蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

経済論戦は甦る

2007年03月23日 | 本の感想
経済論戦は甦る(竹森俊平 日経ビジネス人文庫)

この本のハードカバー版が出版されたのは2002年で、日本経済の不透明感がいぜん強かった頃。
対処法として正しいのは、構造改革+財政再建(小泉政権が標榜)なのか、財政拡大+リフレ政策なのかを、検討しています。
かつて同じ論争は、大恐慌時にもあった(創造的破壊派のシュムペーターVSリフレ派のフィッシャー)とのことで、リフレ政策をとるべき、という結論はすでにその時に出ている、と著者はいいます。

この本で創造的破壊派の最右翼として挙げられているのは、野口悠紀雄さんです(「野口教授のエッセイ」でも書いたように、私は野口さんのエッセイの大ファンなのですが、一方「日本経済改造論」(の感想)に書いたように、経済に関する意見に対しては賛同できないと思っています)。
野口さんは小泉政権の政策を支持しているわけではなく、構造改革はかけ声倒れで、実効性が全くなく、このままでは日本経済はやがて衰退の一途をたどるであろう、と主張されています。その論理展開が明確で首尾一貫していることは、(リフレ側である)竹森さんも感心するほどです。

現実の世界では、構造改革派が勝ったように思えます。しかし、著者は文庫版のあとがきで、現在の景気回復は外需に恵まれたものであり、日銀の多額の円売り介入は事実上のリフレ政策であった、と、負け惜しみ気味に主張しています。

余談ですが、文庫版の128ページあたりで、あるエコノミストを辛辣に名指しで批判している箇所があります(批判というより、無知であることをあざ笑うような調子。論旨とは全く関係なく、悪口をいうためだけに書いたとしか思えない)。
このエコノミストは今でもよく新聞などでコメントをしている人。学者しか読まないような論文ならともかく、広く一般書店で販売されているような本で「ここまでいうか~?」というほどの手厳しさです。
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