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1998年に初来日したホセ・クーラですが、その翌年、1999年にパリで開かれた「イタリアン・コンサート in パリ」での歌声を紹介します。残念ながら音声だけですが、Youtubeに多くの曲があがっています。
この時、クーラは36歳、世界的に注目され、まさに上り調子の時。96年にウィーン国立歌劇場、97年ミラノ・スカラ座、そしてこの年、99年にはメトロポリタンオペラ(MET)と、各地の主要な歌劇場にデビューしています。
クーラは1991年にアルゼンチンからイタリアに移り、声楽のレッスンを受け声を開発しながら、徐々にプロとしての舞台の場を増やしていきました。90年代末は、クーラの才能と努力が花開いた時期であり、またエージェントの売り出し方への疑問や矛盾に直面するなど、その後のキャリアにむけて大きな岐路ともなった時期でした。
もちろん現在も魅力的ですが、とりわけ若い当時の声は、とても輝かしく、みずみずしく、声楽の教師に「30年に1人の声」といわれるのも納得できる、独特の魅力にあふれています。録音だけですが、十分楽しめるように思います。以下、どれから聴いていただいても、また好きなものだけ聴いていただいて、もちろんいいのですが、一応、コンサートでの曲順どおりにならべて見ました。
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ヴェルディの「運命の力」より、第3幕ドン・アルヴァーロの「生きることは地獄だ、この不幸な者には…おお、あなたは天使の胸に抱かれ」。
この年、スカラ座にもアルヴァーロ役で出演しました。また今年2016年5月、ヴィースバーデン五月音楽祭で18年ぶりにアルヴァーロを歌います。
Jose Cura "La Vita E Inferno ~ O Tu Che In Sen" La Forza del Destino
ヴェルディの「エルナーニ」より、 第1幕「ありがとう、愛する友たちよ」
Jose Cura 1999 "Mercé, diletti amici" Verdi Ernani
ヴェルディ「ドン・カルロ」より、第1幕「彼女を失ってしまった」 ドン・カルロには何回も出演していますが、オペラ全曲は正規の録音も動画もありません。
Jose Cura 1999 "Io l'ho perduta" Don Carlo (Verdi )
レオンカヴァッロ「道化師」より、「衣装をつけろ」 カニオ役は「歌手として最後に歌うならこれ」というほど、クーラ自身も打ち込んでいる役です。
Jose Cura "Vesti la giubba" 1999 Pagliacci
プッチーニ「妖精ヴィッリ」より、 第2幕「ここがあの家 - 苦しい僕のこの思いを」 ヴィッリは1994年、クーラが初めて全曲ライブ録音した記念すべきオペラです。その後も06年にウィーンで、07年にジェノヴァで出演しました。
Jose Cura 1999 "Ecco la casa...Torna ai felici di" Le Villi
プッチーニ「エドガール」より、第2幕 「享楽の宴、ガラスのような目をしたキメラ」 めったに上演されないエドガールですが、さらにその4幕版の世界初演に主演しています。その時のことは別の投稿で紹介しています。
→「2008年 プッチーニのエドガール 4幕版 世界初演」
Jose Cura "Orgia, chimera dall`occhio vitreo" Edgar
プッチーニ「マノン・レスコー」より、第1幕デ・グリューの「見たこともない美人」 前年の1998年には、スカラ座でマノン・レスコーに出演しています(DVDもあり、リッカルド・ムーティ指揮、マノンはグレギーナ)。
Jose Cura "Donna non vidi mai " Manon Lescaut
プッチーニ「マノン・レスコー」より、第1幕デ・グリューの「美しい人たちの中で」
Jose Cura "Tra voi belle" Manon Lescaut
ポンキエッリの「ジョコンダ」より、「空と海」 1997年スカラ座デビューの時はこジョコンダのエンツォ役でした。どこまでも空につきぬけていくような歌声は、若い頃のクーラの魅力です。
Jose Cura 1999 "Cielo e mar" La Gioconda
プッチーニの「トスカ」より、第1幕の「妙なる調和」 カヴァラドッシ役はクーラがずっと歌い続けている役です。
最近の歌声は、別の投稿「2014年ハノーファーのトスカ」で紹介しています。
Jose Cura 1999 "Recondita armonia" Tosca
プッチーニ「西部の娘」より、「やがてくる自由の日」
別の投稿「ホセ・クーラ プッチーニの西部の娘」で、2008年ロンドンのロイヤルオペラでのラジオ放送の音声やクーラの楽曲解釈を紹介しています。
Jose Cura "Ch'ella mi creda" La Fanciulla del West
チレア「アドリアーナ・ルクヴルール」より、「私の心は疲れ」
Jose Cura "L’anima ho stanca” Adriana Lecouvreur
クーラの故郷、アルゼンチンの歌曲
Jose Cura Anhelo
ジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」より、第4幕「五月の晴れた日のように」、処刑を前にしたシェニエの辞世の歌。2006年のボローニャ歌劇場来日公演でも出演、DVDもあります。
Jose Cura 1999 "Come un bel dì di maggio" Andrea Chénier
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ホセ・クーラは現在、50代前半。年とともに少しずつ声は重くなりました。一方で経験と解釈の深まりによって、劇的で力強い歌声は、いまもとても魅力的です。
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