+あなたはそこに+ 谷川俊太郎
あなたはそこにいた 退屈そうに
右手に煙草 左手に白ワインのグラス
部屋には三百人もの人がいたというのに
地球には五十億もの人がいるというのに
そこにあなたがいた ただひとり
その日その瞬間 私の目の前に
ほんとうに出会った者に別れはこない
あなたはまだそこにいる
目をみはり私をみつめ くり返し私に語りかける
あなたとの思い出が私を生かす
早すぎたあなたの死すら私を生かす
初めてあなたを見た日からこんな時が過ぎる今も
一ヶ月がたちました。
短いのか長いのかはっきりしない日々です。
18日、東大阪の往生院にて相方さんの35日法要と納骨が行われました。
彼が眠る場所は廻りを山と自然の木々に囲まれて
眼下に大阪の街を一望できる山の斜面に在って、
それはそれは素晴らしく景色の美しいところでした。
私たちは休みごとに彼が運転するジープに乗って山や海に行きましたが、
高い場所から世界を眺めるのが好きだった相方さんにはぴったりの場所で安心しました。
大好きな関西の美しい風景が彼の目を楽しませてくれる事でしょう。
真新しいプレートの真ん中には相方さんの新しい名前が
≪浄音観世信士≫
と美しい文字で刻まれていました。
相方さんの名前は「観児」といいます。
綺麗な名前でしょう?
相方さんは「俳優」という職業でした。私もそこに出入りする人間です。
だから、今まではプライベートは公私共に公表してきませんでした。
なので、初めてここで彼の名前を妻として、相方さんの名前として呼んでいます。
いつかブログを終える最後の最後まで、秘密にしておこうとも思いましたが、
相方さんを私は思い出にする事はきっとずっと出来ないから、
この日々の愛を綴る場所でずっと彼と一緒に生きていきたいと思い、
相方さんの生きた日々を語れる場にしたいと思い、
ここで彼の姿や名前をご紹介する事にしたのです。
相方さんは生まれたときに周りをあまりに澄んだ瞳で見つめ、
それは敏感に人や物を感じていたそうです。
その様子から、すべての世の苦しみを観じて救い愛を与える観音さまから頂いた名と聞きました。
相方さんの性格そのもの名前だなぁと常日頃思い、綺麗な名前だと思っていました。
戒名もこんなに美しい名前を戴けて嬉しかったです。
お寺の方も観音さまそのものを表わすような美しい戒名だと言っておられました。
そして今回、彼をやっとお家に連れて帰ってこれました。
冷たい容器に入れるのはどうしても嫌だったから、
あたたかな素材で作られた小さなお部屋に入ってもらって一緒に帰ってきました。
長い闘病生活と抗がん剤の投与で、最後の方は血管がとても細くなって
点滴をするのが一苦労で、いつも両腕が腫れていた相方さん。
病院に行くといつもアイスノンで冷やしていて痛々しかった。
それでも会えるときはぴーちゃんに必ず会って
とても痛むはずの腕でしっかりと抱っこをして
早く家に帰りたいと次の長い退院を心待ちにしていました。
急変したときも天に戻る直前まで私に
「頑張って家に帰るから」と言っていた相方さん。
愛するぴーちゃんと暮らした我が家に
やっと戻って来られて喜んでると思います。
小学校の頃からの親友さんで木工芸術家のコダマくんが
彼の愛した原宿夢の街の材木を使って小さな木の葉型のトレーを作ってくれました。
連れて帰った相方さんをそのトレーの上にそっと座らせてあげました。
大好きだった木の香りとぬくもりで座り心地の良い事でしょう。
そして彼のひとかけらは小さなネックレスの中でいつも私と一緒に居ます。
これからまたぴーちゃんと3人一緒にいられます。嬉しいです。
もう少ししないと落ち着かないけれど、こうやって戻ってきたから、
これから彼が大好きだった人々のところに一緒にご挨拶に行きたいと思っています。
そしてもう少し私が元気になって、いろんなものを彼の為に受け入れられるようになったなら、
また彼の大好きな自然の中に連れて行ってあげたいと思っています。
もうすぐ24日、クリスマス・イブ。
相方さんのお誕生日です。
すべての方へ美しいクリスマスになると善いなぁと思っています。
どうか、しあわせな、しあわせなクリスマスでありますように、、、。