飛騨の山猿マーベリック新聞

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●<東京新聞社説>戦争と平和を考える 朝鮮半島の火種は今も

2022年05月02日 11時51分36秒 | ●YAMACHANの雑記帳
 ウクライナで続く戦争は、遠い国のことと感じられるのかもしれません。しかし、私たちのすぐ近くで、約七十年間終わらないままの戦争があります。朝鮮半島を舞台にした「朝鮮戦争」。軍事境界線を挟んでにらみ合う体制には、日本も深く組み込まれています。
 一九五〇年、北朝鮮の南侵で始まった戦闘で、朝鮮半島では民間人を含め数百万人が亡くなりました。戦闘は三年で終わりましたがあくまで休戦です。戦闘はいつ再開されるか分かりません。
 ウクライナのゼレンスキー大統領も、朝鮮半島が焦土と化した朝鮮戦争のことを知っていたようです。四月十一日、韓国国会での演説で、こう語りかけました。
 「一九五〇年代に、あなた方の自由を破壊しようとする者たちから攻撃されたことを覚えているはずです」「あなた方は耐え、世界はあなた方を助けた。今、私たちは同じことを望んでいる」
 自国の惨状を朝鮮戦争に重ね合わせ、支援を求める内容です。
 太平洋戦争の終結からわずか五年後、海を隔てて、日本のすぐ隣で発生した戦争を巡り、いったい何が起きていたのでしょうか。
 戦争が始まり、国連安全保障理事会は「国連軍」を組織することを決議しました。国連軍ができたのは歴史上この一回だけです。
 国連には本来、加盟国でつくる軍隊を紛争地帯に送り、平和を取り戻す任務があります。
 ところが、大国の利害が絡み合う安保理は国連軍どころか、今回のように、他国を侵略したロシアに対する非難決議さえ出せないのが現状です。
 朝鮮戦争で国連軍が組織できたのは、旧ソ連の安保理欠席という異例の事態があったからでした。国連軍の実態は、米軍を中心とした多国籍軍だったのです。

◆日本全土が出撃基地に

 連合国軍の占領下にあった日本では全土が米軍の出撃拠点となりました。日本からの出撃は約百万回、爆弾投下量は七十万トンに及んだとの記録もあります。
 日本国内では直接の戦闘は行われませんでしたが、米軍基地のある街ではたびたび空襲警報が鳴り響きました。戦争が終わったのになぜ空襲警報が鳴るのか、住民への説明はありませんでした。
 米軍基地で働いていた一部の日本人も戦地に送られ、銃を取りました。掃海活動では戦死者も出ています。銃弾、軍用トラックのほか、兵士が使う歯ブラシや輸血用血液まで日本から物資が続々と送られ、逆に、傷病兵が日本に送られ、治療を受けています。
 日本ではすでに戦争放棄を掲げた「日本国憲法」が施行され、一部を除き日本人が直接戦闘に参加することはありませんでした。

◆国連軍司令部、日本にも

 ただ、忘れてならないのは戦闘再開に備え、朝鮮国連軍が今も存続し、韓国には国連軍司令部があることです。あまり知られていませんが国連軍の後方司令部は横田飛行場(東京)に存在します。
 朝鮮国連軍地位協定に基づき横田、横須賀、普天間など日本国内の七基地が「国連軍基地」に指定され、国連旗がはためきます。朝鮮半島有事にはこれらの基地から軍用機や兵力が送られます。戦争の火種は消えていないのです。
 北朝鮮や中国は今、核兵器や長距離ミサイルを保有しています。朝鮮半島で再び戦火が交われば、在日米軍基地も攻撃対象となり、その周辺の地域も安全とは言えなくなります。
 核兵器廃絶を訴えるペリー元米国防長官は「未来を読む」(PHP新書)で、「核兵器を使えば、一日で北朝鮮を破壊できるでしょう。しかし、アメリカは東京やソウルに北朝鮮の核ミサイルが撃たれるのを防ぐことはできません」「何百万人もの死傷者が韓国や日本に出る」と警告します。
 北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍備拡張、そしてロシアのウクライナ侵攻を機に、日本では敵基地攻撃能力の保有や防衛費の増額、米軍との核兵器共同管理を巡る議論が活発になっています。
 二〇一五年には安全保障関連法が成立し、集団的自衛権も行使できるようになりました。もちろん国家として自衛の努力は大切ですが、休戦中の戦争に再び火がつけば、日本も間違いなく巨大な損害を被ります。軍備増強よりも戦争が起きない世界をどうつくるのか。北東アジアに残る緊張と対立の芽を摘むことこそが最優先課題なのです。

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