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国会論戦―説得力の競い合いだ
「税金のムダ遣いの一掃は、民主党中心の政府ならできる」
「言葉が踊るだけでは何も変わらない。政治は行動であり、結果だ」
通常国会の論戦が幕を開けた。代表質問のトップバッターに立った民主党の鳩山由紀夫幹事長が早速、衆院の解散・総選挙を迫る。福田首相は国民生活の安定と政治の責任を語ってこれを退けた。
この対決構図を基本に、今後の論戦が繰り広げられていく。
鳩山氏は、質問のかなりの部分を費やして、民主党が政権をとれば実現する政策を説明した。政府・与党からは自民党の伊吹文明幹事長が、財源がさだかでないと民主党の無責任さを非難した。
国民に対してどちらが説得力を持つか、これからの予算委員会などでの応酬で競い合うことになる。政権交代の可能性をはらんだ2大政党時代の、あるべき論戦の姿ではないか。
鳩山氏は、ガソリンにかかる暫定税率の廃止を主張の中心に据えた。では、2兆6000億円もの税収がなくなる後をどう手当てするのか。民主党2番手の質問者、古川元久党税調副会長は税金の無駄遣いなどをやめれば、必要な道路はつくれると訴えた。
であれば、民主党がやるべきことははっきりしている。今後の委員会審議などを通じて、具体的に政府の税金の無駄遣いを明らかにしていくことだ。財政事情が逼迫(ひっぱく)するなかで、真に必要な道路とは何かの議論を詰めることも必要だ。
それによって自らの政策の妥当性を訴える。官僚機構を抱える政府・与党を相手に簡単ではないが、政権をとるために越えなければならないハードルだ。
古川氏は、特定の業界などを税の面で優遇する租税特別措置についても見直しを主張した。これは形を変えた補助金のようなものだ。優遇する理由や効果はあるのか、既得権益になっていないか、一つひとつ洗い出すという姿勢は歓迎だ。
こうしたことを解明するためにこそ、国政調査権を生かしてもらいたい。政府側もデータの開示に積極的に応じるべきだ。そのうえで、国民の暮らしや活力ある経済のためにどちらの主張に理があるかを論じ合うのだ。
歩み寄れる部分があれば、修正を話し合えばいい。政策協議の土俵を敬遠しては、国民の信頼は得られない。
衆参で多数派が異なるという新しい政治状況下での予算審議である。政府・与党は「原案のままで年度内成立」というこれまでの常識にこだわるべきではない。場合によっては、予算案の一部組み替えもあっていいはずだ。
一方、民主党にも注文がある。議論を始める前から、予算案や関連法案について「年度内成立はさせない」との発言が聞こえてくるのはいかがなものか。
衆院解散に追い込むための国会戦術はわからないではない。だが、真正面からの論戦を避けては有権者は共感しまい。
<<<<<<<読売>>>>>>>
代表質問 民主党の主張に疑問は尽きない(1月22日付・読売社説)
揮発油税などの暫定税率の維持の是非は、国民生活や、国と地方の財政に直結する重要問題だ。ガソリン値下げという一時のムードに流されない、中長期的な視点が必要である。
福田首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が始まった。与野党の最大の争点は、暫定税率問題である。
民主党の鳩山幹事長は、暫定税率について「34年前に導入され、そのまま既得権益化している」と批判し、廃止を強く要求した。
福田首相は、国と地方の道路財源確保や受益者負担、地球温暖化対策の観点から税率の維持が必要だ、と反論した。自民党の伊吹幹事長も、暫定税率廃止に伴う2兆6000億円の歳入減を補う財源対策が不明確だ、と指摘した。
民主党が主張する「道路特定財源の一般財源化」は、道路整備事業を見直すうえで必要な措置だ。政府が30年以上も暫定税率を本則に改めなかったことも、怠慢のそしりを免れないだろう。
しかし、暫定税率廃止分の財源に関する民主党の説明はあいまいで、つじつまが合わない。廃止すれば、地方の道路整備の水準を維持できるわけがない。
民主党は、国が直轄する公共事業に対する1兆円の地方負担金を廃止し、地方の減収分を補う、と説明する。これでは、単なる国へのつけ回しだ。
2兆6000億円もの減収は、道路整備の効率化や「一定程度」の縮減だけで本当に埋まるのか。将来、揮発油税などに代えて導入するという「地球温暖化対策税」は、どの程度の規模になるのか。民主党の主張への疑問は尽きない。
民主党は「一部大都市を除く高速道路の無料化」まで約束している。鳩山幹事長はかつて代表時代に、「甘い水より苦い薬」と標榜(ひょうぼう)していた。民主党は今、次期衆院選に向けて、「甘い水」ばかりを振りまいているのではないか。
民主党は今国会に「租税特別措置透明化法案」を提出する。租税特別措置の利用実績などを個別に評価し、見直すという。それも大事な視点だろう。与野党で率直に議論してみてはどうか。
自衛隊の海外派遣に関して、鳩山幹事長は、「歴代自民党政権には確固たる基本原則がない」と批判した。そうであれば、恒久法制定の論議に参加し、「基本原則」について大いに論じればいい。
民主党の小沢代表は、今回も代表質問に立たなかった。先の臨時国会でも、新テロ対策特措法の衆院での再可決時に、選挙応援を優先し、採決を棄権した。
野党第1党の党首が国会審議を軽視しては、立法府の活性化は望めない。
(2008年1月22日01時43分 読売新聞)