おこんばんは~、そうだいです。みなさん、今日はどんな1日でしたか? 私はとくになにもなし! 実に平和な日でした。
今日、本屋さんで文庫本を1冊買いました。
タイトルは、『電人M』! あのポプラ社版・江戸川乱歩の「少年探偵団」文庫シリーズのひとつ!
いや~、文庫になってるんですよねぇ、「少年探偵団」。2008年から2009年にかけて、日本を代表する名探偵・明智小五郎ひきいる少年探偵団が活躍する作品全26冊が文庫化されていたんです。
いいなぁ、こういうのは。いたいけな小学生だった時分、図書館でボロッボロになったシリーズを他の子たちと争うように読み、家に帰ってからも親にせがんで新品を買ってもらって寝る瞬間まで読んでいたわたくしです。
もちろん、その時手に取っていた、子どもにとっては充分な重量のあるハードカヴァー版というかたちにも思い入れがあるのですが、この新しい文庫版はその味わいをちゃんと継承しています。
だって、柳瀬茂さんほかのオリジナルイラストをすべて復刻させているんですから! 表紙は当然ながら、文中イラストまでしっかりと。
いいよなぁ~。いいよなぁ~。思わず志村けんの「いいよなおじさん」のごとく「いいよなぁ~」を連発してしまいます。
江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズは、1936年の第1作『怪人二十面相』から1962年の最終作『黄金の怪獣』まで、28作品が発表されました。
だいたいが、明智小五郎の助手である天才少年・小林芳雄をリーダーとする少年探偵団が、日本中をさわがせる怪盗・怪人二十面相を追いかける、盗んでは取り返され、捕まえては逃げられるという犯罪活劇の繰り返しとなっています。その点がマンネリといっちゃあマンネリで、二十面相も、なんか脳に障害でもあるんじゃないの?と読んでいて心配になってしまうくらいに、毎回似たような手で逮捕されてしまいます。たぶん、アレなんだろうな。明智と二十面相はほんとは裏表同一人物みたいな、『アンパンマン』的な、『ダークナイト』的な光と影の果てしないバトルみたいなモンのはしりなんじゃないですかね。
作品の内容は、まさに昭和の戦前から戦後中期までの東京近辺を舞台にしたものが多く、平成に入る直前の昭和末期に読んでいた私にとっても古色蒼然に感じる描写はありましたが、それでもね、夕暮れ時にドキドキしながら同い年くらいの子どもがあやしい人物を追跡していくくだりには、身に迫るスリルをおぼえたものです。
当然ながら『電人M』も何回か読んでいるはずなんですが、つい反射的に文庫版をあらためて買ってしまいました。やっぱ、あの見覚えのあるカヴァー絵を見ちゃうとね……放課後の図書室、気づけば自分1人だけになっていて、忍びよる夜の影におびえながら帰り道についた風景を体感で思い出しちゃうわけです。
ポプラ社版に限らず、私は常に大乱歩の諸作をかたわらにおきながら多感な時期を過ごしてきました。こうして乱歩に関することを語っている以上、思春期をとうにすぎた今もなおその魔力に取り憑かれているのは間違いありませんわな。
そして、乱歩作品の神髄たる文章本体の魅力は当たり前すぎるのでたたえるのはやめておくとして、今回はそれらの作品に足をふみいれるための「扉」となる「カヴァー絵」について語っておきたいのですが……
やっぱり、今現在、特に注目してその動向を見守りたいのは、「角川ホラー文庫」内の「江戸川乱歩ベストセレクション」シリーズですね!
