建立
今日は漢字の話題です。
「建立」
この熟語の読みは「けんりつ」それとも「こんりゅう」?
そうです。ご存知のとおり、「こんりゅう」です。
しかし、中学・高校生の中には間違って読む子もいるようです。
建立とは、仏教から生まれた言葉のようであり、日本国語大辞典では、「宗派を新たに開くこと。また、寺院やその建物を新たに作ること。」と書かれており、広辞苑でも、「寺院・堂塔等を建設すること。」と説明しています。
でも何故「建」を「こん」と読むのでしょうか?
漢和辞典によると「建」を「こん」と読むのは古く日本に伝わった呉音(ごおん:仏教に関わる語に多い)、「立」をリュウと読むのは中国語由来の音(おん)で、「リツ」と読むのは日本で定着した慣用音だそうです。
「建」を「こん」と読む熟語は余りなく、広辞苑を調べてみると「建立」のほかに、「再建(さいこん)」くらいでした。
・「再建(さいこん)」・・・神社仏閣などの建物を再び建てること。
・「再建(さいけん)」・・・①建築物を建てなおすこと。②一度衰えたもの、廃れたものを盛り返すこと。
同じ漢字でも、「さいこん」と読めば神社仏閣の建物を建てなおすことであり、「さいけん」と読めば一般の建物を建てなおすことの意味になります。
そして中国語由来の音(おん)である「立(りゅう)」に関する熟語も余り見当たらず、「建立」のほかには、「開立(かいりゅう」「立米(りゅうべい)」「立木(りゅうぼく)」くらいでした。
・「開立(かいりゅう」・・・ある数又は代数式の立方根を求めること。
・「立米(りゅうべい)」・・・立方メートルの事。
・「立木(りゅうぼく)」・・・法律用語で、一筆の土地又はその一部分に生立ちする樹木の集団で所有者が立木法に基づいて所有権保存の登記を受けたものです。
2020年の東京オリンピックに向けて、これから新国立競技場の建設が始まりますが、これは当然のことながら「建立」ではなく、建築、建設となります。
建立(こんりゅう)、難しい読み方ですが、間違わないように気をつけたいですね。
(参考:広辞苑より)
呉音・・・日本漢字音の一つ。古く中国の南方系の音の伝来したもの「行」をギャウとする類。
仏教用語などとして後世まで用いられるが、平安時代には、後に伝わった漢音を正音としたのに対して和音ともいった。
漢音・・・日本漢字音の一つ。唐代、長安(今の西安)地方で用いた標準的な発音を写したもの。遣唐使、留学生、音博士等によって奈良時代・平安初期に伝来した。
「行」をカウ、「日」をジツとする類。官府・学者は漢音を、仏家は呉音を用いることが多かった。
唐音・・・日本漢字音の一つ。宋、元、明、清の中国音を伝えたものの総称。
禅僧や商人などの往来に伴って主に中国江南地方の発音が伝えられた。「行灯」をアンドン、「普請」をフシンと言う類。
宋音・・・日本漢字音の一つ。従来唐音として一括されていた音の一部分。
我が国の入宋僧又は渡来した宋僧の伝えたという音。「行」をアン、「杜」をヅと発音する類。