きのう投稿の続篇、新潟県・上越市の旅その2。
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その施設は、上越市街地の中心部「高田城址公園」の一角にある。
市立「高田図書館」に併設した「小川未明(おがわ・みめい)文学館」が、
旅2日目のハイライトだ。
残念ながら内部は撮影禁止のため、展示物の画像はない。
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「小川未明」は、上越市高田出身の小説家・童話作家。
明治15年(1882年)旧・高田藩士の家に生まれた。
高校(当時は尋常中学校)までを郷里で過ごし、上京。
早稲田大学在学中に、文筆の師「坪内逍遥(つぼうち・しょうよう)」から
「未明」の号をもらい、小説家としてデビューした。
卒業後、雑誌『少年文庫』の編集にたずさわり、童話も書くようになる。
大正15年/昭和元年(1926年)、小説の筆を折り童話に専念。
79歳で死去するまで、生涯に1200点以上の童話を創作した。
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僕が作家の存在を意識したのは、つい先日、今年1月。
偶然「あやかしラヂオ」というNHKのラジオ番組を聴いたのがキッカケだった。
そのプログラムで取り上げられたのが「小川未明」作「金の輪」。
あらすじを紹介したい。
【まだ春には早い3月の日中のことであります。
病気がちの子「太郎」は、輪回しに興じる一人の少年を見かけました。
少年が回す2つの輪は金色に輝き、触れ合う度に鈴のような音がしました。
「太郎」の前を通り過ぎるとき、彼は懐かし気に微笑み、
白い路の彼方へ消えてゆきました。
次の日も、同じ時間、同じ場所で少年を見かけた「太郎」は夢をみました。
少年に金の輪を1つ分けてもらい、一緒に走るうち夕暮れの中に溶けてゆく夢を。
明くる日から「太郎」はまた熱を出し、二、三日目に七つで亡くなりました。】
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(※画像リーフレットの写真は、少年時代の未明)
突然の「死」がもたらす呆気ない幕切れ。
童話にありがちな「末永く幸せに暮らしましたとさ」とは真逆の結び。
--- “その作風は雪深い上越の気候によって育まれたのではないだろうか”
前述のラジオ番組でそう評されているのを聴き、僕は「小川未明」に興味を抱いた。
果たして彼の作品を開いてみると、人が死ぬ、草木が枯れる、町が滅びる。
ネガティブなテーマによる畏れと刺激に満ち、実に読み応えがあった。
ペンネームの「未明」は、夜明け前。
まるで仄暗い淵を覗き込んだような文体にピッタリである。
もう一つ代表作のあらすじを紹介したい。
「小川未明」作「赤い蝋燭と人魚」。
【暗く冷たい北の海、身重の人魚が寂しく暮らしておりました。
生まれてくる子には寂しい思いをして欲しくないと考えた彼女は、
陸の人里にわが子を産み落としたのであります。
蠟燭屋の老夫婦に拾われ、たいそう美しく成長した娘は、
蠟燭に赤い絵の具で貝や魚を描くようになりました。
これが評判を呼び買い求める客が後を絶ちません。
その中に一人の「香具師(やし)」がおりました。
香具師は老夫婦をたぶらかし、娘を買い取り南の国へ連れてゆくことに。
思い出にと娘が遺していったのは、赤い蝋燭が二、三本。
真っ暗な雨が降る晩、赤い蝋燭の灯が波間に漂うと、
海は荒れ狂い、船にも里にも災難をもたらしたのであります。】
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上越北部、作品の舞台と思われる直江津(なおえつ)の公園には、
伏し目がちで哀愁漂う人魚のブロンズ像が佇み、日本海を見詰めている。
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