KOFUKUの家から

演劇的体質の自由人
大きな愛にいだかれて
チワワたち猫たち
南のちいさな森の家にて
芸術的田舎暮らし真っ最中

祈りの時 ~観音さまと聖母~

2007-11-14 | KOFUKU日記
帰って来ました。
見舞った母は小さく小さくなって、いつもの母ではありませんでした。
起きていても意識は殆どなく、まさにいつ何がおきてもおかしくない状況です。
ただ、3日間母についていて思った事は、彼女は本当に愛の人なんだなあという事です。
私は何度か人の病や苦しみの時に傍についていたことがありますが、大体病に苦しむ人は自分の辛さを口にします。
苦しいとか痛いとか辛いとか。そしてそれがまわりに伝わらないと見るや怒り出したりします。
けれど、母は意識が戻っても彼女の口からは「苦しい」とか「辛い」とかネガティヴな言葉は一切出てこないのです。
周りの人間を認識すると「だいじょうぶよ」「みんなはだいじょうぶなの?」「お父さんは?」と周りを思いやる言葉だけが出てきます。
幼い甥が自分の持ち物を見せると「可愛いネ」「良かったねぇ」と喜び、看護婦さんには「ありがとうございます」と殆ど聞き取れない声ですが答えようとします。
熱もあり、話すのも大変で、半身は不随で苦しいかと思いますが、それらについては何も言わないのです。
私も自分の決めたことには一切後悔をしない人ですが、なぜなら見ていた母の生き方ががまさにそうだったから。
彼女は起きている現実に愚痴をいった事がありません。
私は根性なしの根性悪なので、へこたれてぶつぶつ言ってばかりですが。
その愛にあふれた性格のせいか、母の顔は観音さまやマリア様に似ています。
決しておっとりしている性格ではないのです。
どちらかと言うと「凛」としていて、すうっとしています。
その芯の強さの美しさに、私は仏様や聖母を連想するのでした。
周りの方は若いときからとてもきれいで言葉遣いや佇まいの美しく上品な母をまるで「美智子皇后様」見たいといいます。
いつも穏やかに微笑んでいて、人の喜びを自分のように喜び、
悲しみに一緒に涙を流す人です。決して批判や評価はしません。
かと思えば、面白おかしく話をして人を自然に笑わせます。
うちに集う人はみんな母に会いたくて来るのでした。
いつかなんて、一緒に暮らしてた外人アパートの全員がアパートに居なくて私の家に居たこともありましたっけ。
「お母さんが居るから」とみんな言うのです。
きっとおばあちゃんの影響もあるのでしょう。
私は祖母を知りませんが、祖母は戦時中の怪我が元で下半身不随となり、50歳で突然死でなくなったそうです。
祖母は周りの人から「生き仏さまのような人」「観音さまのようじゃ」と言われていて、お葬式には両隣二軒の家を借りても人が入りきらないほどだったとか。
下半身不随でもできる事は自分でして、たらいで洗濯をしながらヨーデルを高らかに歌い、いつも笑顔でお茶目な人だったのだそうです。
マフラーや帽子などを買ってあげると、わざと泥水に落としたりして汚し、
「あら、せっかく買ってもらったのにこれじゃあもう使えないわね。でもとても良いものだから誰かに差し上げましょう」
と言ってそれはそれはきれいに洗い上げ直し、通りかかる新聞売りの子どもや苦学をしている人、自分よりも困っている人にあげてしまう人だったんだそうです。
食べ物は自分のところも困っていても、まだあるからと言って必ず困ってる人に分けてあげていたと聞きます。
やはり母も同じで5円、十円とためてはパンなどを買って、留学してきたお金のない外国の方などに持っていってあげていました。
そのおかげで我が家の兄弟達は学校の帰り道も電車やバスに乗らず歩いて帰ってはお金をためて、やっぱり同じように自発的に一人暮らしのおばあちゃんを訪ねたり、自分と同じように困ってる子にパンを買って持っていったりするようになったのでした。
また母は(父も家族も)動物がとても好きで、生きているものはみんなと同じだからと言って家に迷ってくるものを全部面倒見ていました。
昔裕福だった頃は人がみんな家の前に捨てていくので、100匹くらい動物いたんですよ(笑)
貧しくなってからもそれは変りませんでした。
「頼って入ってくるものを追い出す事はないがね」と言って面倒を見る。
甥がうちのぴーちゃんを「ワンワン言わないの」と叱れば、
「そんなに言わなくてもいいがね。
ぴーちゃんはお話したくてもワンしか言えないのよ」
とかばってくれました。
そんな母のおかげでまた子供たちも学校の行き帰りに捨てられた動物を見ようものなら、学校に行かずに家に連れて帰り、川に箱に入れて流されている猫を見れば、迷わず水に飛び込み助け、妹なんかは怪我したこうもりまで面倒見てましたね。
母が愚痴も言わず、いつも明るいので、家は貧しくてもいつも笑いが耐えたことがありませんでした。
私はネガティヴな父に似てますが、他の兄弟は苦しくても笑顔で吹き飛ばす人たちです。
「ただでさえ大変な環境なのに、自分たちで苦しくなってどうすんの?
せめて自分たちぐらい明るく居ないとネ~」
と言うのが彼らの答えです。
そういう笑顔を培ってきた母の力は本当に偉大だなあと思います。

今回、たくさんの方に母のことでありがたい愛のメッセージ頂きました。
お金を浮かして実家に届ける為に電車移動に挑んだので、そういったメールが不安な心のうちをずいぶん助けてくれました。
母はわたしの友達とも本当に仲良かったから。
心から感謝しております。
皆様、本当にありがとう御座います。
みんなの祈りがきっと届いていると思います。

そんな人気者の母があの優しい観音様やマリア様のような笑顔になって戻ってきてくれることを祈っています