2015年3月に、クーラはミラノのスカラ座で、ビゼーのカルメンに出演しました。カルメンはエリーナ・ガランチャ、ミカエラはエレーナ・モシュクでした。再演でもあり、残念ながら録画も、また録音もほとんど見当たらないのが、いつものことではありますが、残念です。
この出演の際に取材したのだと思いますが、2015年5月16日付でイタリア語のインタビューが掲載されました。 → 記事のHP
クーラ自身のキャリアの出発と成功への道のりのなかで、ミラノがひときわ特別な位置にあったこと、ミラノの街、スカラ座、ブーイングについてなど、インタビューのなかで語ってます。イタリア語からの翻訳が不十分ですが、大意をくみとっていただくということで、概略を紹介したいと思います。
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――私にとってミラノは、歴史的で壮大な街、そして挑戦、自分自身を確立するための闘争・・そこには、雨、交流、素材に対処するうえでの組織的困難があった。
●ミラノで国際的なキャリアに弾みがついた
1991年、私は2つの目的をもってイタリアに到着した。1つは、私自身のルーツを再発見するため。母方の祖母はイタリアのクーネオ県サント・ステーファノ・ベルボ Santo Stefano Belbo の出身だった。
もう1つは、仕事を探すことだった。
私はオーディションを探し、エージェントをまわった。しかし、誰も私を評価してはくれなかった。私の最後のカードを使うことに決めた。テアトロ・コロンの歌の教師からもらった電話番号にかけた。テノールのフェルナンド・バンデラだった。彼は電話にでて、ミラノで会う約束をしてくれた。この街に着いたのは4月で、重い雨が降っていた。
●困難に挑み、物語が始まる
そこからが私の叙事詩の始まりだった。バンデラ氏は私の歌を聞き、こう言った。「ブラボー、あなたは重要な声をもっている」。
それから彼は、私の今後の計画を聞いた。私はアルゼンチンに帰国する予定であり、何も計画はないと言った。
彼は「あなたはどこにも行かない!」といい、初めてのエージェントを紹介してくれた。アルフレード・ロード Alfredo Road だ。
●歌の教師、ヴィットリオ・テラノバとの出会い
仕事は、まだなかった。アルフレードは、私の声には、まだ、主にスタイルの上での微調整が必要だと語り、歌の先生を紹介してくれた。
ヴィットリオ・テラノバ――彼は1991年から1992年の半ばまで、私に無料でレッスンしてくれた。上にいくための力を私に与えてくれた、本当に寛大な行為だった。
●テノールへの道
自分がオペラを歌えることを発見したのは、20歳の時だった。アルゼンチンでオーケストラの指揮と作曲を学んでいた。歌はそれらを補うためのものだった。大学の学長が私の声を聞いて、「声を育成しなさい。そうすれば指揮者としてのスキルももっと洗練される」と私に言ってくれた。そのアドバイスによって、自分がテノールになれるということを見いだした。
●ミラノに戻って
ミラノは仕事を通じて知ることになった街。私にとってはまだ、大部分が未知のままの場所だ。ミラノは探求しようとする者だけに、トリッキーにも、その深い懐を明らかにする。カンペリオハウスから100メートルのところに、サン・マウリツィオ教会や考古学博物館などの本物の美しさを発見できる。
2011年にスカラ座でレオンカヴァッロのオペラ「道化師」を歌った時、新改装のホテルに泊まった。初めての部屋を割り当てられた。それ以来、ミラノに来るたびに、毎回同じホテルの同じ部屋をとる。カンペリオホテルにそって歩き、小さな路地を横切る時、まるで過去のミラノに戻っているようだ。そして、1982年に道化師が初演されたダルヴェルメ劇場にも近いことが、私に親密感を抱かせる。
●スカラ座でのブーイングについて
これは全ての観客に関係することではない。また私だけにあることでもない。これらの人々は、個性あるアーティストをターゲットにして否定し、ブーイングの恐ろしさに対して何も配慮することがない。スカラでは多くのアーティスト、カラスでさえその対象にされた。口笛は、設計者ピエル・マリーニの時代以来、劇場の歴史の一部だ。今では、反対の意思表示以上のものになっている。
●次にミラノに戻る時
何も考えていない。20年以上のキャリアを経て、私は、アーティストに敬意を示してくれる場所で観客の前に行き、演奏する喜びを感じている。
非常に残念なことだ。オペラ劇場としてのスカラ座は、オーケストラ、合唱団、技術設備、もっとも優れたものを兼ね備えており、本当に驚くべき素晴らしさであるのに。
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クーラが出演したカルメンでは、初日、主に指揮者や演出、クーラやモシュクら出演者に対するブーイングと口笛があったということですが、ネット上の観客の反応や海外のクーラファンのレポートによれば、一部から執拗なブーイングがあったが、それを超える拍手と喝さいがあったようです。長く続く拍手とブラボーが聞えるカーテンコールの動画も、アップされていました。
最近、スカラ座では、ツイッターやインスタで、当日の舞台をリアルタイムに発信してくれて、そういう面でも素晴らしいです。
また動画もアップされていますので紹介します。 *写真はスカラ座のツイッター等から
ガランチャのハバネラ
Carmen - L'amour est un oiseau rebelle (Teatro alla Scala)
予告編 Trailer Camen (Teatro alla Scala)