もうかなり昔のことになりますが、本年度の練習艦隊を横須賀に見送り、
それが終わってから、わたしは試験艦「あすか」を見学させてもらいました。
「今日はどんな肩書きで見送ったんですか」
と聞かれて、
「一人のファンとして・・」
などと答え(ざるを得なかった)たわけは、今回基地に潜入?するにあたって
練習艦隊の見送りとは全く関係ない「面会」という名目を
セキュリティを通るときに申告して入ったからでした。
「あすか」の知人に面会に来たら練習艦隊が出港していたので、
たまたま見送った、というのが建前だったというわけです。
今から遠洋航海に発っていく「かしま」の右舷には、
初級幹部たちの整列する真っ白い制服が目にも鮮やか・・
向こうは「あさぎり」ですが、こちらはずっと左舷にいるようです。
・・・ん? 右舷?
岸壁では左舷に整列していたのに、いつの間に右舷に・・。
これって、艦がターンした途端、「右舷に整列!」とかいう
号令がかかって、みんなが一斉に反対側にダーっと走ったんでしょうか。
その瞬間を見ていなかったのが残念。
防衛副大臣の若宮けんじ議員を乗せたヘリが市ヶ谷に向かいます。
この写真を撮っていると、近くにいた自衛官が、
「わたしたちは毎日見てるので珍しくもなんともないですが・・」
(そんなにめずらしいもんですかね?みたいな)
と声をかけてきました。
すでにわたしに取ってもそんなに珍しいものではなくなってきてるんですが(笑)
そこはそれ、上空に軍用機が飛ぶと見過ごせないのが性(さが)ってもんよ。
練習艦隊見送りの人々は散会し、皆出口に向かう中、
わたしと同行者二人がこのあとの「あすか」見学のため、
人の流れと逆の方向に歩き出したところ、途端に自衛官が飛んできて
「そっちに行かないでください!」
と制止されました。
「いや、わたしたち実はあすかに面会がありまして」
と発起人が説明し行き先証明を見せて解放してもらいましたが、
わたしがお見送りに配られた自衛艦旗をバッグに刺していたので
「これは間違えられても仕方ないわ」
と、そこから先は旗を大きな紙袋に隠してもらいました。
我が心に一片の疚しい点もないというのに、よりによって旭日昇天旗を
こそこそ隠さねばならないというのはなんたる屈辱。
とは全く思いませんでしたが、そこから先は誰何されるされることもなく、
「たかなみ」「おおなみ」「いかづち」の駆逐艦娘たちのところまでやってきました。
「おおなみ」の上では乗組員がなにやら作業中。
めざす「あすか」の対岸には、なんと艦番号604の「えのしま」さんが!
自慢ではないがわたしはこの掃海艇とは二度乗艇し、一度は船酔いをし、
一度は後甲板で転んだという、もう他人とは思えない?深い関係なのですが、
こうして横須賀で再会してみると、あのときのことが夢のように思えます。
船酔いと転倒をどちらも見られた権田司令にもあれは夢だったと思ってもらいたい。
というわけで、「あすか」に乗艦。
舷門で待っているとなんと艦長自らがやってこられました。
ツァー提唱者のお知り合いというご縁です。
乗員はスペック的には70名乗員となっていますが、試験艦という性質上
これに試験要員と呼ばれる人員が100名は加わるという陣容なので、
なにかと人数に幅があるのかと思われます。
「試験艦」というのは自衛隊の中でもワンアンドオンリーの艦種で、
その使命は「ステルス化」「省力化」を目的とする兵器の実験です。
わたしたちには実感がありませんが、この「試験艦」というもの自体
世界の海軍でも大変珍しいとされています。
所属は海自上自衛隊自衛艦隊隷下の開発隊群にあたり、開発隊群は
陸自の開発実験隊に相当します。
開発隊群の任務は、艦艇等に搭載する装備品の運用に関する研究開発、
実用試験、性能調査等を行うことで、
「あすか」は開発隊群の唯一の直轄艦艇という特殊な位置付けです。
比較的スペースに余裕のある「あすか」、談話室も完備。
手前に一人で座る人が皆に尋問されそうなデザインです。
居住室を見せてもらいました。
なんと二段ベッドではありませんか。
これならがばっ!と起きても天井に頭ぶつけずにすむわね。
実に居心地の良さそうなこの居住空間、艦長によると
「海自はどうも(三自衛隊の中で)人気がなくって・・・。
それでせめて住環境を良くしようとしてこういうことになったんです」
ということです。
中の人の口から「海自は不人気」と聞くたびに、もしわたしにその資格があれば、
と申し訳なく思うわけですが、そんなありえない話はともかく、
不人気の理由が「職場=フネの住環境の劣悪さ」にあると
悩める上層部が考えたのだとしたら、それはあながち的外れでもないかもしれませぬ。
談話コーナーに設置された冷蔵庫と電子レンジは結束バンドで留められていますが、
壁とは連結されていないらしいので、冷蔵庫ごと倒れたらきっとアウト。
冷蔵庫にマグネットで取り付けられたトイレットペーパーがシュールです。
耐火スーツの色が他の艦とは違う・・。
「あたご」はオレンジ、掃海艇「えのしま」は黄色っぽかった記憶が。
後甲板の下階にきました。
護衛艦だと甲板下に収納されるもやいの巻き取り機などが皆ここにあります。