昨今、人気のある漫画家さんが有名な文豪の名作の文庫本カヴァー絵を担当するという企画がはやっているようなんですが、私が感じた印象としては、小説の内容と漫画家さんの描きたいものの主張がなんだか一致していないコラボレーションがほとんどのようです。中には、「あなた、それちゃんと読みました?」と聞きたくなるようなカヴァー絵も少なからずあります。まぁ、殺人的に忙しい人気漫画家に依頼すること自体が不思議な企画だと思うんですが。
ただ、そんな中でも異彩をはなっているのが、『魍魎戦記MADARA』や『多重人格探偵サイコ』でおなじみ、「こえぇ~美人」を描かせたら他の追随を許さない漫画家でイラストレイターの田島昭宇(しょうう)がカヴァー絵を手がける角川ホラー文庫版の乱歩シリーズなんです。
現時点では『人間椅子』から『蜘蛛男』まで、とりあえず必読な8作品がリリースされているんですが……いい感じですねぇ! 田島先生のドライな世界がうまく乱歩ワールドとあっています。
江戸川乱歩と聞くと、血なまぐさい殺人やらドロドロした生身のエロティシズムというしめっぽい印象を想起される方も多いかと思うんですが、実はあくまでもしめっぽいのは登場人物たちのやっていることだけで、それを見つめて文章にしている乱歩本人の筆や、乱歩に近い立ち位置の明智小五郎はきわめて冷静、まるでよく磨き抜かれた大理石のよう、澄んだ瞳で顕微鏡を静かにのぞく科学者のようなドライさがあるんです。そこが大乱歩のすごいとこなんだ! だからこそ、「少年探偵団」シリーズのような、マニアじゃない人でも楽しめるエンタテインメントも書けるのねぇ。
田島先生、なかなかいですよ! ぜひとも書店で確認していただきたいのですが、私としては中でも『陰獣』と『蜘蛛男』のカヴァー絵が好きです。いくら見ても見飽きない魔力があります。あと、『陰獣』のカヴァー絵はホラ、私、女の人の骨盤が好きだから。
いいです。田島先生と角川書店さんには8作といわず、どんどんこのシリーズの新作を発刊していってもらいたいですね。
そういえば、いろんな出版社から数多くの文庫本がリリースされてきた江戸川乱歩ワールドなんですが、角川書店は「カヴァー絵」という点で注目すべきポイントがあります。
どちらもとうの昔に絶版になってしまっているんですが、これまで角川文庫では、1970年代に切り絵画家の宮田雅之、1980年代に漫画家の高橋葉介(ようすけ)がカヴァー絵を担当するシリーズ各20作が発行されていました。
どっちもいいんだよなぁ! 今でもたま~に古本屋で見かけることがあるんですが、両先生ともいい! 何がいいって、お2人とも女の人の裸を描くのがうまいのなんのって。あきれた眼で私を見ないで! ほんとに美しいんだから。なんか、画集とかの形で出ないかなぁ。
余談ですが、田島昭宇先生は高橋葉介先生のお弟子さんにあたるそうです。師匠をついでまずは20作、よろしくお願いしま~っす!
さてさて、「江戸川乱歩のカヴァー絵」といえば忘れていけないのが、春陽堂書店が自信を持ってお送りする春陽堂文庫版「江戸川乱歩文庫」全30作。
これ、ほんとにすごいです……まだ見てない人、おっきな本屋さんに行って表紙を見てみてください。まぁ、背表紙からして黒地に真っ赤なタイトル文字というドギツさなんですが。
もう、どれが特に好きだとか、言えません。とにかくものすごい。
全てのカヴァー絵を手がけているのは、銅版画家の多賀新(しん)。もともと独立した作品として制作されていたものが江戸川乱歩の文庫本リリースにともない表紙に採用されたというかたちなんですが……乱歩作品の内容に見事なまでに一致しているこの奇跡。
細密画のように繊細に描かれた、具体的に何なのかが判然としない物体と線が交錯し、全体を眺めてみるとなにやら人体のように見えてくる宇宙。
よく見ると、「あれ? これ、ちんちん?」「と、いうことは、これは……キャー!」
おそろしいです。中学時代に注文でこの春陽堂文庫版をはじめて買った時(当時、田舎の本屋じゃなかなか流通していなかった。たしか『陰獣』でした。あらためて見るとタイトルもすげぇ!)、本気で机の奥にかくしていました。いやいや、親兄弟のいる家の本棚には置けないでしょ!
すげぇよ……今まで紹介した角川文庫版のお3方の描く世界からは少なくとも人間の体温のようなものが感じられるんですが、多賀ワールドには、なし! ただひたすら、死体のようにつめたい氷の世界が広がっているといったふぜいなんですね。
1980年代に刊行されて以来、現在にいたるまで重版がかさねられているこのシリーズですが、つい最近までは多賀先生のカヴァー絵に採用された作品だけを1冊にまとめた画集も発売されていたとか。中古でもなんでもいいから、なんとかして手に入れたいっ!
繰り返しますが、まだ見てない方、ぜひとも調べて見てみてください。エロいグロいとかいう次元じゃないスゴみがあります。
さぁ、このように偉大すぎる先輩のいる「江戸川乱歩の小説のカヴァー絵」界に飛び込んだルーキー・田島! これからどんな作品をくりだして巨人・多賀にいどんでいくのか? 期待に胸がふくらむばかりの私なのでした。頼むから、8作まででうちどめって仕打ちだけはカンベンしてね、角川書店さーん!!
