「幌尻岳」
幌尻岳は日高山脈の最高峰である。(略) この山脈から、もし一つの山を選ぶとしたらどれだろう、
という疑問がまだ地図でしか日高を知らぬ私の胸に久しく宿っていた。 そしてこの地域の山々に詳しい
人々が異口同音に答えてくれたのが幌尻岳であった。
そしてその長い憧れの風景が現実に私の眼の前に現れたのは、きれいに晴れ上がった翌朝であった。
深田久弥 「日本百名山」 より抜粋引用。
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8/8(木)の夜 ~ 8/16(金)まで北海道の山を登りに行ってきました。
渡道は今回で24回目。 (オートバイで22回、 クルマで2回目)
久しぶりの北海道。 走り慣れた道、 懐かしい場所、 素敵な景色、 まったりな温泉、 どれも全て気持ちよかったです。
ただし天候は渡道前はずっと快晴マークだったものの、 渡ったらほぼ毎日雨マーク。 (誰か強力な人が来たようだ)
それでもそこはそこ、 今回もボクの晴れ男パワー全開で圧倒してやりました!!
「登っているときにはガス。 ああ今回はダメかなー」 と。
ところが頂上に立つ時だけ晴れ (最後の旭岳だけガス) の晴れ男満開。 まさにカムイ(神)がかりでした。 (爆)
コースは東北道を北上し八戸からフェリーで渡道(時間短縮コース重視)し今回も旅の相棒ジムニー車中泊。
数日分の食料、 菓子類、 そして一番大切な魔法の水(笑)を積み込みテケテケ走行で山登りしてきました。
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8/8(木)
会社から帰宅後風呂飯し準備し 21時出発。 東北道を北上し八戸IC目指す。
当初の予定は8/9(金)17:30八戸発のフェリー乗船だったのだが予定外早くFTに着いたので
キャンセル待ちで8:45発のフェリーに出港時間5分前に呼ばれ乗れた。 (大爆)
・当初 8/9(金) 17:30八戸FT ⇒ 8/10(土) 1:30苫小牧FT着。
・今回 8/9(金) 8:45八戸FT ⇒ 8/ 9(金) 16:00苫小牧FT着。
当初より9時間も早く渡道(夜中着岸後の走行は危険)でき、 翌日の行動に時間的余裕が生まれた。
16時以降走りだし、 平取(びらとり)という場所(アイヌ民族の地で数回訪れている知った場所)で車泊。
8/9(金) 雨のち曇り。
16時に苫小牧FT着岸下船しR237平取町手前のコンビニPで車泊。 (ここも以前車泊したP)
8/10(土) 豊糠山荘(とよぬか) ~ 幌尻山荘(ぽろしり)まで移動日。
豊糠山荘までクルマで入り、それ以降予約バスで行く。 その予約していたバス発車まで余裕あるのでゆっくりめに起きて出発。
R237 ~ 振内(ふれない)を過ぎてすぐの県637を右折し豊糠山荘を目指す。 (H21年閉校の豊糠小中学校校舎)
朝7時過ぎに着いた。 ここでも予約バスの前発8時発に乗れそうだったが慌ただしかったので見送る。
しっかり準備し予定通りの10時発バスに乗りこむ。 満員の25名乗車。
原生林を1時間走行後やっと第一ゲート着。 ここから歩き出す。
まずは取水ダムまで林道 (北電所有地内) を7キロ歩く。
バスを降りたメンバ (ソロは3名) はいつの間にかバラバラになっていく。 (またしてもボクがトップ引き)
またしても、、
じぇじぇじぇ。 である。
プーさんへ心よりお願いがあります。 「今ここでは出ないでくださいまし」
やっと取水ダム着。
ここから先沢登りになる。
まずはヘツリ、、 (以前ここで川に落ちて亡くなられた人多数)
トップで着いたものの後続者撮るため時間調整。 (笑) この方たちはちゃんとした沢靴装備でした。
ボクはと言えばホームセンターで買った300円の川遊び靴。 何かサイトで見てこれで十分と言っていたので。
(これがこの後大変な事になろうとはこの時は知るよしもない)
ここから15か所? 4キロ渡渉を繰り返し川を遡ります。
膝下から深い所で腿まで。 それでも流れが早い所では危うく沈しそうになる。
小屋着後聞いたら前者は沢屋さんだった。 どおりでスグに見えなくなったわけだ。
(その後話しているうちに新潟からのこの方はとんでもない方だった)
こんな感じ。 安靴ー。 (お恥ずかすぃ・・)
