蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

何もしていない時

2007年04月20日 | Weblog
かなり昔に、確か別役実さん(だったと思うのです)が、エッセイで以下のような主旨のことを書いていらっしゃったような記憶があります。
“煙草とコーヒーとミステリ(の本)の3つで一つである。煙草をすいながらコーヒーを飲みつつミステリを読んでいる時、私は何も考えず、何も行わない状態になれる。3つのうち一つでも欠けてはいけない。日常においてそのような状態になれるのは、このシチュエーションしかなく、私にとって貴重な時間である。”

当時はこのエッセイの真意を十分には理解できていなかったように思います。

近頃、私も本を読んでいる時に“何も考えず、何も行わない状態”になる(というか意識的にそういう状態になれる)ことが多くなりました。
面白い本を読んでいると、気持ちがこの世から離れて本の世界に移っていくような気がする体験はだれにでもあるのではないでしょうか。

私は、本を読むこと以外に有効なひまつぶしの方策をしらないので、空いた時間には寸暇を惜しんで(?)本を読みます。長年そうしたことが習慣になっているせいで、最近ではおもしろくない本でも読み続けているうちに意識をあらぬ方向へもっていってしまう(うまく表現できませんが、本の内容を考えたり味わったしているわけではなく、そうかといって他のことを考えているわけでもない状態。つまり“何も考えず、何も行わない状態”)ことができるようになりました。そして、そのような時間を持てることが、読書の大きな楽しみの一つなのだろうと考えています。
コメント
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