発効は絶望的でも…TPP「対策」に消える血税は総額4兆円
安倍政権が9日の参院本会議で、TPP協定の国会承認と関連法成立にこぎつけた。トランプ米次期大統領の離脱表明で、発効が絶望的なのに、引くに引けない理由はバラマキ策。「TPP対策」と称する税金浪費にもブレーキをかけない方針だ。もはや協定は幻と化しそうなのに、各省庁ともベラボーな予算を要求しているからムチャクチャだ。安倍政権はTPP交渉が大筋合意した昨年10月以降、すでに合計1兆1906億円もの対策費を予算に計上した。15年度補正分の4875億円は執行済み。16年度当初と補正の7031億円は執行中だ。中にはし尿処理システムの国際事業(1600万円=環境省)、放送コンテンツの海外展開支援(27億6000万円=総務省)といったTPPとは直接の関係性が薄い予算もある。TPP問題に詳しいPARC(アジア太平洋資料センター)の内田聖子氏は首をかしげる。「加盟12カ国のうちオーストラリアと議会で批准したニュージーランドを調べましたが、TPP対策の予算は見つかりませんでした。まだ協定が発効していないのですから当然です。発効前に対策費を出すような馬鹿げた国は日本だけだと思います」それでも麻生財務相は日本国内では“先例”があると言い張る。8日の参院特別委で、2012年度に「ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)関連予算」が、条約の国会承認前に予算計上されたことを例に挙げたが、問題はその後だ。「12年11月に衆院が解散されて、承認は先送りになりました。もちろん1.1億円の予算は使いませんでしたよ」(外務省ハーグ条約室)
条約の承認前には関連予算に指一本触れさせなかった前例がありながら、TPPではお構いなし。霞が関ではお馴染みの「前例踏襲」の慣例を無視して、国会承認前に巨額の税金を投入。トランプが脱退を表明しても執行に“待った”をかけず、野放図に使い切ろうとしているのだ。
■ムダにムダを重ねる愚
その上、来年度予算案もTPPに絡めた事業ががめじろ押しになりそうだ。今年8月の概算要求後、内閣官房のTPP政府対策本部に各省庁から寄せられた来年度のTPP関連事業はこんな調子だ。
〈TPP協定での金融分野の自由化を受けて、金融機関の海外進出を支援する事業〉(1億8000万円=金融庁)
〈輸入食品増加に備えた食の安全の情報提供〉(1億2000万円=消費者庁)
〈TPPに関する理解促進・啓発〉(5000万円=外務省)
今さら理解を深めようなんて無意味でしかない。こんなあんばいで対策予算の要求はぶくぶくと膨れ上がり、実に合計2兆8063億円に上る(別表)。あくまで省庁の希望額とはいえ、これまでの執行予算と合わせれば、ナント4兆円規模に達してしまう。ただでさえ、関連性が疑われるムダな事業があるのに、発効が遠のく協定にさらに巨額の対策費をつぎ込むなんてムダにムダを重ねるようなもの。税金ムダ使いの“ミルフィーユ”なんて目も当てられない。「安倍政権は、TPP対策という名目で、参院選の票目当てとTPP反対を封じるバラマキを展開してきた。現にJAは組織としてのTPP反対をすでに引っ込めました。これだけ対策費を使ってしまった手前、日本が批准しないわけにはいかないので、強引に国会承認に突き進んだのでしょう。発効しなかったのは、他国のせい。不可抗力だと言うためです」(内田聖子氏)
今日もどこかでせっせと大金が使われている。
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