自民党の「上級国民」ぶりがまたもあきらかになった。先週、松本純・自民党国対委員長代理の“深夜の銀座クラブ通い”が報じられた際、松本議員は「陳情を承るという立場で1人で行っている」などと釈明していたが、きょうになって、銀座のクラブには同じく自民党の田野瀬太道・文部科学副大臣と大塚高司・国会対策副委員長が同席していたことが判明したのだ。
緊急事態宣言下であるにもかかわらず、文科副大臣や国対幹部の男3人が仲良くつるんで深夜に銀座のクラブに繰り出す。その上、松本議員はよりにもよって国民への説明の場で「1人で行った」と嘘をついていたのである。
自民党は当初、松本議員や田野瀬文科副大臣、大塚国対副委員長の役職辞任でお茶を濁そうとしていたが、「上級国民」批判が止まらないことからか、二階俊博幹事長が3人に離党勧告を出して決着を図ろうとしている。
だが、当の離党勧告を出した二階幹事長もとやかく言えるような立場ではない。実際、二階幹事長と同じく和歌山を地盤にする二階氏の最側近である鶴保庸介・元沖縄北方相と門博文・衆院議員の公設秘書3人も、首都圏で緊急事態宣言が発令された1月8日の夜に和歌山市内の飲食店やカラオケバーをハシゴし、新型コロナに感染。カラオケバーは計12名のクラスター(1月25日時点)となっているからだ(「週刊文春」2月4日号/文藝春秋)。
国民には法改正によって行政罰で過料を科そうとしている政権与党の幹部やその公設秘書らが、「自分たちは関係ない」とばかりに振る舞う──。まさしく「上級国民」としか言いようがないが、その上、嘘をついていたことが判明した途端、離党させてとかげの尻尾切りを図ろうというのである。
しかも、政権与党の公明党では、同じく深夜の銀座クラブ通いを撮られた遠山清彦・公明党幹事長代理が議員辞職願を提出。遠山議員の場合、2019年の政治資金収支報告書でキャバクラやスナックなどでの飲食費計11万円余りを計上していたことも発覚したが、こんなことは自民党ではザラで、とりわけ麻生太郎財務相は過去に「愛人」と報じられた女性がママを務める六本木の会員制クラブに例年のように政治資金で多額の支払いをおこない、多い年では1000万円近くも支出。同店は2019年に閉店したと見られるが、麻生氏は性懲りもなく別の銀座のクラブなどに支出をおこなっている。公明党を見習って麻生財務相も、政治資金の不適切支出で即刻議員辞任すべきだろう。
稲田朋美「会食減って充実」が笑わせる 高級串カツ店で一晩14万円使っておきながら
その上、笑わせるのが稲田朋美・元防衛相だ。1月28日放送の『ABEMA Prime』(ABEMA)に出演した稲田議員は、いままでは毎晩のように会食していたのが、コロナ禍で会食を控えるようになって「むしろ充実している」などと語った。しかし、稲田議員といえば、夫婦で行きつけだという高級串カツ店に一晩で約14万円も支出するなど、政治資金を使った豪遊が目立ってきた人物。そのことへの説明や反省もなく「コロナで会食を控えて充実」とは、お前はマリー・アントワネットか、という話だ。
しかし、自民党に「上級国民」批判が浴びせられている理由は、この議員の豪遊・飲食問題だけではない。さらなる批判を浴びているのは「全職員PCR検査実施」だ。
昨年来、野党は一貫してPCR検査の拡充を求めてきたが、政府は「PCR検査は誤判定がある。検査しすぎれば陰性なのに入院する人が増え、医療崩壊の危険がある」などとし、検査拡大を否定してきた。その結果、韓国などでは無症状者でも無料で誰でもPCR検査が受けられる体制をつくって感染を抑え込んでいる一方で、日本ではいまだに症状があってもすぐに検査を受けられない事態が発生している始末。さらに、昨年11月に厚労省が積極的疫学調査に優先順位を付けても良いとする事務連絡を出していたことから、東京都や神奈川県などでは濃厚接触者の調査さえ縮小してしまった。
にもかかわらず、そんななかで政権与党の自民党は、濃厚接触者でなくても無症状でも職員全員の検査を実施するというのだから、一気に「上級国民」と批判が巻き起こったのは当然のことだ。
他方、ネット上では「全員検査は一般企業でも実施しているものだから自民党を叩くのはおかしい」「やろうとしていることはいいことなのだから足を引っ張らないほうがいい」という意見も出ているが、こうした意見は自民党が政権与党である点を理解していないものだ。一般企業や野党とは違い、自民党は政権与党として政策決定に大きな力を持っている。自分たちが全職員へのPCR検査をおこなうという方針をとるということは、感染防止としての実効性を認めているということなのだから、いの一番にそれを政策として実行させるべきなのだ。だが、それもせず「自分たちだけはやる」と言っているから、「上級国民」だと批判を浴びているのである。
自民党「全職員PCR検査実施」は「党本部の予算で」 政党交付金の入った血税からか
しかも、問題はその費用だろう。というのも、この自民党の全職員に対するPCR検査の実施費用は、国民の税金からなる政党交付金を含む政治資金から支出される可能性が高いからだ。
実際、1月29日放送の『報道1930』(BS-TBS)に出演した鴨下一郎・自民党ワクチンPT座長は、自民党のPCR検査費用について「党本部のしかるべき予算のなかでやるのでしょう」と明かしていた。
かたや国民は無症状でPCR検査を受けようとした場合、自費診療となり、約4万円〜約2000円を支払わなくてはならない。なのに、自民党の全職員PCR検査は国民の税金から支出される可能性がある──。これで納得しろというほうがどうかしているだろう。
まずは国民の誰もが迅速に検査や適切な医療を受けられる仕組みをつくるのが政権与党の責任だというのに、それがおろそかにされるなかで石原伸晃・元幹事長は即検査・即入院し、自民党全職員は無症状でも税金で検査が受けられるという不公平さ。国民には罰則を科そうというのに、自分たちは平気でルールを破り、嘘までつくというデタラメさ。今年おこなわれる衆院選挙では、この自民党の態度にしっかり審判を下さなくてはならないだろう。(水井多賀子)
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