論戦ハイライト
(写真)安倍首相らに質問する小池晃書記局長(右端)=2日、参院予算委
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-03-03/2018030303_01_1.html
裁量労働制 先送りやめ きっぱり断念を
小池書記局長が追及 参院予算委
日本共産党の小池晃書記局長は2日の参院予算委員会で、森友学園疑惑、裁量労働制と「残業代ゼロ制度」、「攻撃型空母」の保有問題を取り上げて、安倍政権の姿勢をただしました。
残業代ゼロ 年6000時間も違法にならず
加藤厚労相「労働時間規制する規定ない」
小池氏は、安倍晋三首相が「法案の大きな柱の一つ」としてきた裁量労働制の対象拡大を法案から切り離した問題を追及しました。
小池 偽りの答弁を3年も繰り返してきた。総理の責任は重大だ。
安倍首相 私の答弁を撤回し、おわびした。データは厚労省で精査する。
自らの責任にふれない安倍首相に対し、小池氏は「首相の責任を明らかにしないと前に進めない」と批判しました。
小池氏は、高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)の導入について、「裁量労働制と根は同じで、さらに危険が大きい」と指摘。裁量制では残業の三六協定の締結と割増賃金の支払い、休日・深夜労働で割増賃金の支払いが必要になります。小池氏が「残業代ゼロ制度ではどうなるか」とただすと、山越敬一労働基準局長は、いずれも「適用されない」として、長時間労働に歯止めがないことを認めました。
小池氏は「残業代ゼロ制度は、年次有給休暇以外の労働時間規制をすべて適用除外するもので、異次元の危険性がある」と告発し、迫りました。
小池 法律上104日休めば、年間6000時間を超える労働をしても違法にならない。
加藤勝信厚労相 それ自体を規制する規定はない。
小池氏は、「実際に過労死が起きている。それを止める仕組みが労働基準法だ。こんなことでは労働者を守れない」と批判。安倍首相は「これからつくるので問題が起きているわけではない」と弁明しました。
小池氏は、経団連の榊原定征会長が年収要件1075万円以上の緩和を求めていると指摘。「残業代を含めて1075万円を超える人は、残業代ゼロ制度の対象になるか」と聞くと、加藤厚労相は、「残業代を含め1100万の方が高プロに変わり、1100万払うのなら(要件を)クリアする。800万円なら対象外」と述べ、適用のさいの年収に残業代も含まれると認めました。
残業代ゼロ制度や裁量制について、安倍首相が「自律的な働き方」と語っていることについて、小池氏は「自らの裁量で決定できるのは、業務の遂行手段、時間配分だけだ。業務量は自ら決定できない」と指摘。加藤厚労相は「使用者から与えられる業務量は、働き手が裁量的に決められるものではない」と認めました。
裁量制
実労働時間を把握せず
加藤氏「データは白紙に、新たに調査」
小池氏は、裁量労働制を導入しているトヨタ自動車の実態を示しました。
2016年10月からの半年間、みなし労働1日9時間の対象者は370人。うち、限度を超えた長時間労働のため裁量制の適用除外になったのが11人、健康診断を受けるなど健康に懸念を感じる人が309人、8割にも上ります。残業の最大は企画業務型で月95・4時間、専門業務型で月100・5時間。「過労死ライン」を超えています。
小池 自律的に働けるような環境ではない。先送りでなく、きっぱり撤回すべきだ。
首相 裁量労働制については法案から削除した。厚労省で現状を把握した上で判断していく。
裁量制に関しては、安倍首相の「裁量制の方が労働時間が短い」とする答弁の基となった「労働時間等総合実態調査」にデータの誤りが次々と見つかり、安倍首相は答弁撤回に追い込まれました。
小池氏は「答弁だけでなくデータも撤回せよ」と要求。安倍首相は「精査して判断したい」と撤回を拒否しました。
小池氏は「そのデータは精査に耐えるものなのか」として、データにある「平均的な者」とはどういう定義なのか、実労働時間を調べたのかと質問。厚労省の山越敬一労働基準局長は、調査は使用者による報告で「必ずしも実労働時間と一致しない」と答弁、実態を反映していないことを認めました。
小池 裁量労働制は労働時間を把握しなくていいから調査もできない。調査のやり方から考え直さない限り、実態はつかめない。
首相 実態把握は、小池委員も指摘されたように、今までの調査の仕方でいいのかも含め、考える。
厚労相 (データは)白紙とし、新たな調査を実施する。
加藤厚労相がデータを事実上撤回することを表明したことで、裁量制と残業代ゼロの前提が崩れました。小池氏は「労働者を対象とした調査を行うべきだ」と強調しました。
小池氏「強引な決定、首相の責任」
小池氏は、裁量労働制が一般労働者より労働時間が長いことを示す労働政策研究・研修機構(JILPT)のデータが労政審に示されなかった問題を追及しました。
安倍首相が議長をつとめる産業競争力会議で、2013年に決定した「日本再興戦略」では裁量労働制の拡大などが盛り込まれ、それを受けて開かれた労政審分科会で「実労働時間を調査する」と説明されていました。
