細田博之衆院議長は立法府の長として適任なのか。国会が決めた衆院選の「一票の不平等」是正策を批判したり、議員歳費を少額と嘆いたり、その上、女性記者に対するセクハラ報道である。議長のみならず、国会議員の資質も疑わざるを得ない。
細田氏が一連の発言を撤回せず、セクハラ報道についても説明を拒んでいる以上、立憲民主党が議長不信任決議案を提出する方針を固めたのは当然だ。自民、公明の与党が数の力で決議案を否決すれば、細田氏の言動を容認することになると心得るべきだ。週刊文春は複数の女性記者の証言として、細田氏が深夜に電話で「今から来ないか」と自宅に呼んだり、メールで何回も食事に誘ったりしたと報じた。立民、日本維新の会、国民民主、共産の野党四党は、細田氏に議院運営委員会の理事会で事実関係を説明するよう求めたが、細田氏は同誌に「事実無根」と抗議した上で、国会閉会後に「訴訟も視野に検討したい」とのコメントを出したにとどまっている。議長が、国会質疑に取り上げられるような疑惑を持たれながら説明を避ければ、国会全体への信頼を損なう。十五日の会期末まで沈黙してやり過ごすなら、姑息(こそく)と言うほかない。この問題以前にも細田氏は資質を疑われる発言を重ねてきた。衆院選の「一票の不平等」を是正する議員定数の十増十減案を繰り返し批判し、自民党議員の政治資金パーティーでは、議員歳費を巡り「議長になっても毎月百万円しかない」「月給百万円未満の議員を多少増やしたって罰は当たらない」と主張した。自身も含めて国会が決めたことの否定は無責任極まりないし、月給百万円「しか」という感覚は特権意識の表れにほかならない。細田氏は各党代表者らとの会食で「お騒がせする発言は控える」と述べたとされるが、発言を公式に撤回したわけではない。衆院選挙制度の見直しに関する与野党協議会は、野党の反発で設置が遅れている。中立公正の立場で議会を運営すべき議長が各党協議を阻んでいるに等しい。異常な事態をただすのは、議長を選んだ衆院全体の責務である。
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