たぶん2015年のブログです
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瀬尾さんの中学男子を描いた小説、『あと少し、もう少し』(2015・新潮文庫)を読みました。
またまた、泣いてしまいました。
年のせいか、涙もろくなってきているようですが、いい小説です。
中学男子の駅伝をめぐるひと夏の小説。
スポーツ根性小説ですから、涙は必見でしょうが、予想を裏切りません。
しかし、単なるお涙ちょうだい小説とは違います。
まずはそれぞれの登場人物の抱えている「生きにくさ」。
瀬尾さんの小説の登場人物にはこういう人たちが多く出てきますが、今回も、みんな等身大に悩み、苦しみ、もがいている中学生と、その周囲にいるおとなたちが描かれます。
そういう「生きにくさ」を抱えている登場人物が、お互いの不器用な優しさや心配りで、傷つけあいながらも少しずつ変わっていきます。
部活の顧問をまかされてしまった、ひ弱でちょっと場違いな美術女子教師も、それはおんなじです。
また、中学生の母親やおばあちゃんなど、大人の人たちの姿もおんなじです。
解説を書いている三浦しおんさんが、走ることを描いた小説は、なぜ、ひとの本質に迫るのだろう、と述べておられますが、まったく同感です。
走ることを通じて、ひとが変わる姿が描かれます。
みんなで走ること、それだけで人は変われるようです。
走ることは生きることに繋がってくるようです。
そして、走ることにその人の生きざまが現れるようです。
友情、思いやり、がんばり、などなど…。
久しぶりにこころが、すがすがしくなったような感じがします。
いいですね、中学男子。
そして、周囲のおとなたち。
そういう人たちと一緒に生きていきたいなと思います。 (2015?記)
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2019年4月の追記です
瀬尾さんが本屋大賞を受賞されました。おめでとうございます。 (2019.4 記)
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2024年10月の追記です
上の孫娘が中学2年生になりました(じーじのブログのプロフィール欄の写真の中でおしりを向けているのが10年前の孫娘です)。
瀬尾さんの描く中学女子の世界もなかなかいいですね。
孫娘に勧めるかどうか、迷っているところです。 (2024.10 記)