◆自衛隊広がる海外派遣
◆敵基地攻撃、核共有まで

ロシア軍の侵攻に逃げ惑うウクライナ市民の映像を見ない日はない。欧州各国に続き、日本政府も「避難民」の受け入れに手を挙げたが、果たしてその資格があるのか。「ウィシュマさん死亡事件」によって知れ渡った出入国在留管理庁による外国人収容を巡る問題は、依然として改善されていない。なぜ日本は外国人に厳しいのか。「入管問題」をテーマに扱った小説「やさしい猫」で吉川英治文学賞と芸術選奨(文科大臣賞)を受賞した作家に聞いた。
◇ ◇ ◇
ーー2021年4月まで1年間にわたり読売新聞夕刊に連載された「やさしい猫」は、高校生のマヤを語り手に、母でシングルマザーのミユキさんと恋に落ちたスリランカ出身の青年クマさんが入管制度に翻弄されていく様子を描いています。なぜ、このテーマを選んだのでしょうか。
17年3月、茨城県牛久市の東日本入国管理センターに収容されていたベトナム人男性が適切な医療を受けられずに亡くなる事件がありました。その問題について、弁護士の友人がSNSで発信していたのを通じ、初めて入管収容というのを知りました。衝撃を受け、その友人がシェアするものをよく読むようになったのがキッカケです。
ーー折しも連載中の21年3月、スリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋市の入管施設で収容中に亡くなりました。この死亡事件も、入管側が適切な医療を受けさせなかったことで引き起こされました。
ウィシュマさんが亡くなるまで、多くの人が入管問題にあまり関心を寄せていなかったと思います。施設内で何が行われているか、ブラックボックスのように見えなくなっていたし、私自身もあまり関心を持っていませんでした。「外国人の問題」として、出入国を管理する入管や法務省に「お任せする」みたいな。ウィシュマさんの事件によって、そうした無関心がいかに問題だったか、ブラックボックスをつくってはいけないと気付かされました。たとえ自分には縁遠いと感じても、日本国内の問題であるし、突き詰めれば、私たちの税金がどう使われるかという問題でもあるから、まったく関係ないことはあり得ません。
■「帰ります」と言わせるのが入管の仕事になっている
ーー入管施設では死亡事件以外に、「制圧」と称した被収容者への暴力も常態化しています。なぜ改善されないのでしょう。
入管収容は原則として滞在資格のない人が自国に帰るまでの間、居るところがないからとどめるものですが、被収容者が「帰る」と言うまで痛めつける場になってしまったと思います。ウィシュマさん問題について、入管が内部調査を行った中間報告には、彼女の仮放免申請を却下した理由に〈自分の立場を分からせるため〉と書かれていた。被収容者がひどい病気を患ったり、ケガをしたりした時は、条件付きで仮放免を認めて治療を受けさせることが原則であるにもかかわらず、です。要するに、収容そのものが被収容者に「もう耐えられない。帰ります」と言わせるための手段になり、そこで働く職員は、いかに「帰ります」と言わせるかが仕事になってしまっているように思います。外で治療を受けさせ、元気になってしまったら帰らないじゃないか、とまで考えているのではないか。
「避難民受け入れがパフォーマンスにならないか心配です」
ーー不法滞在に至る過程もさまざまなのに、「法を犯している以上は収容されても当然」という独特の意識がうかがえます。
この人は滞在してもいい、この人はダメ、と決めているのは入管ですよね。いわば入管が「不法である」という状態に置いている。裁量が大き過ぎるのです。入管法違反にはビザが切れているとか、入国の方法に問題があるなどの事例が該当しますが、例えば、難民の中にはパスポートを持って入国できない事情もある。入管が自分たちの裁量で決めていると、似たような立場に置かれた2人のうち一方は在留資格を取得できて、もう一方は取れないといった事態も起こり得ます。こっちの人は「不法」で、こっちの人は「合法」だと。帰国したくてもできない事情が個々にあるし、本来は帰ってもらうべきだとしても、それを理由に被収容者を死に追いやってしまうのは、いくらなんでもおかしい。送還するかどうかよりも、人権の方がよほど大事であるという当たり前の原則に立ち返って欲しいです。
ーーどうすれば、事態は改善されるのでしょう。
昨年の春、国会で入管法改正の動きがありました。「難民申請を3回以上した人は送還してしまってもよい」とする改悪案でした。日本はただでさえ難民認定率が1%以下なのに、追い返すとはひど過ぎると、改正に反対する声がツイッターを中心に広がりました。それにウィシュマさんの事件も重なり、廃案になりました。画期的なことだったと思います。一般市民が普通の感覚に照らして「これはおかしい」と関心を持っていれば、またフシギな法案が出てきても止めることができる。例えば、ウクライナ情勢について話しているのと同じように、みんなが関心を持っていると、入管側もブラックボックスであり続けるのは難しいと思います。
