祖先はイギリスからの移民で、
先祖に南北戦争のベテランがいる、というようなアメリカの「旧家」がたくさんある。

これがアメリカ人の持つコネチカット州のイメージのようです。



たとえば、ホテルの近くにあった

ロックウッド・マシューズ邸

なども、この地域にそういったイメージをもたらしています。
銀行や鉄道で財をなしたルグラン・ロックウッドがニューヨークの建築家に依頼し、
1864年に建てた豪華マンションで、ロックウッドの死後差し押さえられた資産を
チャールズ・マシューズが買ったということでこの名前になったようです。



ビクトリア調で建築されたこの建物は、62室を擁する大邸宅。
一体何人で住んでいたのでしょうか。
もちろん執事がいて、女中は売るほどいて、ガーデナーや調理人も住んでいて・・。

差し押さえられた時、ここにはロックウッドの未亡人と子供が住んでいたようですが、
彼らは住む家も財産も無くしてその後どうやって生きていったのでしょうか。



もちろん運転手もいたと思われますが、1870年代だと、
もしかしたらまだ馬車だった可能性はあります。
この車寄せで、最新式の自動車から主人が降りてくるようになったのは
おそらく1985年、カール・ベンツが三輪自動車を発明してからでしょう。



ウィキによるとこの建築物は1941年ノーウォーク市に売却されたあと、
1950年代には、財政上の関係で建物は解体の危機にさらされましたが、
地元の保存推進団体の運動により1971年に国の史跡に指定されることになりました。



いかに凝った家であるかというのはこんなところにも表れています。
ガラス張りのドームが半円状に外に突き出した当時の画期的な「サンルーム」。

 

古いアメリカの建築物には必ず見られる半地下の窓。
必ず地面から下にあり、こういう地下には倉庫か洗濯機置場があります。
こういう窓に面したところは掃除のしようがないので、おそらく積もったゴミは
建造以来の積み重なった層ができているに違いありません。



さて、ロックウッド・マシューズ邸のある公園は、ウォーキングするには小さかったので、
わたしたちは地図で調べて海岸沿いに行ったところにある州立公園で散歩することにしました。
シェアウッドアイランド州立公園、という名前の通り、陸側は川で囲まれていて、つまり
小さな「島」状の地形を利用した自然公園です。



海岸沿いには「マンション」(豪邸)と呼んでもいいような立派なおうちが多数。



海岸沿いに整備された歩道を歩いて行くことにしました。
ちなみに入り口で「コネチカット州民か」と聞かれましたが、
州民であれば駐車料の9ドル(アメリカの常識としてこれは高い方)は要りません。



駐車場に車を止め、その場所から振り向くと、何か動物を発見。

「ウサギがいるよ」

「ウサギ・・?耳が見えないんですがあれは」

「え。なんだろう」

こんなこともあろうかと持ってきた望遠レンズに付け替え、写真を撮って
大きくしてみました。




大きくしてもなんだかわからないという(笑)
大きさはだいたい25センチくらい。
思索するかのように毛を風にそよがせながらじっとしています。



彼がふと地面に消えてしまったので見にいくと、こんな穴が空いていました。
穴の大きさも体のサイズギリギリで20センチくらいです。

「なんだろう」

「モルモット?」

「まさかリスじゃないよね」

 

リス的げっ歯類的ネズミ的な動物がたそがれていた穴の上の木では、
灰色の鳥さんが激しい泣き声をあげては木の茂みから飛翔して、
また茂みに戻っては鳴いて、ということを繰り返しています。
たった一羽でまるで求愛ダンスをしているような激しい動き。



またしても望遠レンズの出番です。
ぴょんぴょん飛び回るようにしている姿はなんとも愛らしいものでしたが、
拡大してみると、結構顔が怖い(笑)

小さな鳥なのに声も鋭くて獰猛な感じがします。



飛び立った瞬間。



鳥って飛ぶときこんな姿勢になるんですね。
というわけで、ローカルバードのページで調べてもこの鳥が
なんという種類なのかわかりませんでした。



さらに先を歩いていきます。
芝生のような草地が広がっていますが、毎日のように芝刈り機が出動している模様。



ターナーの絵に出てきそうな木の向こうにはモダンな建築物が。
「マインクラフト」プレーヤーの息子のために写真を撮っておきましょう。



息子作。
これはモダン建築ですが、ヨーロッパ風の重厚な建物もよく作るとのことです。

ちなみに、彼の建築(この写真のだったかも)、過去二回プロの建築家に褒められたことがあるそうです。
一人は名前を調べたらアメリカの映画関係の仕事を主にしている結構有名な建築家だったそうで、
息子はかなりびびっていました(笑)

しかし、プロの建築家ってマインクラフトやるんですね。
元兵学校生徒のSさんにも勧めてみようかな(笑)



