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「カーキーズ」下士官たちの不満〜駆逐艦「ジョセフ・P・ケネディ・Jr.」

2017-02-12 | 軍艦

駆逐艦「ジョセフ・P・ケネディ」見学、続きです。

19世紀後半自走魚雷が発明された途端、それを搭載するための
小型艇を当時の世界の海軍が作り出しました。
小型ならではの高速性で戦艦や巡洋艦を沈めることも可能、
という新兵器だったのですが、それに対するカウンターの兵器として、
魚雷艇よりは大きく、しかし高速性はそのままに、魚雷だけでなく
重武装した戦闘艦が生まれます。

それが駆逐艦=デストロイヤーで、第一次世界大戦において
この名称はすでに定着していました。

第二次世界大戦では、駆逐艦は空、陸、海上からの攻撃に
太刀打ちできる「万能艦」としてその役割を担うようになります。
艦隊においては砲撃の支援をするだけでなく物資や人員を運搬し、
海面から撃墜された飛行機のパイロットを救出し、そして
早期警戒、哨戒を行うといったように。

戦艦や空母には圧倒的な存在感とその戦闘力がありますが、
その実どちらも特に敵の潜水艦に対しては全く無力です。

かつて駆逐艦の護衛無くして敵の海域に飛行機や戦艦が進入したことはありません。

進水してからのジョーイPの三年間を簡単にご紹介しておきましょう。

1945年7月、マサチューセッツ州クィンシーで進水
 
この時シャンペンの瓶を割ったのは、ジョセフ・ケネディの妹
(8番目の娘)ジーン・ケネディ。
彼女はのちに駐アイルランド大使として名誉国民にまでなりました。

1946年2月 捕鯨ボートと接触?乗員が海に投げ出され行方不明

   4月 ロバート・ケネディが任務で乗り込む

1947年2月 地中海に航海、帰国後第8艦隊の旗艦になる


さて、前回の内部に続き、
甲板階で見られるものをご紹介していきましょう。

主砲を見ながらその横に回ってみると、後ろはこんな風になっていました。

 

Interior of MT51 on USS Joseph P. Kennedy Jr DD850

外からガラス越しに見えているのは、このyoutubeによると
MT51なんだそうですが、これで調べてもほぼ何も出てきません。

おそらく5インチ38といわれた砲のことで間違いないと思います。
上のyoutubeでは、同じギアリング型駆逐艦の「マッキーン」 USS784
に乗っていたベテランがかつてのようにローディングをやって見せています。 

youtubeではこの反対側にローディングするスライドがあって、
そこに弾薬を投げ入れておりますね。
昔のようにスライドが動かないので、じいちゃんちょっと焦ってて可愛い(笑)

スライドという弾薬をロードするところがわかりやすいです。

さて再び室内展示です。
大きな赤十字は医務室の印・・・・と思ったら違った。

DISBURSING OFFICE

つまり「出納事務所」です。
もしかしたらいざという時にはバトルドレッシングになるのかもしれません。

みなさんここにきて毎月2回のペイデイにはお給料をもらったんですね。

タイプライター、印刷機、キャビネットの上には穴あけ機。
こちらは「サプライ・デパートメント」、つまり補給部事務所。 

ウェブスターの特大辞書(もちろん英英辞典)もあります。
実際にここでずっと使われてきたのでしょう。 

こちらもオフィス。
それにしてもスチールのロッカーとか、全く固定してませんが、
時化の時に倒れたりしなかったのか心配です。

出納事務所と隣り合ったこの部屋は、補給部の事務所。
アメリカ海軍「サプライ・コーア」所属の士官が詰める事務所です。

サプライコーアは、日本海軍の主計と同義で、

供給管理、遠征物流、在庫管理、支出、財務管理、
契約、情報システム、業務分析、材料と運用、
物流、燃料管理、フードサービス、物流 

などを所掌する部隊です。
先ほどの出納事務所もここの管轄です。

その隣は火災の時に必要な装備装具だけを集めた倉庫。

 

 

 

食堂の脇にはここにも居住区につながるラッタルが。


階段の下には行けませんが、兵員のバンクが見えました。
ブルーの作業着が見えるように広げて置いてあります。 

奥はシャワーブースがあるようです。
この階にあるということは士官用だと思うのですが、なんだかなあ・・・。

CPOとはチーフ・ペティ・オフィサーのこと。
士官、准士官、そして下士官兵という米海軍の階級で、
下士官の上等兵曹以上には CPOが付きます。

上からマスターチーフオブザネイビー(海軍最先任)、マスターチーフ(最先任)
シニアチーフ(上級上等)そしてチーフ・ペティオフィサーの上等海曹。

わたしは未だに下士官のこの階級についてよく理解していないのですが、
この部屋は「チーフ」のつくペティオフィサーの部屋ってことでよろしいでしょうか。

つまりマスターとかシニアとかチーフが全部とりあえずここにいるってことでおK?


 

ところで自衛艦の先任海曹室も、何やら特別な看板によって
その存在を目立たせているものが多いような気がしますが、
この傾向は案外アメリカ海軍発祥なのかもしれません。 

扉には他の部屋にはない意匠を凝らした絵が書かれています。

 

ちなみに、先ほど下の階のベッドに置いてあった制服はブルーでしたが、
CPOの制服はカーキ色だったため、彼らのことを

「カーキス」(KHAKIS)

と呼んでいました。
2009年に軍服が改正になって、ブルーの海上迷彩が制定されてからは
徐々に置き換えられているものの、下士官と CPOは
未だにカーキのものを着用する傾向があります。
しかし、新しくなった一等兵曹以下( E-6以下)のサービスユニフォームに
カーキシャツと黒のズボンというものがあり、このことがどうやら
CPOなど E-7以上の下士官の不満となっているという話です。

なまじかつて「カーキス」と呼ばれていたため、その色が
下の者に使われるのが感情的に面白くないって話でしょうか。

ちなみに沿岸警備隊ではコミッションド・オフィサー(士官)から
ペティ・オフィサー(三等兵曹)まで同じ制服を着ています。 

階級による差異化が誇りだけでなく特権意識を伴った場合、
えてしてその変化においてこのような不満が起こってくるものですが、
米海軍もややこしいことをせず全員青迷彩に決めてしまえばよかったのに・・。 

 

ドアに書かれた「ORDNANCE SHOP」の文字。
いよいよ武器庫か?と色めき立ったのですが、実はここが武器庫でした(爆)
かつてはこのスペースに小銃などの武器が収納されていたのだけれど、

展示艦になると同時に取り払われて、今は単なる空室状態です。


ただ、下に続く階段があって、機関室に行けることがわかりました。
実はなんだかんだ言って駆逐艦の機関室を見るのは初めてです。
それでは張り切っていくぜ!

 

続く。