ーー入管の制度面の改革も必要ですね。
制度については勉強した限りですが、はっきりした道筋があるんじゃないかと思っています。まず収容や仮放免などを入管だけに決めさせない。入管に大きな権限を与えるのをやめて、司法が介在できるようにする。難民に関しては、入管が難民認定をするのではなく、難民認定を行う別組織をつくることが必要ではないかと思います。
■生まれた時から「仮放免」の人もいる
ーー日本政府はウクライナから「避難民」を受け入れています。今月15日までに57人。90日間の「短期滞在」から就労可能な1年間の「特定活動」への変更も認めました。
積極的に受け入れて欲しいし、良いことだと思う半面、何年も難民認定されずに仮放免の身で大変な生活をしている人はどうなるんだろうな、とも考えてしまいます。日本で生まれ育ったのに、生まれた時から仮放免の身で就職もできず、健康保険に入れない人もいる。ウクライナからの避難民と同じように、ちゃんと救済して欲しい。
ーー避難民の通訳に学生ボランティアを募集するとの話もありました。
行政側の真剣さが足りないというか。通訳は大変な仕事ですし、ちゃんとリスペクトを払って欲しい。それこそ、避難民の受け入れ自体がパフォーマンスになりはしないか心配です。世界中でウクライナ避難民を受け入れているから「うちもやりますか」みたいな感じで始めて、避難してきた方々の日本での生活をしっかり支援できるのでしょうか。避難民の子供たちの教育機会についても、ちゃんと考えているのかなって。
ーーそもそも政府は外国人を労働不足を補う労働力や、地方にカネを落としてくれる観光客程度にしか見ていないのでは。
「役に立つ外人か、役に立たない外人か」をいつも見られている気がすると、ある外国の方が言っていました。特定の民族や人種と犯罪傾向を結び付けて捜査する「レイシャル・プロファイリング」も問題ですね。東京弁護士会の調査によると「外国人である」こと以外に職質を受けた理由はなかったと認識している人が、過去5年で職質を受けた人の7割超だったといいます。日本はそんなことしてるのか、と悲しくなります。
ーー差別意識も入管問題も根深いです。
入管問題に取り組んでいると、若い人に会うことが多いんです。ある時、入管問題に関するデモの取材に来ていた新聞記者のおじさんが「デモは大体70代が平均年齢なんだけど、これは違うよね」と言っていて、確かに、と。高校生とか大学生とか若い人の方が、身近に外国にルーツを持つ人は多いのではないかなと思います。私の姪が今年卒業した専門学校にもミャンマーからの留学生がいました。在学途中で祖国が大変なことになってしまったから、その子は日本での就職が決まった時「よかった」と話していたそうです。私の時代に比べると、外国にルーツを持つ人が身近になっているから、若い人の方が割と自然に入管問題に対して「ええ⁉ おかしいでしょ!」ってなったんじゃないかと思う。若い人を中心に「入管はおかしい」と感じているのは、問題解決に向けた希望ですね。
(聞き手=高月太樹/日刊ゲンダイ)
▽中島京子(なかじま・きょうこ)1964年、東京都生まれ。東京女子大文理学部卒。出版社勤務を経て渡米。帰国後の2003年、「FUTON」でデビュー。10年に「小さいおうち」で直木賞受賞。今年、「ムーンライト・イン」「やさしい猫」で芸術選奨(文科大臣賞)を受賞。「やさしい猫」は吉川英治文学賞も受賞した。
衆院に続き参院でも2022年度予算案に賛成し、“与党化”一直線の国民民主党。夏の参院選でも自民・公明両党と選挙区調整の“密約”があるという。
「国民民主の現職が出馬する1人区の山形、大分選挙区で自民が候補を立てない、あるいは自党候補を積極的に支援しない形で、国民民主の候補者を事実上の“自公国統一候補”にするという裏取引が進んでいます。参院選後の自公国連立政権をにらんだ選挙協力です」(自民党関係者)
山形選挙区は国民民主の舟山康江政調会長、大分は足立信也参院幹事長が立候補を予定している。自民は山形でまだ候補者を決めておらず、このまま国民民主に譲ることになりそうだ。
「大分は内定している自民新人がいるが、実質的には自公も足立氏を支援して勝たせることになりそう。自民候補がいた方が足立氏にとっても都合がいいようです。大分は社会党など野党勢力が根強く、あくまでも自民の対立候補という構図にしないと勝てない。足立氏が予算案採決の参院本会議を欠席したのも“野党色”を強める選挙戦略の一環です。ただ、山形も大分も官邸主導で候補者調整を進めていて、地元の反発も予想されます」(前出の自民党関係者)
