皆さんは「手をこまねく」という慣用句の意味をご存じだと思います。
先月、文化庁の令和元年度の「国語に関する世論調査」の結果が発表されましたが、それによると、45%以上の人がこの慣用句の意味を誤解していました。
そこで今日はこの慣用句について、「国語に関する世論調査」の結果からご紹介したいと思います。
「慣用句の意味を尋ねる」
世論調査の質問では「手をこまねいて待っていた」という例文を挙げて、その意味について次の(ア)から(オ)のうち、どれだと思うかを尋ねたところ、結果は下記の通りでした。
(ア)何もせずに傍観している・・・・・・・・・・40.1%
(イ)準備して待ち構える・・・・・・・・・・・・45.6%
(ウ)(ア)と(イ)の両方・・・・・・・・・・・2.9%
(エ)(ア)、(イ)とは全く別の意味 ・・・・・2.0%
(オ)分からない・・・・・・・・・・・・・・・・9.4%
「全体の結果」
「手をこまねいて待っていた」の本来の意味は(ア)の「何もせずに傍観している」です。
調査結果の全体では、本来の意味ではない(イ)の「準備して待ち構える」と回答した人の割合が45.6%となって、本来の意味である(ア)の40.1%を上回っています。
「年代別の結果」
これを年代別に見ると、40代から上の年代では(ア)と(イ)の割合が接近していますが、30代以下の年代では本来の意味ではない(イ)の割合が高く、(ア)との間に10ポイント以上の差がついていました。
特に16~19歳の若年層では、40ポイント以上の開きがありました。
「手をこまねく」の「こまねく」は、「拱(こまぬ)く」から訛ったもので、「拱く」の意味は、左右の手を胸の前で組み合わせること。腕を組むことなのです。
そこから転じて何もしないで見ている。傍観する。と言う意味になります。
「広辞苑」
「手を拱(こまぬ)く」を広辞苑で調べてみたところ、
①腕組みをする。また、考え込む。
②手出しをせず、傍観している。「手をこまねく」とも。
と説明していました。
辞書が示すように「手をこまねく」の本来の意味は(ア)の「何もせずに傍観している」ことです。
「推測される誤解の理由」
「準備して待ち構える」という意味で使われることが多くなっている理由としては、「こまぬく」が音変化によって「こまねく」と使われるようになり、「まねく」の部分が「招く」と同じ音になることから、「手招きする」というようなイメージで捉えられてしまうためといったことが考えられるということです。
「手をこまねいて待っていた。」という文を「(早く来いと)手招きするような気持ちで待ち構えていた。」などと読む人が増えているのかもしれません。
この慣用句は日常会話においても使用することがあると思います。
間違えて使用しないように気を付けたいものですね。