
民主党が12日、参院選選挙区で最後の空白区となっていた石川選挙区で元衆院議員の公認を発表し、全47選挙区で自民、民主両党の対決の構図が固まった。両党はともに改選数1の「1人区」が主戦場とみて、最重視する方針だ。自民党は安倍晋三首相が16日、自民、民主の激戦が予想される1人区の佐賀、長崎両県に入るほか、民主党の小沢一郎代表も3巡目の1人区行脚で組織固めを続ける。年金支給漏れ問題でも与野党の論戦が活発化しており、過半数をめぐる攻防は激しさを増している。
◆「自民現職VS民主新人」
参院自民党を束ねる青木幹雄議員会長が、1人区のうち20議席以上という高い目標を掲げているのは1人区攻防が「天下分け目」という認識からだ。民主の小沢代表も12日の金沢市での会見で「1人区が参院選全体の勝敗を左右する」と強調、過半数の15議席以上を目指している。
1人区の両党の対決構図を見ると、最も多いのは「自民現職」対「民主新人」(民主は他党の推薦も含む)で、青森、岡山、鹿児島など18選挙区で、前回04年参院選の14選挙区より4選挙区増えている。
四国4県はすべてこの構図だ。香川では、自民は5選を目指す現職を擁立したが、高齢批判などから公認決定が昨年末にずれ込んだ。県連幹部は「出足でつまずいた」と挽回(ばんかい)に必死。民主は「04年参院選も約7000票差まで迫った。今回は射程圏内だ」(選対幹部)と期待をかける。
◆「新人同士」
両党の新人同士が争うのは山形や佐賀、長崎など6選挙区。民主は小沢氏が代表就任後間もない昨年5月、1人区行脚を山形から始めるなど特に力を入れてきた。民主党が先月、山形で行った独自調査では自民候補とは小差。県連幹部は「その後の年金問題で、はっきり手応えが出てきた」と追い上げに自信をみせている。
長崎では自民現職が引退を表明。自民は地元選出の久間章生防衛相を中心に、県内で抜群の知名度を誇る県立高サッカー部の前総監督を擁立。自民、民主ともに新人同士の戦いとなっている。
ただ、長崎、佐賀などの往年の自民党の金城湯池も、構造改革による公共事業の削減や市町村合併によって、「集票マシン」だった建設業者や地方議員の機能不全が指摘されている。自民は、長崎では組織票だけでは乗り切れないと判断し、無党派層もにらんで知名度の高い候補の擁立に踏み切った。ただ、党の独自調査で「7割前後が態度未定」と報告され、党本部では「組織が動いていない証拠」とみて引き締めに躍起だ。
岩手と三重では民主現職が自民新人と争う。岩手は小沢氏、三重は岡田克也民主党元代表の地元でもあり、選対幹部は「党のメンツにかけても負けられない」と力を入れる。民主は、社民との候補一本化を断念した大分で唯一公認・推薦を見送り、野党分裂選挙となった。【須藤孝、竹島一登】
毎日新聞 2007年6月12日 20時49分 (最終更新時間 6月13日 0時12分)