舫杭に巻きつけるそのやり方も海軍時代からの慣習に違いありません。
艦の後ろ側に係留してあるボートを見下ろしています。
他のフネより大きめのボートだと思うのですが気のせいでしょうか。
機材を膠着するための器具が船底から出ています。
試験艦という性質上、外から運搬され搭載する器具は多いのだと思いますが、
この位置から積み込むこともあるのでしょうか。
どうもここで立ったまま操縦するようです。
ものすごくシンプルな仕組みのようなコクピットです。
新聞を印刷する機械みたいですが、これは曳航式の装備を曳航するための索展開器。
変わった形の錨ですが、この前いただいた「錨のいろいろ」のページによると、
これはストークスアンカーに似ている気がします。
ここは正式な喫煙スペースとなっているようで、床据付けの灰皿があります。
艦内は禁煙なので愛煙家はいつも外で吸うことになっている模様。
後甲板下段もそうですが、一般公開でもここは見せてもらえないかもしれません。
わたしたちもこうやって覗き込んだだけですが、なにやら機械がたくさん稼働しております。
次に医務室を案内してもらいました。
医務室のドアに「時間延長はじめました」と、まるで
「かき氷はじめました」のようなノリのポスターがありますが、
これは自衛隊病院の歯科治療が6時半までになったというお知らせでした。
ここに常勤しているのは医官ではなく、海曹クラスの隊員であると聞きました。
次はお待ちかね隊員食堂。
ちょうどお昼の時間で食事中の隊員さんも何人かいます。
掃海母艦で予定されていた昼食が、移乗ができなくて食べられなくなったとき、
「えのしま」で代わりにこのトレイでの昼食をいただいたのでもうお馴染みです。
残念ながらあの時は船酔いで食べ物を口にするどころではありませんでした。
この金属プレートには「正しい盛り付け例」(推奨)があるようですが、
ここまで懇切丁寧な写真で解説されずとも皆こんな風に盛りつけるのでは・・。
「お箸とスプーンはここに置いて手で押さえておくと移動しやすいです」
移動しやすいというのは「持ち運びしやすい」ってことでOK?
昼食調理後のせいか、雑然として見える調理場。
実はこの見学の後、隊員の皆さんと同じメニューのランチをご馳走してもらえるという
願ってもない艦長からのお申し出があったのですが、残念ながらわたしは
この後地球防衛会の総会が市ヶ谷であったので涙を飲みました。
同行した後の二人は残って艦長と共に食事をされたようです。
「あすか」の艦内神社はちょっと変わった場所にありました。
だいたい護衛艦などは隊員食堂を出たところなどにあったりします。
御祭神は明日香村の神社にいただいているということです。
左に「叶神社」のお札がありますが、こちらは横須賀の浦賀にある神社です。
艦内神社の下はコピースペースとなっております。
記録をつけろ! 記録をつけない奴を見つけたら止用使用止め!
という注意書きがここは一般の会社とは違うと感じさせます。
相手の名前を必ず確認すること!
その後の「間違えることがあります」がじわじわとウケる。
自衛艦の写真を撮る時には必ず撮ってはいけないところを聞きます。
どんな自衛艦も、正確なスペックが表示されている艦内図などは撮影を断られます。
右側は真水タンクやバラストタンク、真水・海水ポンプなどの状況、
左は配電の監視を行うためのモニターとなっています。
いずれのモニターも切り替えて吸排気などの状況を確認するなど、艦内の状況を
ここで全て把握することができるのです。
このエントリを作成しだして「しまった」と思ったのは、間にイベントがあって
そちらの報告をしているうちにこの時に聞いた詳細な話を忘れてしまったことでした。
このストップウォッチが何に使われているのかも聞いて写真を撮ったはずですが、
それが何か忘れてしまいました。
最近清々しいくらい記憶力が低下していて情けないです。
一つのことを入れても、次の情報が入ってきたら書き換えられてしまうんです。
記憶のシステムが引き出し式ではなくところてん式になってしまったのかも。
艦の区画図が表されていますが、浸水や火災の時のハロン消化剤の状況が
リアルタイムで把握できるようになっています。
「バーベキュー大会のお知らせ」や「フットサル参加申し込み表」など、
「あすか」隊員の余暇生活の充実をうかがわせるお知らせ。
女の子の萌え風イラストが気になったのでアップにしてみました。
たぶん「あすか」という名前なんだと思います(適当)
いったい何桁の暗証番号を押すのだろう、と不安になるほどいかつい
鍵付きのドア。
もちろん携帯持込禁止。
それもそのはず、ここは技本事務室で、「あすか」に搭載され行われる
各種武装実験についてのデータなども全てここにあるのだと思われます。
わたしはこの上に貼ってある
「いつからいつまで新型の何々を実験する」
ということが書かれた紙を一般人のわたしが読んでしまっていいのか!?
と少しビビったのですが、艦長は
「あーここに(実験のことが)出ちゃってますねー」
という程度でした。
もしわたしたちが中国のスパイだったらどうするんだ!
続く。