この靴、 こんな川の中では役に立たなかった、 全く刃が立たなかったッス。。 (泣)
丸い石の頭はスゴク滑り、 川底の流れが早い場所も滑る滑る、 おまけに爪先や底がヤワなため歩いていて痛いのなんのって。。
まんま初心者の山屋に逆戻りですたよ。 参った、 参った。 (恥)
それでも行くしかない。
ここは右岸をへつる。 落ちたら胸まで浸かる。
薄い赤テープを頼りに少々バリルー。
後続者があったいう間に追いついてきた。 (この方たちもちゃんとした沢靴で全然滑らずスイスイ歩いていた)
ここ、 増水したら・・。 なんだか面白くなってきたよ。
なんやかんやでやっとのこと夢にまで見た幌尻山荘着。
下のバスとここの小屋泊は完全予約制。 フェリーと合わせ2カ月前から予約していた。
天候はその時の運。 大雨後の増水時はバス発車せず見送りとなり小屋代1,500円は寄付となる。
そんな一発勝負もこの幌尻岳登山最大の難所の要因のひとつ、 それほど幌尻岳は遠い存在。 百名山の中でも最も難関な山。
(飛行機orフェリーで渡道し豊糠まで行きバスに乗り林道を7km歩き川を4km渡渉し小屋まで行くのがスゴク大変)
小屋の中は最低限のモノしか置けず(食料と水シュラフ等)ザックは小屋下の物置へ。
(クマ防御のための扉あり)
晴れてきた、 明日は快晴かも。 みなさん楽しい夕食のひととき。。。
ここに来る人は初心者はいないハズ。
皆さん外でヘッデン点けて虫に刺されながらの楽しい食事(笑)、 他人との会話、 山談義。
同じバスに乗ってきた人たち。 しかもあの危険な川を遡上してきた人たち。
そして当然ながら同じ小屋泊のため必然的に会話も弾み仲間意識が出来上がる。
寝床は毛布一枚の大きさ。 全部で50名完全予約制のためそんなにギュウギュウさは感じない。
隣近所の人と即座に仲良しになる。 そこはボクの得意のするところ。 だはー。。 (^^v
初日は林道と川を11km歩いただけ。 あまり疲れていないが19時に消灯。 でも眠れず。。
8/10(土) 曇り晴れ。 95座目。 「幌尻岳」
3時起床、 準備後4時20分発。
みんな4時過ぎに小屋前に来て朝食。 クマが怖くて誰もトップ引きせず。
そんなボクも様子を見ていたのだが、 いつもの癖でいたたまれずまたしてもトップ引きで発車とあいなった。
いかにも出そうな笹道を行く。 この辺鈴と大声出しながら登りました。 (笑)
急登をこなし命の水着。
おお! やっぱり晴れてきたよ。
登って来た尾根。
これから登る尾根。 左のガスに隠れた方向が幌尻岳。 あそこまで美しい大カールを回っていく。
左下に見える沢や草地、 池。 右にある深い森や笹の動きに時折足を止めてジーッと目を凝らす。
どうかプーさんが出ませんように。 ナムー。。
ガス中を行きやっと頂上が見えてきた。
待ちに待った瞬間です。
幌尻岳一番のり!! 計画後3年経ちました。 ここまでホント遠かったです。 感無量。
ガスが晴れるのを下山時間ギリギリ待った甲斐がありましたー。
続々と登頂する方たち。
みなさん頂上で歓喜の声です。
北アや南ア、 その他の山はいつでも行ける。 しかしここは早々たやすくは来れない。
それを皆さん知っているから理解しているから尚更声が上がるしギリギリまで頂上からの景色を楽しむ。
そんな楽しい時間もあっと言う間に終わってしまう。 下山です。
次はもうないかもです。。
さよなら幌尻岳。
何回も何回も何回も振り返りました。 ええ、 ジーンときましたよ。
無事小屋着。
ここで大休止で最後の川&林道11kmに備える。 昼食、 ストレッチ、 20分昼寝。
渡ります。
狭いー。 ドボンはイヤよ。
写真だとそんなに危険性は低いように見えるが実際は危険で事故が多い場所。
最後のヘツリ。
この先すぐに取水ダムのため油断するらしい。
ここで落ちてザックの重みで水没しパニクり呼吸できずそのまま流され亡くなられた方が多いそう。
ここで岩陰に隠れマッパになり水浴びしました。 サッパリしたよー。
簡易沢靴から登山靴に履き替え。 シャツ、 パンツ水洗い。 “ナニ” もしっかり洗いますた。 (笑)
ただしエキノコックスを懸念し生水は絶対に飲みませんでした。
(MSR製ろ過機持参。 こしてから飲用が必須)
取水ダムで休んでいる先行者たち。 到着すると 「お疲れさまー」 と言い合う仲になっています。
帰りも17時発 (小屋から頂上往復帰る場合、行程上17時発のバスになる) の同じバスため必然的に仲良くなる。
隣に寝ていた新潟から来られた方はモノホンの沢屋で、 話をするうちにこの方とんでもない方でした。
(60過ぎだがその歩くスピードやスタイル、身のこなしは目を見張るものがあった。 話を聞いたらなるほど、 となった)
中学生?から山に入り学生時代は魔の合宿というキスリング50kgを背負わされ剱岳その他1週間登山。
その後地元の山岳会に入るも岩登りをやりたくて脱会し他の会で岩を極めた。 海外ではヒマラヤに登りそのトレーニング
には真冬の富士山トレを1月~2月に数回実施。 昔から剱が庭で全部のコースをソロで四季折々登ったと。
そして現在は昔ヒマラヤに登った隊長に誘われ日本山岳会に所属しているとのこと、 イヤハヤ何とも。
上の廊下も幾度か制覇し今ではもっぱら沢専門だそう。 今回の渡渉も超楽勝だった。
日々トレセンに通い毎日10キロ走り込み隔日で筋トレ、 もう頭が上がりませんワ。
昨日ボクの簡易沢靴を見ていたらしく、 ボクが小屋に無事着いた時に言われた。
「あの靴でよく来れたね、 実は心配していたんだよ」 と。 ご心配おかけしました。
道中そんな会話をしながら歩いていたら疲れも忘れあっという間にバス待ち場所に到着。
続々と到着します。
豊糠山荘無事着。 皆さんと 「お疲れ様でした」 の声を掛け合いここでお別れです。
駐車しているクルマのナンバーは、、 千葉、 習志野、 柏、 野田の面々。 よくぞこの地でこれほど揃ったもんだ。
千葉県人、 みな暇やねー。 (大爆) ちなみにボクはもう栃木県人だす。
その後 明日登る予定のトムラウシ山目指し登山口のある東大雪荘まで300キロ走りました。
途中の日勝峠(にっしょうとうげ)は激濃霧で視界20メートル? 知った道だが少々ビビリ走行でした。
(300キロと言っても信号なしの殆ど直線道、 そんなに気合い入れずとも淡々と走れば着いちゃいます)
東大雪荘着。
宿泊者用P手前にある登山者用Pにて車泊。 「明日も晴れますように・・・」
おやすみなさい。。
【後記】
念願で最も難所で遠かった幌尻岳に登れた。 しかも山頂では待望の晴れ間が。
これを終わらせたことが大きな自信となった。 その後の山行は自分の足で行ける、 あとは天候次第だが
自身の足で登るのみ。 なんとかやり遂げられそうだ。 ここ幌尻岳を終えた時点で70%完了した感じがした。
「幌尻岳」 この山は本当にそう感じさせる 遠く険しくでかい山だった。 3年越しの夢が叶いました。
・バス送迎 ・・ 豊糠山荘 ~ 第一ゲートまで完全予約制で往復3,500円。
(数年前までゲートまで自家用車で行けたが、誰かがその先の鍵(北電関係者から番号聞いたらしい)を
開け取水ダムへ駐車、 その後遭難し大騒ぎに。 それ以降完全往復バスになった。
しかし考えようによっては あの山奥にありそんなに産業もないあの地域での確実で定期的な収入になり
とても良いことだと思う。 山に入らさせていただきありがとうございます、 という感じ)
・幌尻山荘 ・・ ここも完全予約制で一泊食事無しで1,500円、毛布あり。 (事前振り込み要)
(当日悪天候によるバス未発車の場合、 宿泊代は寄付or指定口座へ返金)
上記、 両者とも(飛行機orフェリー含め)2カ月前からの完全予約制。
当日の天候は予約時は知るよしもなしのまさに一発勝負。
今回一緒に泊った方の中には4回目にしてやっと泊れ、登ることができた、 という方もいた。 (天候理由)
ここまで来てバスが出ないではかなり凹むだろう、 しかも3回までも。 そんな難所な山でした。
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番外編。
ここでこれまたとんでもない方がいました。 道中抜きつ抜かれつを繰り返してしたお爺さん。
この方なんと日帰りの方で、 朝3時発のバスに乗り4時から歩き始め登頂しここまで戻って来た。
「ウチは農家で稲刈りまで暇、 広島から軽トラで来たよ」 だって。 参ったね こりゃどうも。
軽トラの荷台を改造し蚊帳を張っての簡易ベッド。 その横が荷物置き場。
大雨の日でも大風の日でも蒸し暑くともここで寝るそう。 ジジイ、 やるなあ。
北海道。 昔から変なヤツラばかりだよまったく。 ホントサイコーだぜ。 オレなんてまだまだ甘ちゃんだな。