しかし、JILPTの調査結果は関係機関に報告されず、14年6月の「日本再興戦略」では、次期通常国会に「残業代ゼロ制度」とともに法案提出が決められました。
小池氏は、当時の厚労省課長が「2014年の日本再興戦略で1回リセットになった」「JILPTの非常に貴重な調査を使えなかった」と語ったことを指摘し、こう迫りました。
小池 今回の事態は、安倍首相による強引な政策変更、政策決定の圧力の中で起きた。首相自身の責任は極めて重大だ。
首相 提案はしたが、労働者の代表も入る労政審で判断している。
安倍首相は、ここでも言い訳に終始し、みずからの責任を認めませんでした。
小池氏は、今日の事態を招いたのは、裁量制では「みなし労働時間制」のため労働時間を把握する仕組みがないからだと指摘。「労基法には、職場全員の労働時間の客観的な把握・管理を義務づける規定はあるか」と追及すると、山越局長は、すべての労働者が対象ではないと認めました。
小池氏は、労働基準監督官へのアンケートで、労働時間規制の最も有効な対策は「実労働時間の把握義務の法定化」だと指摘。「すべての労働者の労働時間管理簿を法律で義務づけることが必要だ」と強調。安倍首相は、「実労働時間を把握し、管理することは健康確保の観点から大変重要」と答えました。
小池氏は、週15時間、月45時間、年間360時間を例外のない残業時間の上限として法令化し、連続11時間のインターバル規制の導入が必要だと求めました。
「いずも」でF35Bの運用を検討
小池氏質問で明らかに
憲法9条改定で海外での制約なき戦争へ向かう危険
国の在り方変える重大答弁
小野寺五典防衛相は、小池氏の追及に対して、海上自衛隊最大の艦船であるヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」で、対地攻撃を主任務とするステルス戦闘機F35Bの運用に関する調査・研究を行っていることを初めて明らかにしました。政府は従来、「攻撃的兵器」の保有は憲法上できないとしてきました。その例として、多数の対地攻撃機を主力とする「攻撃型空母」をあげています。
これに照らせば、「いずも」でのF35Bの運用は憲法9条違反となります。小池氏は、政府が「いずも」の空母化を検討し、F35Bの導入を検討しているという報道が相次いでいることに言及。小野寺防衛相が2月8日の衆院予算委員会で、「いずも」に艦載する「新種航空機」を研究していると答弁したことにふれ、見解をただしました。
小池 大臣の念頭にある「新種航空機」のなかにF35Bは含まれるのか。
小野寺防衛相 短距離離陸、垂直着陸機の代表例としてF35Bを調査している。
安倍晋三首相 さまざまな検討は当然だ。危機が生じてから装備を導入しようというのはまさに泥縄式だ。
F35Bの「いずも」への導入の検討を認めた発言に小池氏は「根本的なこの国の在り方を変えるということを検討していることを認めた重大答弁だ」と批判しました。
強襲揚陸艦とほぼ同じ規模
小池氏は、11年からF35Bの離着陸訓練を開始し、1月には佐世保基地(長崎県)に配備された米軍の強襲揚陸艦「ワスプ」と「いずも」の概略図を示したパネル(図)を示し、両艦の規模がほぼ同じだと指摘。小野寺防衛相が14年7月、米海軍サンディエゴ基地を訪れ、最新鋭の強襲揚陸艦「マキンアイランド」を視察し「このような輸送艦について検討することを決めている」と述べたことに言及し認識をただしました。
小池 ワスプのような強襲揚陸艦であれば、憲法上保有は可能であるということか。
防衛相 ワスプが憲法に抵触する攻撃型空母に該当するかは、その時々の国際情勢を踏まえる必要がある。大規模災害対応や水陸両用作戦における能力向上を図れるのではないかと考え、視察した。
政府は“災害対応”を口実に強襲揚陸艦の保有を否定しませんでした。
しかし、強襲揚陸艦は海兵隊が敵地へ上陸する場合、兵員や物資を迅速に陸揚げするため、兵員、戦車、火砲などの上陸部隊、それを揚陸する舟艇やヘリコプター、さらには上空から援護する航空部隊をワンパッケージで運べる機能を持ち、海外遠征での「殴り込み部隊」の中心を担います。F35Bが導入されれば、海外で攻撃される前に敵国の基地を破壊する敵基地攻撃能力の保有が実現します。
また小池氏は、15年の安保法制に関わる質疑の際に入手した自衛隊のヘリ空母から米軍ヘリが給油や整備のため離着陸し対潜水艦戦を行う旨を記載した内部文書に言及しF35Bも自衛隊の空母を利用する危険をただしました。
米軍と一体の軍事行動展開
小池 この米軍ヘリがF35Bに置き換わっても、法制上は実施可能か。
防衛相 具体的に想定していないので、法制上可能かも答えられない。
小池氏は「『専守防衛』の建前さえ投げ捨てた。米軍と一体となった軍事行動を展開しようとしている」と批判。「戦争法を強行し、歯止めなく軍拡を進め、この上に憲法9条に自衛隊を書き込んでしまえば、何の制約もなく海外で戦争することになってしまう」と指摘し「9条改憲のための国会発議は絶対に許さない」と表明しました。