今日、本屋さんで文庫本を1冊買いました。
タイトルは、『電人M』! あのポプラ社版・江戸川乱歩の「少年探偵団」文庫シリーズのひとつ!
いや~、文庫になってるんですよねぇ、「少年探偵団」。2008年から2009年にかけて、日本を代表する名探偵・明智小五郎ひきいる少年探偵団が活躍する作品全26冊が文庫化されていたんです。
いいなぁ、こういうのは。いたいけな小学生だった時分、図書館でボロッボロになったシリーズを他の子たちと争うように読み、家に帰ってからも親にせがんで新品を買ってもらって寝る瞬間まで読んでいたわたくしです。
もちろん、その時手に取っていた、子どもにとっては充分な重量のあるハードカヴァー版というかたちにも思い入れがあるのですが、この新しい文庫版はその味わいをちゃんと継承しています。
だって、柳瀬茂さんほかのオリジナルイラストをすべて復刻させているんですから! 表紙は当然ながら、文中イラストまでしっかりと。
いいよなぁ~。いいよなぁ~。思わず志村けんの「いいよなおじさん」のごとく「いいよなぁ~」を連発してしまいます。
江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズは、1936年の第1作『怪人二十面相』から1962年の最終作『黄金の怪獣』まで、28作品が発表されました。
だいたいが、明智小五郎の助手である天才少年・小林芳雄をリーダーとする少年探偵団が、日本中をさわがせる怪盗・怪人二十面相を追いかける、盗んでは取り返され、捕まえては逃げられるという犯罪活劇の繰り返しとなっています。その点がマンネリといっちゃあマンネリで、二十面相も、なんか脳に障害でもあるんじゃないの?と読んでいて心配になってしまうくらいに、毎回似たような手で逮捕されてしまいます。たぶん、アレなんだろうな。明智と二十面相はほんとは裏表同一人物みたいな、『アンパンマン』的な、『ダークナイト』的な光と影の果てしないバトルみたいなモンのはしりなんじゃないですかね。
作品の内容は、まさに昭和の戦前から戦後中期までの東京近辺を舞台にしたものが多く、平成に入る直前の昭和末期に読んでいた私にとっても古色蒼然に感じる描写はありましたが、それでもね、夕暮れ時にドキドキしながら同い年くらいの子どもがあやしい人物を追跡していくくだりには、身に迫るスリルをおぼえたものです。
当然ながら『電人M』も何回か読んでいるはずなんですが、つい反射的に文庫版をあらためて買ってしまいました。やっぱ、あの見覚えのあるカヴァー絵を見ちゃうとね……放課後の図書室、気づけば自分1人だけになっていて、忍びよる夜の影におびえながら帰り道についた風景を体感で思い出しちゃうわけです。
ポプラ社版に限らず、私は常に大乱歩の諸作をかたわらにおきながら多感な時期を過ごしてきました。こうして乱歩に関することを語っている以上、思春期をとうにすぎた今もなおその魔力に取り憑かれているのは間違いありませんわな。
そして、乱歩作品の神髄たる文章本体の魅力は当たり前すぎるのでたたえるのはやめておくとして、今回はそれらの作品に足をふみいれるための「扉」となる「カヴァー絵」について語っておきたいのですが……
やっぱり、今現在、特に注目してその動向を見守りたいのは、「角川ホラー文庫」内の「江戸川乱歩ベストセレクション」シリーズですね!