海を見渡す開けた場所に、名前が書かれたプレートが埋め込んでありました。

「公園に寄付したら名前を残せるって、本当にいいシステムだよね」

TOが呑気にいうのに、わたしは

「いや・・・・・、これ違うみたいよ」



二人ともこれをみてシーンとなってしまいました。
コネチカットはニューヨークへの通勤圏内なので、911のときにも犠牲になった人がたくさんいたようです。
上の写真の二列にならんだプレートはだいたい5mはあったと思いますが、
反対側の敷地に同じ人数分のプレートがあり、全部で100人分はあったのではないかと思われました。



すずめ発見。



じっとしているので写真を撮りまくっていると、顔を巡らせてこちらを見ました。
アメリカのスズメは日本のより薄い色です。



砂浜を右手に見ながら歩いて行くと、グースの群が固まっていました。



ほとんどが首を収納してお昼寝中。




しかし、必ず何羽かのグースは首をしゃんとして外を見張っています。
グースの世界には「自分は群を守るんだ」と自覚している鳥がグループに必ず複数いて、
外敵から群を守るためにどんなときにも目を光らせていることに何年か前気づきました。
あまり群に近づいていくと、この見張りグースがシューシューと音を出して威嚇します。





群の中には首に認識番号を巻かれている子もいました。
昨日テレビで「ワイルドリリーフ」という、野生動物のドクターのドキュメントを見ましたが、
このグースもそういった団体によって管理観察されているようです。



グースの群とは別にカモメの群も砂浜に集合していました。



海辺にデッキチェアを置いて何をするでもなく海を楽しむ人たち。
全く打ち寄せる波がありませんが、水平線の向こうに見えているのが
ロングアイランドで、内海のようになっているここはほとんど波が立ちません。
まるで湖の岸のような海岸です。



日本だと海水浴の季節がなぜか決められていて「海開き」なんてのがありますが、
開くも開かないも、そこに海があるなら泳いでもいいじゃないか、ということで、
平日にもかかわらずちゃんとセーフガードが監視しています。
みたところ泳いでいる人はいないようでしたが、6月下旬は十分泳げる水温です。



打ち寄せた貝殻で全く砂が見えなくなっている海岸。



海岸を歩いて行くと河口に行き当たりました。
「実は島」なので、こちらから行けるのはここまでです。
公園の真ん中を通って帰ろうとして、こんな不思議なものがあるのに気がつきました。
隣の建物は自然動物保護センターのような団体が使用しているようです。
しばらく見ていると、



穴の中に動くものを発見しました。
何かの雛です。



すると、一つの巣穴から成鳥がひょいと顔を出しました。
なんと、ツバメの巣の「アパート」だったんですね。



お母さんツバメは頻繁に帰ってきて、入り口から中でまっている雛たちに
餌をやり、すぐに(そりゃそうだ、持って帰れるのは一人分だから)
飛んで行ってはまた戻ってきて、を気の遠くなるほど何回も繰り返しています。
その度にどこかの虫が犠牲になっているというわけです(-人-)ナムー



雛は必ず一つの巣穴に何羽かいるようでしたが、お母さんが帰ってくると
「わたしに!」「わたしに!」と必死で口を開けているようでした。
でも、要領が悪くてちっとももらえない弱い個体なんかもでてくるんだろうな。
こういうのも「自然淘汰」というものらしいですが、自然界では普通にあることなのです。



餌をやっているお母さん鳥が振り返ったところを一枚。
ツバメというと黒だと思っていますし、実際飛んでいるところを見ると
黒い燕尾(文字通り!)をきているようにしか見えないのですが、
実際の羽の色は黒ではなく青であることが写真によってわかりました。
羽の先は黒のようですね。



「お母さんマダー?」



燕尾服、といいますが、燕尾服の「テール」は「尾の先」ではなく、
実は「羽の先」であることがこの写真によって(わたし的に)判明しました。
ツバメの尻尾って、べつに普通の鳥と一緒ですよね?

正式には「燕尾服」ではなく「燕羽服」(えんばふく)だったのか・・・。





ツバメの顔って、なんかしかめっ面している人みたい(笑)



ところで、このツバメアパート、全部で三棟あったのですが、一つだけ
まったく人影じゃなくて鳥影がない棟がこれ。

「なんでこれだけ人気がないのかな」

「あれだけ韓国製なんじゃない?ペトロナスタワーの片方みたいに」

(これはわたしではなく、驚くなかれTOのセリフ)

「あのねえ・・・あっ、巣の入り口の前に台みたいなのが付けてある」

「あれじゃお母さんは餌やりにくいわ。ただでさえ急いでるのに」

「それでまったくこちらは入居者がいないと」

「良かれと思って余計なことをしたのが裏目に出て嫌われる・・・・よくある話ですな」




せっかくいい思いつきだと思ったのにまったくツバメに相手にされず、
このデザインを考えてわざわざ手間をかけた考案者は、この如実な結果を
おそらく向かいの建物から毎日のように見ているわけですが、如何な心境でしょうか。




さて、公園を時計回りに一周してきて車に戻りました。
アメリカでの楽しみは、地方地方に必ずある州立公園を探索し、そこを歩いて
新しい景色と、運が良ければ動物にも出会えることですが、ここコネチカットの
ノーウォークにもまたいつか再び訪れたい公園が一つ増えました。