個人的に好きなアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の冒頭ナレーションは、
故「木村 幌(きむら・あきら)」氏のテノールがこう語り始める。
『無限に広がる大宇宙』
宇宙の大きさは、未だ解明されていない。
但し「ヒトが観測できる宇宙の大きさ」は分かっていて「137億光年」だという。
秒速30万kmで進む光が到達まで137億年かかる距離。
更に膨張を続けているらしい宇宙は、やはり無限と考えて差し障りないスケール感だ。
それだけ広い宇宙に星は幾つあるのだろう。
わが太陽系だけで、惑星・衛星・小天体が5000個程度。
太陽系を含む銀河系は、自ら光を発する恒星だけで2000億個あまり。
それぞれに5000が付属すると仮定して、概算1000兆個以上。
更に、宇宙には銀河系並みの集合体が数千億個あるとか。
何しろ膨大な星の海である。
どこかに「別の知的生命体」がいたとしても、不思議ではない。
もし「未知との遭遇」が成ったとしたら。
最初にコミュニケーションできるのは「ミュージシャン」と「ダンサー」かもしれない。
前者は楽器さえあれば、後者は己の身だけで、意志を伝えることができるのだから。
今回はその言語を超越した技のうち、舞踏にスポットを当て源流を辿ってみよう。
行先は、およそ5000年前のエジプトである。
ほんの手すさび 手慰み。
不定期イラスト連載 第二百四十三弾「ナイルの踊り子」。
アフリカ北部、ナイル川の下流域。
古代エジプトは、紀元前3世紀に成立した人類最初期の王政国家。
以来3000年近く、代替わりと政権交代を繰り返し30以上の王朝が続いた。
その間、大ピラミッドを建造した測量技術や幾何学。
青銅(銅×錫)を用いた道具類と金属加工。
ミイラ加工にも応用された医療技術。
ナイル川の氾濫周期を予測するための太陽暦。
組織だった大規模灌漑農法に土木工法。
象形文字(ヒエログリフ)とそれを簡略化した書き文字(ヒエラティック)。
Paperの語源になったパピルス紙。
--- 等々、高度な文明を築いたのはご存じのとおり。
そんな古代エジプトに生きる人々にとって、踊りは生活に欠かせない行為。
理由の1つは、それが「宗教的儀式」だったから。
美しい肉体と美しい動き--- 言語を介さない表現方法を用い、
見えない神々を称え、死者の魂に語りかけたのだ。
やがて時代が下ると別の意味合いがプラス。
「娯楽」である。
古代エジプトは食文化も豊かだった。
「エジプトはナイルの賜物(たまもの)」と言われるように、
全長6690kmの大河がもたらす肥沃な土地からは、多様な農産物が収穫できた。
富裕層はテーブルに各種のパン、家畜肉類、魚介、果物、ビール・ワインなどを並べ、
盛大なパーティーを頻繁に開催。
その場所に欠かせないキャストが、楽士と踊り子。
双方の担い手は殆どが女性。
彼女たちは神殿や葬祭殿に所属する、いわばプロ芸能集団である。
監督の元に統率され、冠婚葬祭、宴席でエンターテイメントを提供した。
残された彫刻・浮彫・彫像、壁画などに視る踊り子の露出度は押し並べて高い。
それが演出の一環なのか、何らかの意図があるのか。
どんな曲をバックに、どんなダンスをしていたのか定かではない。
だが、150年程前にフランスで出版された小説にこんな一節がある。
<果ては両膝を開いて、腹踊りを踊るエジプトの舞姫のように
絶えず身体を細かく震わせながら、左右に揺すり、
上体を腰の上で廻わすという奇妙な遊びにふけり出した>
(※「エミール・ゾラ」著/「ナナ」より引用抜粋)
ここで言う「腹踊り」とは「ベリーダンス」のこと。
優雅でセクシー、官能美を特徴とするこの踊りも。
また、フラメンコをはじめ地中海地域に伝わる様々な伝統舞踊も。
起源を辿れば古代エジプトに行き着くとか。
遥か昔、ナイルの畔で生まれ育まれてきたダンスの遺伝子は所作となって語り継がれている。
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