石破茂首相の所信表明演説に対する各党代表質問が始まった。首相は27日投開票の衆院選で最大の争点となる「政治とカネ」を巡り答弁書を読み上げる場面が目立ち、有権者に十分な判断材料を示したとは言い難い。
首相は裏金議員の一部を公認しない方針を表明したものの、立憲民主党の野田佳彦代表は「大半が公認される。国民の理解を得られるのか」と追及。首相は非公認が何人になるか「現時点では確定していない」と述べるにとどめた。
国民の多くは裏金づくりを脱税と受け止め、党内処分が一部にとどまったことに不公正との怒りを抱く。自ら制定した法律に反する国会議員が今なお在職していること自体が不条理に映る。
首相は、裏金議員の一部を非公認とすることで、旧安倍派議員らの反発に強い姿勢を示したつもりかもしれないが、内向きの理屈に過ぎない。裏金議員は全員非公認とするのが当然ではないか。
自民党議員が裏金を原資に違法な香典を配った事件に続き、旧石破派でも政治資金パーティー収入の不記載が明らかになった。首相は就任時「新しい事実が判明すれば調査」と明言していたが、野党の再調査要求に慎重姿勢を崩さなかった。前言を翻すのか。
政治資金規正法再改正への決意も見えなかった。使途公開が不要な政策活動費の「将来的な廃止」には触れたが、自民党総裁選で複数の候補者が訴えた即時廃止に、なぜ踏み込めないのか。
野党が全廃を求めた企業・団体献金は「先の通常国会で見直しは行われなかった」と存続を容認した。自身が若手議員として加わった「平成の政治改革」で決まった廃止の方針を否定するなら、初心を忘れたというほかない。
首相は代表質問に先立ち「自分の言葉で語る」「衆院選の判断材料を誠心誠意、提供したい」と述べていたが、用意した答弁の繰り返しで論戦は緊張感を欠いた。
8日の参院代表質問、9日の党首討論後に衆院解散の予定だが、国民が投票で十分に判断できる材料が整うまで国会を解散せず、会期を延長して議論すべきである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます