中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

ある女子高生

2011-06-23 10:06:06 | 身辺雑記

 男性物の衣料店を経営しているI君の店に行き、店の奥で雑談していたら、急にI君が店の入口のほうに向かって「よう、来たのか」と言った。振り向いてみるとI君の娘が入ってきた。私には顔を向けず挨拶もしないで傍らを通ると、父親の側に行って持っていた黒いシャツを見せながら何か話していた。

 

 I君には悪いのだが、私は高校2年生のこの娘が苦手だ。まだ幼い頃I君夫婦は離婚し、娘は母親に引き取られた。それからも養育費のことなどもあって元家族は何度も食事したりして会っていたようだが、やがて小学生も高学年になると一人で店に遊びに来るようになった。その頃には私とも話をしていたが、中学生になると何が気に入らないのか話をしないようになり、店に来ている時に私が行っても白い目を向けるだけで、会釈もせず、「こんにちは」も言わずに無視するようになった。私は教師をしていたから中学生や高校生は好きなのだが、挨拶のできない子は苦手だ。それに父親と話している口調も内容も乱暴で聞き苦しい。だから今では店を覗いても、この娘がいると早々に退散することにしている。

 

娘を引き取った母親は、親としての能力がまったく欠けているようで、そのこともあってか、中学生になると扱いの難しい子になり、登校拒否の状態にもなった。I君の話では親や学校の教師、と言うよりも大人に対して不信感を持っているようだった。特に問題行動を外で起こすこともなかったようだが、I君はいつも心を痛めていた。娘の境遇を哀れに思うのか、厳しいことも言わずに放任していたようで、それが結果として裏目に出たのかも知れない。高校進学は無理と言われていたが、今は私学の単位制高校に入っている。

 

 それはそれとして、久しぶりに会った娘を見て驚いた。左の耳朶にも左下唇にもピアスをし、二つのピアスを3、4本の銀色のチェーンでつないでいる。そのチェーンには赤や青のまがい物のジュエリ-がいくつか付けてある。大阪の町などでは、ずいぶんイカレたような風体の高校生らしい娘は目にしていたが、こんなのは初めて見た。服装は黒っぽく、けばけばしいものではないが、顔に着けているアクセサリーはおよそ高校生には見えない派手なもので、私のような老人は呆れ返るしかないようなものだった。いくら単位制高校と言っても、まさかこの格好で通学はしていないだろうが、かなり人目を引くだろう。このようなアクセサリーの着け方を自分で考えたのではないだろうから、一部の高校生以上の女性には知られているのかも知れない。

 

 翌日またI君に会った時に、あんな格好をしていたら良くない男に目をつけられるよと言うと、彼はちょっと暗い顔をして、僕は慣れましたけれどねと言った。何か父親の言うことなどは聴かないと諦めているようだったし、注意でもして娘が離れていったらと懼れてもいるようだ。他人の子ながら、いったいこれからどうなるのだろうと心配になってしまった。

 

 パソコンが好きでそれなりに扱うようだから、そのような専門学校にでも行かせたらどうかと言うと、本人は介護のほうをやりたいらしいということだ。それはいいことだが、何はともあれ、人生のはじまりとしての大切な時期、たまには親や大人の言うことにも耳を貸し、真っ当に過ごすようになってほしいと思う。そのためにもI君も、もう少し娘を気儘にさせずに、耳に逆らうことでも言ってやるほうがいいのではないだろうか。