パレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルを急襲、イスラエル側が反撃して大規模戦闘に発展した。死者は双方で1500人を超えた。国際社会は事態を放置せず双方に自制を求め、即時停戦に向けて圧力を強めるべきだ。
戦闘開始は第4次中東戦争勃発から半世紀の節目でもあった。ユダヤ教の祝祭に続く安息日の7日早朝、ハマスの武装部隊がパレスチナ自治区ガザから数千発のロケット弾とともに越境した。
イスラエル市民数百人が犠牲となり、外国人らも百数十人が拉致された。イスラエル側が拘束する約5千人のパレスチナ人との「捕虜交換」のためとされる。イスラエルも報復でガザを空爆し、パレスチナ人が多数死亡した。
市民への攻撃は戦争犯罪だ。イスラエルはガザの完全封鎖を図る一方、ハマスは人質殺害を警告しており、一刻の猶予もない。国際社会は停戦と人質解放に向けて直ちに介入すべきだ。
ハマスのイスラエル急襲には伏線がある。昨年暮れのイスラエルでの極右政権発足後、イスラエル軍はパレスチナ自治区をたびたび攻撃。エルサレムのイスラム聖地にユダヤ人入植者らが侵入し、パレスチナ住民の怒りは沸騰した。
封鎖で「天井のない監獄」状態が続くガザの失業率は約5割に上る。住民の不満がガザを実効支配するハマスに向いたこともイスラエル急襲に踏み切った一因だ。
同時にイスラエルによる国際法違反の占領や入植地拡大、それを看過する国際社会の関心低下があることも指摘せざるを得ない。
アラブ世界でもパレスチナ問題は後景に退き、湾岸諸国などがイスラエルとの国交を開いた。
ハマスは、奪われたパレスチナ人の権利を回復する「パレスチナの大義」に立ち返る必要性を、アラブやイスラム圏の民衆に訴える狙いがあったのだろう。イスラエルと接近中のサウジアラビアがハマス批判を避けているのも、国民感情への配慮からに違いない。
イスラエルのネタニヤフ政権は攻撃を許した治安管理の失態と低迷する支持率回復のため報復攻撃の徹底を宣言した。さらなる暴力の連鎖を懸念せざるを得ない。
双方にパイプを持つトルコなどの仲介努力を国際社会が支える必要がある。パレスチナ和平を放置すれば中東安定に限らず国際平和も望めないことを肝に銘じたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます