飛騨の山猿マーベリック新聞

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◆脳梗塞で失語症の父をなんとかしたい…「an・an」元編集長が考案した「ドリル」とは

2021年12月12日 09時38分59秒 | ●YAMACHANの雑記帳
朝食などのシーンごとに見開きの絵があり、言葉を埋めていく。色を塗ったりしやすいように紙質にもこだわっている=東京都新宿区で

朝食などのシーンごとに見開きの絵があり、言葉を埋めていく。色を塗ったりしやすいように紙質にもこだわっている=東京都新宿区で

 女性誌「an・an」元編集長の能勢邦子さん(56)が、脳梗塞の後遺症で「話す」「読む」「書く」ことがうまくできなくなった父親と取り組んだ「言葉の練習」が本になった。父親のような失語症の患者のために考案した「ドリル」で、タイトルは「失語症からの言葉ノート」だ。家族でイラストを見ながら説明の言葉を考える。父親は半年間の練習で、日常会話に困らないほどに回復した。本では「言葉がつながる喜び」も伝えたいという。(西川正志)
 失語症は脳梗塞などで言語中枢が損傷して起きる。物事の概念は理解できても言葉にできない、書けないなど、コミュニケーション全般に支障がある障害だ。

◆1つの話題で、じっくり対話

 能勢さんの父邦之さん(86)は2019年3月、脳梗塞で倒れ、妻の名前も書けなくなった。能勢さんは医師に勧められ、父に小学生用の国語ドリルを渡した。「さる」「かき」などイラストを見ながら、ひらがなを熱心に書き込む姿を見て「大人なのに…」と複雑な気持ちになった。専門書には失語症の人は「話題が変わるのがストレス」とあった。関連性のない単語を埋めるトレーニングへの疑問が生まれた。
 そこで、1つの話題で、じっくり父と対話するように努めた。父が現役時代に転勤した地方の話を突然始めたときも「父の発想で出てくる話題を大切にした」。朝食にリンゴを出した時は「好き? 嫌い?」から始め、産地の話題へと広げた。半年後、父は日常会話に困らなくなった。

◆イラストでイメージ喚起

 先月出版した本では、こうした試行錯誤の成果を反映した。次のようなシーン別の問いや答えの書き込み欄に加え、イラストをふんだんに盛り込んだ。
 シーン①朝の食卓 何が食べたいですか?
 見開きのページに描かれたテーブルに、朝ご飯が準備されている。「()焼き」「()で食べる」「()の具は何が好き?」…。9カ所の空欄に入れる言葉を考える。下の解答例に「目玉」「箸」「味噌汁、おみおつけ」とあるが、これはあくまでも例である。
 目玉焼きじゃなくて「卵料理」と答えてもいい。そこから「目玉焼きとオムレツなら、どっちが好き?」「(しょうゆじゃなくて)私はソースをかけるよ」。能勢さんは、イラストを糸口に話題が広がる「コミュニケーションツール」になるのを期待する。
 ほかに「部屋の中」「風呂に入る」など10シーンがあり、さまざまな場面に想像を巡らせられる。
 今はフリーの能勢さんはマガジンハウスで30年間、編集者をしていた。言語聴覚士の助言を受けながら約2年で本を完成させた。

◆「発想が画期的」専門家も評価

 専門家も注目する。NPO法人日本失語症協議会の園田尚美理事長は「言語聴覚士が語彙を増やすことなどを目的に作った既存の問題集と違い、イラストを見て会話を広げていくという発想は画期的」と話す。
 「失語症からの言葉ノート」はA4判、60ページ。1650円。能勢さんのウェブサイト「コトコ」やアマゾンなどで購入できる。

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