慰安婦財団、解散決定 韓国発表、日本は抗議
【ソウル=中村彰宏】韓国の女性家族省は二十一日、慰安婦問題を巡る日韓合意に基づいて設立した「和解・癒やし財団」を解散すると発表した。日本政府は韓国政府に抗議した。韓国人元徴用工の損害賠償訴訟で韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた判決に続き、日韓関係はさらに冷え込みそうだ。同省は解散のための法的手続きを進めると明らかにし、陳善美(チンソンミ)女性家族相は「被害者中心主義の原則の下、さまざまな意見を聞いた結果、財団を解散することにした。今後も元慰安婦の名誉、尊厳回復のため政策を進めることに最善を尽くす」との声明を出した。財団は、朴槿恵(パククネ)前政権時の二〇一五年末の日韓合意に基づき、韓国政府が一六年七月に設立。日本が拠出した十億円からこれまでに、合意当時に生存していた元慰安婦四十七人のうち三十四人に一億ウォン(約一千万円)ずつ、五十八人の遺族に二千万ウォン(約二百万円)ずつを支給した。しかし、一部の元慰安婦や世論の強い反発を受け、政権交代後の一七年末にはほとんどの理事が辞職を表明。活動は停止している。
文在寅(ムンジェイン)政権は「手続きや内容に重大な欠陥があった」として、日韓合意では慰安婦問題は未解決との立場。今年七月には、日本が拠出した十億円を韓国政府予算で置き換える措置を決めた。文氏は九月に安倍晋三首相と会談した際、財団の解散を示唆。今月に入って韓国側は解散の意向を日本政府に伝え、日韓関係への悪影響を懸念する日本政府は翻意を促していた。財団解散の法的手続きには六カ月以上かかるとみられ、韓国政府はその間に、日本が拠出した十億円の処理に関し日本側と協議したい考え。韓国メディアによると、支給済みを差し引いた残りの約五十八億ウォン(約五億八千万円)については、元慰安婦問題の歴史教育に活用することを検討している。