昨今、人気のある漫画家さんが有名な文豪の名作の文庫本カヴァー絵を担当するという企画がはやっているようなんですが、私が感じた印象としては、小説の内容と漫画家さんの描きたいものの主張がなんだか一致していないコラボレーションがほとんどのようです。中には、「あなた、それちゃんと読みました?」と聞きたくなるようなカヴァー絵も少なからずあります。まぁ、殺人的に忙しい人気漫画家に依頼すること自体が不思議な企画だと思うんですが。
ただ、そんな中でも異彩をはなっているのが、『魍魎戦記MADARA』や『多重人格探偵サイコ』でおなじみ、「こえぇ~美人」を描かせたら他の追随を許さない漫画家でイラストレイターの田島昭宇(しょうう)がカヴァー絵を手がける角川ホラー文庫版の乱歩シリーズなんです。
現時点では『人間椅子』から『蜘蛛男』まで、とりあえず必読な8作品がリリースされているんですが……いい感じですねぇ! 田島先生のドライな世界がうまく乱歩ワールドとあっています。
江戸川乱歩と聞くと、血なまぐさい殺人やらドロドロした生身のエロティシズムというしめっぽい印象を想起される方も多いかと思うんですが、実はあくまでもしめっぽいのは登場人物たちのやっていることだけで、それを見つめて文章にしている乱歩本人の筆や、乱歩に近い立ち位置の明智小五郎はきわめて冷静、まるでよく磨き抜かれた大理石のよう、澄んだ瞳で顕微鏡を静かにのぞく科学者のようなドライさがあるんです。そこが大乱歩のすごいとこなんだ! だからこそ、「少年探偵団」シリーズのような、マニアじゃない人でも楽しめるエンタテインメントも書けるのねぇ。
田島先生、なかなかいですよ! ぜひとも書店で確認していただきたいのですが、私としては中でも『陰獣』と『蜘蛛男』のカヴァー絵が好きです。いくら見ても見飽きない魔力があります。あと、『陰獣』のカヴァー絵はホラ、私、女の人の骨盤が好きだから。
いいです。田島先生と角川書店さんには8作といわず、どんどんこのシリーズの新作を発刊していってもらいたいですね。
そういえば、いろんな出版社から数多くの文庫本がリリースされてきた江戸川乱歩ワールドなんですが、角川書店は「カヴァー絵」という点で注目すべきポイントがあります。
どちらもとうの昔に絶版になってしまっているんですが、これまで角川文庫では、1970年代に切り絵画家の宮田雅之、1980年代に漫画家の高橋葉介(ようすけ)がカヴァー絵を担当するシリーズ各20作が発行されていました。
どっちもいいんだよなぁ! 今でもたま~に古本屋で見かけることがあるんですが、両先生ともいい! 何がいいって、お2人とも女の人の裸を描くのがうまいのなんのって。あきれた眼で私を見ないで! ほんとに美しいんだから。なんか、画集とかの形で出ないかなぁ。
余談ですが、田島昭宇先生は高橋葉介先生のお弟子さんにあたるそうです。師匠をついでまずは20作、よろしくお願いしま~っす!
さてさて、「江戸川乱歩のカヴァー絵」といえば忘れていけないのが、春陽堂書店が自信を持ってお送りする春陽堂文庫版「江戸川乱歩文庫」全30作。
これ、ほんとにすごいです……まだ見てない人、おっきな本屋さんに行って表紙を見てみてください。まぁ、背表紙からして黒地に真っ赤なタイトル文字というドギツさなんですが。
もう、どれが特に好きだとか、言えません。とにかくものすごい。
全てのカヴァー絵を手がけているのは、銅版画家の多賀新(しん)。もともと独立した作品として制作されていたものが江戸川乱歩の文庫本リリースにともない表紙に採用されたというかたちなんですが……乱歩作品の内容に見事なまでに一致しているこの奇跡。
細密画のように繊細に描かれた、具体的に何なのかが判然としない物体と線が交錯し、全体を眺めてみるとなにやら人体のように見えてくる宇宙。
よく見ると、「あれ? これ、ちんちん?」「と、いうことは、これは……キャー!」
おそろしいです。中学時代に注文でこの春陽堂文庫版をはじめて買った時(当時、田舎の本屋じゃなかなか流通していなかった。たしか『陰獣』でした。あらためて見るとタイトルもすげぇ!)、本気で机の奥にかくしていました。いやいや、親兄弟のいる家の本棚には置けないでしょ!
すげぇよ……今まで紹介した角川文庫版のお3方の描く世界からは少なくとも人間の体温のようなものが感じられるんですが、多賀ワールドには、なし! ただひたすら、死体のようにつめたい氷の世界が広がっているといったふぜいなんですね。
1980年代に刊行されて以来、現在にいたるまで重版がかさねられているこのシリーズですが、つい最近までは多賀先生のカヴァー絵に採用された作品だけを1冊にまとめた画集も発売されていたとか。中古でもなんでもいいから、なんとかして手に入れたいっ!
繰り返しますが、まだ見てない方、ぜひとも調べて見てみてください。エロいグロいとかいう次元じゃないスゴみがあります。
さぁ、このように偉大すぎる先輩のいる「江戸川乱歩の小説のカヴァー絵」界に飛び込んだルーキー・田島! これからどんな作品をくりだして巨人・多賀にいどんでいくのか? 期待に胸がふくらむばかりの私なのでした。頼むから、8作まででうちどめって仕打ちだけはカンベンしてね、角川書店さーん!!
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