中央政界で自民、公明、国民民主は党首会談や幹事長会談を重ねて連携を強化。23日には、3党の実務者がガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」凍結解除の検討チーム初会合を開いた。参院選に向けて、協力体制を整えつつある。
小池都知事の思惑も絡み…

さらには、そこに東京都の小池百合子知事の思惑も絡んでくる。
国民民主は参院選の東京選挙区で小池氏が特別顧問を務める「都民ファーストの会」代表の荒木千陽都議を推薦することを決定。都民ファが国政進出に向けて設立した「ファーストの会」は、参院選比例代表で連合推薦の国民民主4候補を推薦する。この相互推薦をテコに、参院選後は小池氏の連立与党入りまで視野に入ってくるのだ。
「小池知事は今のところ様子見ですが、連立与党入りが確実になれば、国政復帰に向けて一気に動く可能性がある。コロナの状況次第ではありますが、参院選直前の立候補表明もあり得るでしょう。ただ、国民民主が連立に加わったところで、かつて小池知事が在籍した保守党のように、自民に吸収されるだけです」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
立憲民主党の泉代表はこの期に及んで参院選で国民民主とも候補者調整を進めたいと話しているが
さっさと見切りをつけた方がいいw
ウクライナ戦争に乗じた改憲論 参院選、野党分裂選挙へ WeN20220326
リテラ > 社会 > 国際問題・戦争 > 山東昭子以外も!ゼレンスキーの演説を「国民戦争動員」に利用した極右議員

国会で演説するゼレンスキー大統領(衆議院インターネット審議中継より)
先日23日におこなわれた、ウクライナのゼレンスキー大統領による国会演説。演説前、安倍応援団やネトウヨの間では「安倍さんがプーチンにすり寄ったことを批判されるのでは?」という心配の声の一方で、「日露戦争における日本の戦いを賞賛するはず」などという帝国主義・侵略戦争を肯定する身勝手な期待が広がっていたが、実際の演説ではそんな発言はまったくなし。
それどころか、ゼレンスキー大統領はロシアへの憎悪や戦争への参加を煽るような言葉も口にせず、むしろ、「反戦の連帯」を強調する非常に抑制的なものだった。これは明らかに、日本が憲法で戦争放棄を謳っていることを念頭に置いてのことだろう。
もっとも日本の極右連中は、その演説をまたまたご都合主義丸出しで歪曲し、悪用を繰り広げている。その典型が、ゼレンスキー大統領の演説のあと答礼の挨拶をおこなった山東昭子・参院議長の、例の発言だ。
「閣下が先頭に立ち、また貴国の人びとが命をも顧みず、祖国のために戦っている姿を拝見して、その勇気に感動しております」
一方的な侵略によってウクライナ市民は生活を脅かされ、抗戦せざるを得ない状況に追い込まれ、多数の死亡者が出ているというのに、参院議長という立場にある者が「感動しております」などと口にする──。ようするに、山東氏は「国のために命をかけて戦っている」ことを称賛したのである。
繰り返すが、ゼレンスキー大統領は今回の演説で戦争への参加を煽るような文言を一言も発していない。1000発以上のミサイルが打ち込まれ、数十の街が破壊され、121人の子どもを含む数千人が殺されているという惨状は伝えたが、その上で語ったのは「反戦の連帯」の重要性だった。
にもかかわらず、「その勇気に感動」などと好戦的かつ美談めいた話にすり替えるとは、言語道断だろう。しかも、いまウクライナ市民が抗っているのは、侵略によって崩されようとしている民主主義や、個人の自由と権利を守るためでもあるだろう。それを為政者が十把一絡げに「祖国のため」と言い、命をかけることを称揚するのは、あまりにも危険な発言だ。
実際、この山東発言にはすぐさまネット上でも批判が起こったが、本日25日付の東京新聞「こちら特報部」でも、政治学が専門の纐纈厚・山口大学名誉教授が「国を守るためには犠牲をいとわない、そういうゆがんだ愛国心を求めていることにほかならない」と批判し、「不穏当」であると指摘している。
そもそも、山東氏はこれまでも「9条改正賛成」「自衛隊を国防軍にすべき」などと主張してきた改憲強行派で、安倍政権下だった2019年に参院議長に抜擢されたのも、安倍自民党が憲法審査会を強引に動かすための国会運営を可能にする「改憲シフト」のためだったと言われている。そして、いま自民党が改憲によって新設しようとしている「緊急事態条項」は、非常事態だと内閣が認めただけで、人びとの基本的人権の保障は停止され、独裁体制をつくり出すことが可能になる。ようするに「ロシア化」を可能にするシロモノなのだが、それを推進しようという人物が、今回のゼレンスキー大統領の演説を利用して「命をかけて国を守ることは感動すべきこと」などという主張を繰り広げたのである。恥知らずにも程があるだろう。