「御の字」という言葉があります。
例えば「70点取れれば御の字だ。」のように使われる「御の字」ですが、皆さんはこの使用例の意味は次のどちらだと思いますか?
①「一応、納得できる」でしょうか?
②それとも「大いに有り難い」でしょうか?
「意味」
「御の字」を広辞苑で調べると、
①最上のもの。極上のもの。結構なもの。「今の世の――の客」
②ありがたい、しめたなどの意。「この試験に60点とれれば――だ」、と説明しています。
「御の字」の「御」は「御中」「御歳暮」「御出席」「御意(ぎょい)」という言葉に使われ「おん、お、ご、ぎょ」と読みます。
また、ひらがなを使った「お客様」や「お茶」「お勘定」などは、本来は「御客様」「御茶」「御勘定」と書き、尊敬の意味合いや丁寧な表現に使われます。
つまり「御の字」は『御』の字を付けて呼ぶべきもの、という意味があって、
・非常に結構な事。
・望んだことがかなって十分満足できること。
・最上のもの。
といった意味になります。
このことから「満足はしていないが、まあまあ納得できる合格点(妥協点)」といった意味で使うのは間違いなのです。
冒頭の使用例の「どちらの意味ですか?」については、②の「大いに有難い」という意味になります。
「由来」
「御の字」の由来は、江戸時代初期の遊郭で使われていた遊里語(ゆうりご)です。
遊里語では、遊女たちが使う言葉「ありんす」や「ざんす」が有名ですが、実は「御の字」も遊里語が由来なのだそうです。
遊女の中でも歌や舞の芸に優れ、教養もある上級な遊女は「太夫」や「花魁(おいらん)」と呼ばれていましたが、彼女たちを指す隠語で「最上のもの」や「十分に満足できる」といった意味で「御の字」が使われたと言うことです。
「誤用に注意」
「御の字」は誤用の多い言葉の一つです。
一般的に使用されている「まあまあ」「悪くはない」「だいたい納得できる範囲である」「良くもないが、まあ悪くもない」などは、本来の意味に沿う使い方ではありません。
「大いに有り難い」、「非常に満足である」という正しい意味で使用するよう気を付けたいですね。